【詳しく】中国 台湾周辺で軍事演習と発表 蔡総統「平和追求」

中国軍は、8日から3日間の日程で、台湾周辺でパトロールと軍事演習を始めたと発表しました。台湾の蔡英文総統とアメリカのマッカーシー下院議長の会談への対抗措置とみられ、8日は制海権や制空権などを奪取する能力を重点的に検証したとしています。

中国軍で台湾方面などを管轄する東部戦区は、8日から10日までの日程で台湾海峡と台湾の北部、南部、東部の海域や空域でパトロールと軍事演習を行うと発表しました。

発表では、命令を受けて陸海空軍とロケット軍を速やかに予定区域に集結させて作戦を展開したとしています。

また8日の演習では、制海権や制空権、それに情報の支配を意味する「制情報権」を奪取する能力を重点的に検証するとともに、台湾を取り囲むように部隊を進め、威圧する態勢を作り上げたとしています。

台湾の蔡英文総統がアメリカのマッカーシー下院議長と会談したあと、中国国防省は「中国軍は常に厳戒態勢を保ち、国家の主権と領土の一体性、台湾海峡の平和と安定を断固として守る」などと強調していました。

また、東部戦区は8日の発表で「『台湾独立』勢力と外部勢力が結託した挑発への重大な警告だ」としていて、台湾の蔡英文総統とアメリカのマッカーシー下院議長の会談への対抗措置とみられます。

中国は去年8月、マッカーシー議長の前任のペロシ氏が在任中に台湾を訪問したことに反発し、台湾周辺で大規模な軍事演習を行っていて、今後、中国軍が具体的にどのような規模や範囲で演習などを行うかが焦点です。

台湾 蔡英文総統「台湾は平和を追い求めている」

中米訪問の帰りに経由地のアメリカでマッカーシー下院議長と会談し、7日夜に台湾に戻ったばかりの蔡英文総統は8日、台北を訪れているアメリカ議会下院のマコール外交委員長らを招いて昼食会を開き「台湾の人たちは平和を追い求めている」と強調しました。

昼食会のあいさつで蔡総統は、アメリカが今後5年間に最大100億ドルの軍事支援を行うことなどを盛り込んだ2023会計年度の国防権限法に言及しながら「アメリカ議会が超党派で法律をつくり、台湾の安全に対する約束を実行していることに感謝する」と述べました。

そして「台湾の人たちは民主主義を心から愛し、平和を追い求めていて、国際社会で責任を十分に果たすということを改めて強調する。われわれは引き続きアメリカなど理念が近い国々と協力して民主主義と自由の価値を守っていく」と述べました。

蔡総統がマッカーシー下院議長と会談したことに反発する中国が、8日から台湾周辺で軍事演習の開始を発表したことを言外に非難した形です。

一方、マコール外交委員長は「われわれはあなたたちの自衛に必要な武器の売却と引き渡しを加速するため、議会でできることをすべてしている。戦争ではなく平和のためにあなたたちの軍への訓練を提供する」と述べ、中国に武力行使を思いとどまらせるため台湾との協力を強めていく姿勢を示しました。

中国中央テレビ 艦艇や戦闘機の様子を放送

国営の中国中央テレビは、中国軍が8日から台湾周辺でパトロールと軍事演習を行うと発表したニュースを伝えた際に、軍の艦艇が海上を航行したり、戦闘機が飛行したりする様子を放送しました。

しかし中国中央テレビは、この映像がいつ、どこで撮影されたものか、説明はしていません。

台湾国防部 中国軍の戦闘機や艦艇など確認

台湾国防部の発表によりますと、日本時間の8日午前7時から正午までの間に、中国軍の殲10、殲11、殲16戦闘機などのべ42機が台湾周辺の空域で活動し、このうちのべ29機が台湾海峡の「中間線」を越えたり台湾南西沖の防空識別圏に進入したりしたのを確認したということです。

また、中国軍の艦艇ものべ8隻を確認したとしています。

台湾国防部は「中国軍が意図的に台湾海峡の緊張をつくりだし、地域の安全と発展に悪影響を与えている。こうした理性的でない行動を厳正に非難する」としています。

台湾国防部「地域の平和と安定と安全損なう」中国を非難

台湾国防部は日本時間の8日午前11時前にコメントを発表し「情勢を綿密に把握し、高度の警戒を保ち、適切に対処して、国家の安全を全力で守る」としています。

また「中国がこともあろうに蔡総統のアメリカ立ち寄りを口実として軍事演習を行うことは、地域の平和と安定と安全を著しく損なうものだ」と非難しました。

台湾の対岸 中国 福建省 “実弾射撃訓練で航行禁止”

中国 福建省の平潭島付近
中国軍の軍事演習の発表に先立ち、台湾の対岸に位置する福建省の海事局は7日、2か所の海域で実弾射撃訓練が行われるとして、この海域への航行を禁止する警告を出しました。

それによりますと、福建省福州の沿岸の海域で8日から今月20日にかけて断続的に実弾射撃訓練が行われるとしています。このうち台湾本島に最も近い平潭島付近の海域では10日に実弾射撃訓練が実施されるとしています。ただ、今回の軍事演習との関連はわかっていません。

ロイター通信が配信した平潭島付近で8日に撮影された映像には、中国軍の艦艇が航行する様子が写っています。

平潭島では去年8月、中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を行った際に、台湾海峡に向けて発射された複数の砲弾が上空を通過したのが確認されました。

中国軍 去年8月にも大規模軍事演習

中国軍は、8日から3日間の日程でパトロールや軍事演習を行うとしていますが、具体的な場所や範囲、それにどのような規模で行うかは明らかにしていません。

中国軍は去年8月、アメリカのマッカーシー下院議長の前任のペロシ氏が在任中に台湾を訪問したことに反発して、台湾周辺で大規模な軍事演習を行いました。

この際は、ペロシ氏が台湾に到着した直後、中国の国営メディアなどを通じて台湾を囲むように合わせて6か所の海域と空域を具体的に示し、実弾での射撃なども含めた「重要軍事演習」を行うと発表していました。

日程については当初4日間としていましたがその後も演習を続け、7日目になって終了したことを明らかにしました。

去年8月の軍事演習では、中国軍が発射した弾道ミサイルの一部が日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下し、日本政府は中国側に抗議しましたが、中国外務省の報道官は「両国は関連海域で境界を画定しておらず、演習区域に日本のEEZが含まれるという見解は存在しない」という認識を示していました。

Q.中国軍の発表 どう見る?【中国総局 藤田記者解説】

A.今回の中国軍の発表は、蔡総統とマッカーシー議長の会談に中国側が強く反発したものだといえます。

中国には7日までフランスのマクロン大統領が訪れ、習近平国家主席と会談などを行っていましたので、批判されるのを避けるため、中国軍の発表が8日になった可能性もあります。

台湾東部の太平洋にはすでに中国海軍の空母「山東」などが航行しているのが確認されていました。

これが今回の軍事演習と関連があるのか今のところ分かりませんが、空母の動向は軍事演習の準備ともみられていました。

軍事演習は10日までとしていますが、具体的にどのような規模や範囲で行われるかが焦点です。