この中でバー副議長は冒頭、「アメリカの銀行システムは健全で強固な資本と流動性がある」と述べたうえで「今後も銀行システムの安全性と健全性を維持するために必要に応じてどんな規模の金融機関に対してもあらゆる手段を講じる用意がある」と強調しました。
また、破綻したシリコンバレーバンクについては「銀行が直面する金利と流動性のリスクを管理できなかった、経営の失敗の教科書のような事例だ」と述べ経営陣を批判しました。
一方、シリコンバレーバンクに対するFRBの監督と規制をめぐっては「どこが失敗だったのか説明するつもりだ」とし、「銀行の急成長とぜい弱性に対しFRBの監督が適切だったかどうかに着目している」と述べ、経緯の検証を進める考えを示しました。
公聴会では、FDIC=連邦預金保険公社のグルーエンバーグ総裁も証言し、1口座当たり25万ドルを上限に預金を保護する今の制度について、「包括的な見直しに着手する」と述べました。
FRB副議長 銀行破綻で「FRBの監督 適切だったかどうかに着目」
アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会で銀行の監督を担当するバー副議長は28日、議会上院の公聴会で証言し、破綻したシリコンバレーバンクについて「FRBの監督が適切だったかどうかに着目している」と述べ、経緯の検証を進める考えを示しました。

経営破綻の要因は?
記録的なインフレを抑えこむためのFRBによる急速な利上げの影響で、アメリカの銀行が抱える国債など有価証券の含み損は急拡大しています。
アメリカのFDIC=連邦預金保険公社によりますと、金利の上昇によって、ほとんどの銀行が含み損を抱えていて、その額はアメリカの銀行全体では去年末の時点で、およそ6200億ドル、日本円で81兆5000億円余りにのぼります。
債券は、満期になるまで保有していれば損失が確定することはありませんが、預金の引き出しが急増するなど、急きょ資金が必要になると損失覚悟で売却を迫られるおそれがあります。
相次いで破綻した2つの銀行のうち「シリコンバレーバンク」は、コロナ禍で行われた大規模な金融緩和を背景に預金量が急増し、国債など安全とされる債券を購入して運用していました。
しかし、FRBによる急速な利上げで金利が低いときに購入していた国債などの価格は大きく下落、含み損を抱える形となりました。
そこに顧客による預金引き出しが急増。
これに応じるため国債などの売却を余儀なくされて損失が膨らみ、経営が悪化したことが破綻の要因と見られています。
アメリカのFDIC=連邦預金保険公社によりますと、金利の上昇によって、ほとんどの銀行が含み損を抱えていて、その額はアメリカの銀行全体では去年末の時点で、およそ6200億ドル、日本円で81兆5000億円余りにのぼります。
債券は、満期になるまで保有していれば損失が確定することはありませんが、預金の引き出しが急増するなど、急きょ資金が必要になると損失覚悟で売却を迫られるおそれがあります。
相次いで破綻した2つの銀行のうち「シリコンバレーバンク」は、コロナ禍で行われた大規模な金融緩和を背景に預金量が急増し、国債など安全とされる債券を購入して運用していました。
しかし、FRBによる急速な利上げで金利が低いときに購入していた国債などの価格は大きく下落、含み損を抱える形となりました。
そこに顧客による預金引き出しが急増。
これに応じるため国債などの売却を余儀なくされて損失が膨らみ、経営が悪化したことが破綻の要因と見られています。
預金引き出し急増の背景は?

