WEB特集

高校生にも生理休暇をください

“生理休暇をください”

職場の話ではありません。今、学校でもそんな声が上がり始めています。

「女子だけずるい」「学校に必要なの?」

そう思った人にも届いてほしい。高校生の訴えです。
(大阪放送局 記者 鈴椋子)

“おなか痛い”でも学校に行かなきゃ…

大阪の関西大学北陽高校3年生の上田さくらさん。

バレーボール部のキャプテンです。

中学生の頃から、重い生理痛に悩まされるようになりました。
上田さくらさん
「痛みはもちろん、気分の起伏とか、イラッとして怒ってしまったりとか、泣いちゃったりとかがありました。おなかが痛いときは、ソファーやベッドに行くことすらつらくて、その場でおなかをおさえてうずくまることもありました。生理1日目はだいたい学校を休んでいました」
中学校では月に1回は生理痛のため、学校を休んでいたといいます。

しかし、高校に入学してからは無理を押して登校しました。

欠席日数が増えることによる、大学進学への影響を心配したと言います。

無理して学校に通う娘を、お母さんも、心苦しい思いで送り出していました。
上田さくらさんの母(右)
さくらさんの母
「中学校のときはあまりにもひどいから休ませていたんですけど、高校になってから休みにくくなって。心苦しいけど泣いているところ無理やり行かせていたところもあったので、親としてはしんどかったです」
さくらさんは現在、症状緩和のための低用量ピルを服用しています。

以前に比べると痛みはかなり和らぎました。

しかし、学校にはほかにも生理痛の重い友人がいるといいます。

「学校にも生理休暇を導入してほしい」

さくらさんは、自分の思いを周囲に伝え始めました。

応援してくれる先生と一緒に

水田眞一教諭(右)
理解を示してくれる先生もいます。

水田眞一教諭は「生徒がみずから疑問を持ち、行動しようとしていることを応援したい」と感じたと言います。

男子も含め、高校生のときから、こうした課題について考えることは生徒の成長につながると考えています。

水田教諭のサポートを受けながら、さくらさんは、すでに生理休暇を導入している大阪市の建国高校などを訪ねました。

この学校では、おととしから全国に先駆けて、生理休暇を導入しています。

生理痛が重く毎月取得している生徒もいるといいます。

導入後に行ったアンケート調査では「女子だけに特権が与えられている」という男子生徒からの声もありましたが、制度への理解は男女を問わず広がっていたということです。

“ずるいと思わないで”

さくらさんの通う高校の生徒会では、生徒の意見をとりまとめることになりました。

活動の発起人として、ことし3月、さくらさんは、オンラインでこう訴えました。
さくらさん
「生理休暇は不平等なものではありません。不公平をなくすためのものと考えてほしいのです。背の高さの違う人が3人いるとします。塀の向こうの景色を見るために、同じ高さの踏み台が与えられても、結果見える景色には差があります。公平になるということは、背の高さに合わせて違う高さの踏み台が与えられ、目の高さが同じになり見える景色が同じになるということです」
「これを生理休暇に当てはめてみてください。自分の意思ではどうにもできない体調不良で欠席扱いになったり、無理をして、頭痛や腹痛、吐き気を我慢して学校に来たりしている現状は、みんな同じ景色が見えていると言えるのでしょうか?」
学校では今後、生徒会が示す提案などを踏まえて、生理休暇について検討することにしています。
さくらさん
「高校のうちから生理休暇が身近であれば、社会人になったときの意識にも影響すると思います。高校のうちからベースを作ることで、やがて大人になったときに、生理や女性に対して優しい社会になればいいなと思っています」

生理休暇はあるけれど 社会人も取りづらい

その生理休暇。労働基準法によって企業には導入が義務づけられています。

ところが、実際にはほとんど使われてきませんでした。

厚生労働省の調査では、2019年度に生理休暇を利用した女性はわずか0.9%にとどまっています。

専門家は、男性も含め生理の知識を深めていくことが必要だと指摘します。
大阪大学人間科学研究科 杉田映理教授
「女性だからという理由で休むことに対してネガティブなプレッシャーがあるのではないかと思います。男性への月経教育も必要だと思います。生理がどういう現象かというのは習っても、生理痛やPMS(月経前症候群=生理前の体や心の不調)がどんなものか、ナプキンをどのくらいの頻度で換えるなければならないかといった知識はほとんどない。もう少し基本的なところをみんなが理解して、『何か調子悪そうだな』『もしかしたらそうかな』という風に、直接聞かなくても、想像力で思いやれるようになるといいと思います」

どうすれば変わるの?

