「ひきこもり」推計146万人 主な理由“コロナ流行”内閣府調査

外出をほとんどしない状態が長期間続くいわゆる「ひきこもり」の人は、15歳から64歳までの年齢層の2%余りにあたる推計146万人に上ることが、内閣府が去年11月に行ったアンケート調査でわかりました。ひきこもりになった主な理由の1つとして、およそ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげ、コロナ禍での社会環境の変化が背景にあることをうかがわせる結果となりました。

内閣府は、いわゆる「ひきこもり」の実態を把握するため、去年11月、全国の10歳から69歳の合わせて3万人を対象にアンケート調査を行い、1万3769人から回答を得ました。

このうち「生産年齢人口」にあたる15歳から64歳までの年齢層では、広い意味で「ひきこもり」と定義している「趣味の用事のときだけ外出する」や「自室からほとんど出ない」などの状態が6か月以上続いている人は、2%余りで、推計でおよそ146万人に上るとしています。

年齢層別に見ますと、15歳から39歳の子ども・若者層では、7年前に公表された調査の1.57%から2.05%に、40歳から64歳の中高年層では、4年前に公表された調査の1.45%から2.02%に増えていました。

また、ひきこもりになった主な理由の1つとして、およそ5人に1人が「新型コロナウイルスの流行」をあげ、コロナ禍での社会環境の変化が背景にあることがをうかがわせる結果となりました。

40歳から64歳まで 女性が半数を上回る

これまで内閣府では、子ども・若者層と、中高年層で別々に調査を行ってきましたが、今回は対象の年齢や人数を大幅に拡大して同時に調べる調査となり、さまざまな「ひきこもり」の実態が浮き彫りになっています。

このうち性別では、4年前に公表された40歳から64歳までの調査では男性が4分の3以上を占めていましたが、今回の調査では、同じ40歳から64歳まででは、女性が52.3%と半数を上回り、15歳から39歳でも45.1%となっていました。

これまで主に男性の問題と受けとめられることも多かった「ひきこもり」が、女性に広く存在していることを示す結果となっています。

また、安心できる「今の居場所」を尋ねる質問では、15歳から39歳の「ひきこもり」の人は、そうでない人に比べて、家庭や学校、それに職場などのリアルな場を居場所と思う割合が低く、その一方でSNSなどのインターネット空間を居場所と捉える割合が高くなっていました。

このほか、「どのような人や場所なら相談したいと思うか」を尋ねた質問では、「誰にも相談したくない」と答えた「ひきこもり」の人は、15歳から39歳で22.9%、40歳から64歳で23.3%に上りました。

その上で、その理由を尋ねたところ、「相談しても解決できないと思うから」と答える人がいずれの年齢層でも半数を超えて最も多く、相談や支援のあり方に課題があることをうかがわせる結果となっています。

池上理事「自分事と受け止めて」

内閣府が4年ぶりに行った「ひきこもり」の実態調査について、「ひきこもり」の人の家族などで作る「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の池上正樹理事は、「50人に1人がひきこもり状態と推計されたが、実態はもっと多いと思っている。コロナ禍の影響が初めてデータで示されたが、もともと生きづらさを感じていた人たちが、より一層、精神的に不安定になったと考えられるほか、弱い立場にいる人が雇用を切られるなどして諦めてしまったことなどが考えられる」と述べました。

また、男性だけでなく、女性にも「ひきこもり」の問題が広がっていることについて「日本の伝統的な価値観の中で、女性は夢や希望を追い求めようとしても、家事や育児などで男性よりも高いハードルを課せられて、諦めてきた人が多くいる。そうした人たちが自分の状況を認識し、存在が顕在化してきたのではないか」という認識を示しました。

さらに「相談しても解決できない」と考える「ひきこもり」の人が半数を超えていることについて、「解決型の支援や個人を社会に適用させる支援のあり方に限界があると感じている。一人ひとりに寄り添って信頼関係を作り、悩み事を聞くなかで、社会につながるきっかけを作る支援が求められている。自宅以外に安心して声を上げられる場をネット空間などにいかに作っていくかが大事になっている」と述べたうえで、「ひきこもりは遠い世界の問題ではなく、自分や家族もなるかもしれない自分事と受け止めてほしい」と訴えました。