俳優 奈良岡朋子さん死去 肺炎のため 93歳

舞台や映画で活躍し、連続テレビ小説「おしん」などテレビドラマのナレーションでも親しまれた俳優の奈良岡朋子さんが今月23日、肺炎のため、東京都内の病院で亡くなりました。93歳でした。

奈良岡さんは東京の出身で、洋画家の父、奈良岡正夫の影響で今の女子美術大学で絵画を学びながら1948年に現在の劇団民藝に入り、舞台での活動を始めます。

その後は、同期生だった大滝秀治さんらとともに劇団の代表的な存在となり、「かもめ」や「奇蹟の人」など数々の舞台で高い評価を得てきました。

テレビドラマや映画でも名脇役を演じたほか、NHKの大河ドラマ「春日局」や「篤姫」、それに連続テレビ小説「おしん」など、多くのナレーションでは落ち着いた語り口で親しまれました。

1992年には紫綬褒章、2000年には勲四等旭日小綬章を受章しています。

また、2013年からは原爆の悲惨さを描いた「黒い雨」のひとり語りの舞台がライフワークとなり、全国各地で上演するなど、平和を訴える活動を続けていました。

劇団民藝によりますと、奈良岡さんは去年も舞台に立つなど最近まで活動を続けていましたが、体調を崩し今月23日夜、肺炎のため亡くなりました。

奈良岡さんが生前残したコメント

劇団民藝は、奈良岡朋子さんが生前残していたコメントを発表しました。

親交のあった宇野重吉さんや、杉村春子さんなどとともに、また天国で舞台を演じることを楽しみにする思いなどがつづられています。

以下、全文です。

「新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます。向こうへ着いたらすぐに宇野(重吉)さんを訪ねます。もう一度あの厳しい演出を受けたいと長い間願ってきました。でもね、宇野さん、私はあなたよりずっと長く生きて経験を積んできましたからね、昔のデコ(奈良岡さんの愛称)じゃないですよ。『デコ、お前ちっとましになったな』と言われたくてこれまで頑張ってきたんですから。腕が鳴ります。杉村(春子)先生ともう一度同じ舞台を踏みたかった。どんな役でもいいからご一緒したい。ワクワクします。両親に挨拶するのは二、三本舞台をやって少し落ち着いてからにします。それからは裕ちゃん(石原裕次郎)や和枝さん(美空ひばり)と思いっきり遊びます。これが別れではないですよ。いつかはまたお会いできますからね。それでは一足お先に失礼します。皆さまはどうぞごゆっくり・・・」。

仲代達矢さん「新劇界の輝くスター的な存在であこがれの的」

奈良岡さんと共演し、親交があった俳優の仲代達矢さんは「奈良岡朋子さんと共演した『ドライビング・ミス・デージー』では、ほとんど五年近い歳月、日本各地で三百ステージを超える舞台を御一緒させて頂きました。同じ戦後の華やかなりし『新劇』世代ですが、彼女は私よりも二、三年先輩で、私が俳優座の養成所に入った頃には、既に新劇界の輝くスター的な存在で、我々のあこがれの的でもありました。『ドライビング』で一緒になった時も、古い友人に会ったような親しさがあり、繊細でこまやかな彼女の心理描写には学ぶことが多かったものです」というコメントを出しました。

石川さゆりさん「皆で平和であることを守らなければ」

奈良岡さんと長年親交があり、舞台公演などにもたびたび訪れていたという歌手の石川さゆりさんは、自身の公式サイトでコメントを出し、「人にも、ご自分にも厳しい奈良岡さんでした。原発のことも、戦争のことも、いつも日本や世界の出来事に怒り、心を痛めていらっしゃいました。皆で平和であることを守らなければと思います。良い芝居とは、歌とは、いろいろな事を教えて下さいました。驚きと寂しさでいっぱいです。心やすらかに、ご冥福をお祈り致します」としのびました。