【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア連邦保安庁「米紙記者を拘束 スパイ活動の疑い」

ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁は30日、アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記者をスパイ活動を行っていた疑いで拘束したと発表しました。

連邦保安庁は、この記者は、モスクワに駐在するアメリカ国籍の特派員だとしています。

その上で「アメリカ政府のためにロシアの軍需産業に関する情報を収集しようとスパイ活動を行っていた疑いがある」として中部の都市エカテリンブルクで拘束したとしています。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン政権は、国内で活動するメディアへの締めつけを強めています。

ウクライナ国防相「レオパルト2 反転攻勢で投入」

ウクライナのレズニコフ国防相は27日、ドイツなどから供与が進む主力戦車「レオパルト2」を実戦に投入する時期についてエストニアのメディアの取材に答えました。

この中で、レズニコフ国防相は「ウクライナ軍の参謀本部が複数の方面で計画している、反転攻勢の作戦の中で目にすることができるだろう」と述べました。

その上で「天候しだいではあるが、これからの2か月間で投入されるだろう」と述べロシア軍に対する大規模な反転攻勢に打って出る際に、「レオパルト2」を活用する見通しであることを明らかにしました。

また、激戦が続く東部のバフムトの状況については「われわれはロシア軍の攻撃力を減らし、前線を安定化させていて、それによって反転攻勢のための時間を稼げている」と述べ、反撃に向けてロシア軍を消耗させることに成功しているという見解を示しました。

その上で、「ことしはとてもよい変化が訪れるだろう。ウクライナは一時的に占拠された地域を解放し続ける」として領土を奪還する考えを強調しました。

英 国防相「ロシア軍の死傷者 22万人以上」

イギリスのメディアによりますとウォレス国防相は、29日の会見で、ウクライナに軍事侵攻を続けるロシア軍の兵士などの死傷者について「アメリカの最新の見立てでは、死傷者は22万人以上にのぼる」と述べ、アメリカからの情報をもとに、ロシア側の消耗が進んでいるという見方を明らかにしました。

さらに、「ロシア軍はほとんど進展していない」と述べ、ロシア軍の部隊は多大な犠牲を出しつつも、ほとんど前進できていないという分析を示しました。

ウォレス国防相は先月下旬、地元メディアによるインタビューの中で、死傷者数が18万8000人に上ったという見方を示したばかりですが、今回、新たに示された死傷者の数は、3万人以上増えていて、1か月余りの間に、ロシア側の消耗がさらに進んだ形です。

バイデン大統領 民主主義サミットで結束を呼びかけ

アメリカのバイデン大統領はおよそ120の国や地域の首脳などを招いて「民主主義サミット」を開き、中国やロシアを念頭に民主主義国家の結束を呼びかけるとともに、各国が民主的な改革を推進するためなどの費用として最大で6億9000万ドル、日本円にして900億円あまりを拠出すると発表しました。

おととしに続いて2回目となる「民主主義サミット」は29日から2日間の日程でオンラインで開かれ、日本やヨーロッパ諸国などおよそ120の国や地域の首脳らが出席しました。

中国やロシアは前回のサミットに続き、招待されていません。

演説でバイデン大統領は「民主主義国家はかつてないほど結束してロシアの残忍な戦いを非難し、民主主義を守ろうとするウクライナの国民を支援している」と述べました。

そのうえで「民主主義は強くなり、専制主義は弱体化している」と述べて軍事侵攻を続けるロシアや覇権主義的な行動を強める中国を念頭に、結束して対抗していくことを呼びかけました。

そして各国が民主的な改革を推進することなどに最大で6億9000万ドル、日本円にして900億円あまりを拠出すると発表しました。
会合ではウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで演説し「ロシアが血塗られた手を伸ばしているのはウクライナだが、ロシアの野望はそれだけにとどまらない。民主主義はただちに勝利しなければならない」と述べて各国に支援を呼びかけました。

ロシア「アメリカは世界の教師としての役を演じたい」

「民主主義サミット」についてロシア大統領府のペスコフ報道官は29日「アメリカは、いわゆる民主主義の問題で世界の教師としての役を演じたいのだろう。世界を1流と2流とに分断しようとする試みだ。重要なイベントとも思えない」と述べ、アメリカを批判しました。

