日中の防衛当局ホットライン開設 自衛隊と中国軍の衝突を防ぐ

日中両政府は、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を防ぐため防衛当局どうしが直接連絡を取り合うホットラインを、31日開設したと明らかにしました。

自衛隊と中国軍の海上や空での偶発的な衝突を避けるため、日中両政府は2018年6月から両国の連絡体制として「海空連絡メカニズム」の運用を始め、この中では年次会合の開催や、現場の部隊間でのやり取りを進めてきていますが、ホットラインの設置が残された課題となっていました。

これについて日中両政府は31日、両国間で専用回線の敷設などが完了し、ホットラインを開設したと明らかにしました。

今後、必要に応じて両国の幹部どうしがやり取りする際に使うとしています。

ホットラインは当初、去年の運用開始を目指していましたが、新型コロナの影響などで開始が遅れ、去年11月に行われた岸田総理大臣と中国の習近平国家主席による首脳会談を受けて、運用開始に向けて調整が進められてきました。

防衛省は「専用回線ができたことでより情報を保全した形で確実に連絡を取り合うことができるようになり、日中の防衛当局間の信頼醸成や不測の事態を回避するうえで意義がある」としています。

自衛隊では

防衛当局どうしが直接連絡を取り合う「ホットライン」が開設されたことについて、自衛隊の幹部の1人は「長年検討されてきたホットラインが使えるようになったのは、大きな進歩だ。相手と遭遇したときに現場レベルでやり取りをするだけではなく、意思決定をする主要な幹部がやり取りできることは、事態のエスカレーションを避けることにつながる」と話しています。

一方、別の自衛隊幹部は「ホットラインは戦闘機がニアミスをしたり、艦艇どうしが接触したりするなどの際どい状況に際して、迅速に意図を伝え合い事態を沈静化させることが主な使用場面として想定される。仮に使用する場合は、伝えられた意図を読み違えないことが重要で、日頃の防衛当局間の交流の積み上げも必要になる」と指摘しています。

中国国防省も開設を発表 “平和と安定の維持に有益”

日本と中国の防衛当局どうしのホットラインについて、中国国防省も3月31日に開設を発表し、「両国の防衛部門の意思疎通のルートを効果的に充実させ、双方の海と空での危機管理能力を強化し、地域の平和と安定をさらに維持するのに有益だ」と強調しました。