生理休暇を取りやすくする動きは近年、企業の間で広がり始めています。

大阪市の建設会社「三和建設」は社員の7割が男性です。

去年、女性社員を対象にアンケートを行ったところ「生理休暇を取得できずに無理して出勤したことがある」という人が半数以上でした。

入社4年目の三村優香さんもその1人。
生理痛の日には、朝からおなかが重くて動けないこともあるほどでした。

しかし、男性上司に生理という単語を伝えることに抵抗がありました。

「甘えていると思われるかも…」

そんな不安もあり、生理休暇を取らずに、無理して働いたことがあります。
三村優香さん
「腹痛で動けなくなってしまうときがあったので、通勤が特に苦痛でした。眠気もくるので、カフェインをとったりするんですけど、生理中にカフェインをとるとすごくおなかが痛くなるんです。仕事の効率も悪かったと思います」
アンケートには多くの女性社員から意見が寄せられた
同じような声は、多くの女性社員から聞かれました。

改善に向けて会社がまず行ったのは休暇の名称変更。

「生理休暇」から、Female(女性)の休暇「F休」に変えました。

さらに、電話だけでなくメールでも申請できることを全社員に周知。

現代女性の月経回数は昔の10倍に

そして、生理について学ぶ研修も。

大手メーカー「ユニ・チャーム ソフィ」が作成した動画を全社員が視聴しました。

動画ではこんなことを学びました。
▽昔の女性が生涯で経験する月経の回数は約50回だったが、現代女性は約500回。(生涯の出産回数が減ったことや栄養状態がよくなり初潮が早まったことが理由)

▽女性の4人に1人が、日常生活に支障が出るほどの生理痛を抱える

▽生理痛以外にも、PMSという生理前の体や心の不調に関する悩みを抱えている人が7割いる。生理痛の悩みの割合と同程度
男性管理職(40代)
「これまで生理について学ぶ機会はほとんどありませんでした。女性の多くがさまざまな症状を抱えながら何事もないように過ごしていると知って、ショックでした。『ちょっと体調悪そうやけど大丈夫?』みたいなソフトな言い方で関わることはできるかなと思いました」

「知ってもらえた」安心感

こうした取り組みを進めることで「無理して出勤したことがある」という人は、大幅に減少しています。

三村さんも生理休暇を申請しやすくなったと感じています。
三村さん
「以前は、男性って生理について全然知らないんじゃないかっていう考えがありました。『知ってもらえた』というベースがあることで休暇を取りやすくなったと思います」
三和建設人事担当 丁舞香さん
「制度は用意しているのに、あまり理解が進んでいなかったり、うまく活用されていなかったりといったことがありました。男女問わず、働きやすい環境にしていけたらと思います」
この会社では、生理休暇が取りやすくなった結果、男性も含め「つらいときには無理して働かず、休む」という職場環境がつくられたと言います。

有給休暇を取りやすくする取り組みも進められ、休暇の取得率は上昇しています。

生理について理解を深めることは、誰にとっても働きやすい職場づくりにつながったということで、業績も上がっているそうです。

かぜのときと同じくらい“当たり前”に

私(記者)が生理休暇の取材を始めたのは、自分自身が去年初めて取得したことがきっかけです。

学生のときから薬を飲まずして乗り切れたことはなく、飲んでもつらいときがあります。

しかし、生理痛で仕事を休むのには少し抵抗感がありました。

「休んでいいのだろうか」
「サボっていると思われるのではないか」

そういった不安や罪悪感のようなものがあったからです。

取材した企業のアンケート調査でも、女性が生理痛を「耐えるもの」と捉えているような声が多くみられました。

男性からの目を気にしていたり、女性自身の意識もあるのだと思います。

しかし、生理痛による体調不良も、かぜによる体調不良も同じです。

なりたくてなっているわけではありません。効率だって落ちます。

かぜをひいたとき休むように、生理痛でも休む。

その選択を、女性が当たり前にできるようになればいいなと思います。
大阪放送局 記者
鈴椋子
2020年入局
2年間大阪府警を担当
災害や教育を取材

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