IAEA事務局長 ザポリージャ原発を訪問 現地の状況を確認

IAEAのグロッシ事務局長は29日、ウクライナ南部のザポリージャ原発を訪れ、施設の安全をめぐる状況を確認しました。

グロッシ事務局長がザポリージャ原発を訪れるのは去年9月以来、2度目です。

ロシア軍が占拠するザポリージャ原発は、相次ぐ砲撃などによって原子炉の冷却などに必要な外部からの電力の供給が途絶える事態がたびたび起きています。

グロッシ事務局長は施設内で記者会見を開き「状況は改善していない」と述べ原発を含む地域で軍事行動が増えているとして懸念を示しました。
IAEAは原発の安全に向け、ロシア、ウクライナ双方に施設の周辺を安全が確保された区域に設定することを提案してきましたが、グロッシ事務局長は「いまは、原発を守るためどのような行動を避けるべきかに集中している」と述べ、区域の設定にはこだわらず、原発を攻撃の対象にしないための合意を目指す考えを示しました。

さらにグロッシ事務局長は「原発事故は避けなければいけない。すべての関係者が受け入れられる現実的で価値のある提案を示そうとしている」と述べ、ロシアとウクライナへの働きかけに取り組む考えを強調しました。

ロシア報道官 欧米との対立深まり “軍事侵攻 長期化する”

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して30日で400日となります。

これを前にロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、軍事侵攻の見通しについて記者団に聞かれ「敵対する国や非友好的な国々との対決、われわれの国に対するハイブリッド戦争など、広い意味の戦争でいえば長引くことになる」と述べ、欧米との対立が深まる中、侵攻は長期化するという認識を示しました。
その上で「われわれは大統領を中心に結束する必要がある」と述べ、国民に結束を求めました。

これに関連してイギリスの新聞ガーディアンの電子版は28日、ペスコフ報道官が去年暮れに開かれた私的な夕食会で、政界の高官や文化人を前に「状況はさらに難しくなる。非常に長い時間がかかるだろう」と述べたと、匿名の参加者の話として伝えています。
28日にはショイグ国防相が兵器工場を訪れ、増産に取り組むよう指示するなどプーチン政権は、ウクライナへの軍事支援を加速させている欧米に対抗し、軍事侵攻を続ける姿勢を鮮明にしています。

ウクライナ東部バフムトでは一進一退の攻防

ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトの戦況をめぐって、ウクライナ軍の参謀本部は29日「敵は攻撃を繰り返し一部で押し込んでいるが、われわれは何度も退けている」と発表し、一進一退の攻防が続いているという見方を示しました。

ウクライナ国防省のマリャル次官は29日、SNSに「残念ながら戦争には損失がつきものだ。しかし敵の損失は何倍も大きい」と投稿し、大規模な反転攻勢に向けてバフムトを防衛し続ける考えを強調しました。

ロシア 核軍縮条約「新START」めぐるアメリカの対応を批判

核軍縮条約「新START」についてアメリカがロシアによる条約の履行停止を理由に条約に基づくロシアへの戦略核兵器に関する情報提供の停止を決めたことについてロシア外務省のリャプコフ次官は29日「アメリカが責任をロシアに押しつけている」と批判しました。

さらにリャプコフ次官は、ミサイルの発射訓練の計画をアメリカ側に通知するかどうかについて「通知は行われない。すべての通知や情報の交換や検査など条約のもとで行われたあらゆる作業は停止される」と述べました。

ロシアはウクライナ情勢で対立するアメリカに対し、核戦力も誇示しながらけん制を強めていますが、米ロ間の核軍縮への影響も懸念されています。

ロシア外相 イラン外相と会談 欧米側を非難

ロシアのラブロフ外相は29日、首都モスクワを訪問したイランのアブドラヒアン外相と会談しました。

会談後の記者会見で、ラブロフ外相は「われわれはウクライナ情勢についても協議し、NATO=北大西洋条約機構が紛争に関与していると指摘した。NATOは実質的にウクライナ側に立って戦っている」と述べ、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米側を非難しました。

そのうえで、「イランのバランスのとれた立場をわれわれは称賛する。プーチン大統領とイランのライシ大統領はことし、すでに3回電話で会談していて今後も計画がある」と述べ、友好国イランとの緊密な関係をアピールしました。

これに対し、イランのアブドラヒアン外相も「欧米のウクライナへの兵器供与が停戦をめぐる情勢をより困難にしている」と述べ、ともに対立するアメリカなどをけん制しました。

一方、欧米側は、ウクライナの戦闘で兵器不足に直面するロシア軍に対し、イランが無人機やミサイルの供与などの協力を進めている疑いがあるとして、両国の軍事的な結び付きへの警戒を強めています。