シリコンバレーバンクは破綻する直前の今月8日、顧客の預金引き出しに応じるため価格が下落していた国債などを売却した結果、巨額の損失を出したと発表しました。
発表のあと大手格付け会社ムーディーズがシリコンバレーバンクの格付けを引き下げ、預金の引き出しはさらに加速します。
翌日9日にはわずか1日で420億ドル、日本円で5兆5000億円余りの預金が流出しました。
アメリカの銀行破綻で過去最大となった2008年9月の貯蓄金融機関ワシントン・ミューチュアルのケースでは、およそ10日間で引き出された預金は167億ドル、2兆1900億円余りでした。
今回のケースが、いかに大規模で異常なスピードだったかが分かります。
背景には、預金のおよそ90%が保険で保護されない預金だったことや、SNSなどで経営不安が一気に広まったことがあると見られています。
FRBのバー副議長は、「異常な速度で大規模な流出だ。銀行のスタッフは徹夜でFRBからの貸し出しを受けるための担保を確保しようとした。10日・金曜日には1000億ドルの預金が流出する見込みで、十分な担保が確保できず、破綻にいたった」と振り返りました。
またバー副議長は、委員から「シリコンバレーバンクを監督する責任があるFRBが、なぜリスクを見落とすという失敗を犯したのか」と質問が投げかけられると、「シリコンバレーバンクが抱えていた金利と流動性のリスクについては2021年11月から注目され、FRBもこの問題を銀行に伝えてきた。しかし、銀行が適切なタイミングで対処しなかったことを残念に思う」と述べました。
発表のあと大手格付け会社ムーディーズがシリコンバレーバンクの格付けを引き下げ、預金の引き出しはさらに加速します。
翌日9日にはわずか1日で420億ドル、日本円で5兆5000億円余りの預金が流出しました。
アメリカの銀行破綻で過去最大となった2008年9月の貯蓄金融機関ワシントン・ミューチュアルのケースでは、およそ10日間で引き出された預金は167億ドル、2兆1900億円余りでした。
今回のケースが、いかに大規模で異常なスピードだったかが分かります。
背景には、預金のおよそ90%が保険で保護されない預金だったことや、SNSなどで経営不安が一気に広まったことがあると見られています。
FRBのバー副議長は、「異常な速度で大規模な流出だ。銀行のスタッフは徹夜でFRBからの貸し出しを受けるための担保を確保しようとした。10日・金曜日には1000億ドルの預金が流出する見込みで、十分な担保が確保できず、破綻にいたった」と振り返りました。
またバー副議長は、委員から「シリコンバレーバンクを監督する責任があるFRBが、なぜリスクを見落とすという失敗を犯したのか」と質問が投げかけられると、「シリコンバレーバンクが抱えていた金利と流動性のリスクについては2021年11月から注目され、FRBもこの問題を銀行に伝えてきた。しかし、銀行が適切なタイミングで対処しなかったことを残念に思う」と述べました。
なぜ破綻を見抜けなかったのか?
2008年の金融危機を教訓に銀行への監督・規制が強化されてきたアメリカで、なぜ相次ぐ銀行破綻を見抜けなかったのでしょうか。
銀行への監督・規制の柱となるのが、FRB=連邦準備制度理事会が銀行経営の健全性を審査するいわゆる「ストレステスト」です。
リーマンショックのあと2010年に成立した、いわゆるドッド・フランク法のもと厳格な審査が導入されました。
これは深刻な景気後退などが起きた場合に十分な資本の備えがあるかどうかなどを徹底的に調べる審査です。
当初は、厳格な審査の対象となるのは500億ドル以上の資産を持つ金融機関でした。
しかし、トランプ前政権の下で行われた規制緩和によって状況が変わります。
この厳格な審査の対象が500億ドル以上から2500億ドル以上に引きあげられました。
そのうえで総額1000億ドル以上の銀行は4つの区分に分けられました。
1000億ドルから2500億ドル未満の銀行は、審査の頻度が2年に1度に減らされました。
また、金融危機などによる資金流出にたえられる基準を満たしているかといった審査項目も除外されるなど、その内容も緩やかなものになりました。
FRBのバー副議長は、委員から規制の強化が必要だと考えているかと問われると、「1000億ドル以上の金融機関に対して資本と流動性の基準を強化する必要があると考えている」と述べました。
またアメリカのFDIC=連邦預金保険公社のグルーエンバーグ総裁は公聴会の冒頭、「2つの銀行の破綻は総資産1000億ドル以上の銀行が金融の安定に影響を及ぼしうるということを示している。こうした規模の銀行の規制において金利と流動性のリスクに真剣に向き合わなくてはならない」と発言しました。
銀行への監督・規制の柱となるのが、FRB=連邦準備制度理事会が銀行経営の健全性を審査するいわゆる「ストレステスト」です。
リーマンショックのあと2010年に成立した、いわゆるドッド・フランク法のもと厳格な審査が導入されました。
これは深刻な景気後退などが起きた場合に十分な資本の備えがあるかどうかなどを徹底的に調べる審査です。
当初は、厳格な審査の対象となるのは500億ドル以上の資産を持つ金融機関でした。
しかし、トランプ前政権の下で行われた規制緩和によって状況が変わります。
この厳格な審査の対象が500億ドル以上から2500億ドル以上に引きあげられました。
そのうえで総額1000億ドル以上の銀行は4つの区分に分けられました。
1000億ドルから2500億ドル未満の銀行は、審査の頻度が2年に1度に減らされました。
また、金融危機などによる資金流出にたえられる基準を満たしているかといった審査項目も除外されるなど、その内容も緩やかなものになりました。
FRBのバー副議長は、委員から規制の強化が必要だと考えているかと問われると、「1000億ドル以上の金融機関に対して資本と流動性の基準を強化する必要があると考えている」と述べました。
またアメリカのFDIC=連邦預金保険公社のグルーエンバーグ総裁は公聴会の冒頭、「2つの銀行の破綻は総資産1000億ドル以上の銀行が金融の安定に影響を及ぼしうるということを示している。こうした規模の銀行の規制において金利と流動性のリスクに真剣に向き合わなくてはならない」と発言しました。
シリコンバレーバンクはストレステストの対象外

去年のストレステストでは34の銀行が審査の対象でしたが、破綻したシリコンバレーバンク、シグネチャーバンク、そして、一時経営への懸念が高まっていたファースト・リパブリック・バンクも対象になっていませんでした。
3つの銀行は、ともに、おととし12月末の時点で1000億ドル以上の総資産がありました。
この背景にあるのが資産規模の急拡大です。
3つの銀行とも金融緩和によるマネー膨張の影響で総資産がこの3年間で、およそ2倍から3倍に急増していました。
アメリカの金融当局の関係者によりますと、審査には膨大な手続きが必要で、準備に少なくとも2年はかかるといいます。資産規模が大きくなってから金融当局が審査に入るまでには一定の時間がかかることになります。
金融緩和によるマネー膨張のスピードが速すぎて、いわば審査をすり抜けてしまった実態が浮き彫りになりました。
FRBのバー副議長はシリコンバレーバンクが2021年末時点で本来、ストレステストの対象となる1000億ドル以上の総資産がありながら審査の対象外となった理由について、「審査対象の銀行に移行するまでにはしばらく時間がかかるためだ。1000億ドル以上の銀行の審査は2年に1度のためシリコンバレーバンクは2024年に対象になるはずだった」と述べました。
また委員からシリコンバレーバンクがストレステストを受けていれば結果は違っていたかと問われたのに対し、バー副議長は「その答えは分からない」と明言を避けました。
そのうえで、ストレステストにおいて、金利上昇のリスクの審査は主要な方法ではないが、金利上昇リスクを踏まえて銀行の健全性を審査すべきだという考えを示しました。
3つの銀行は、ともに、おととし12月末の時点で1000億ドル以上の総資産がありました。
この背景にあるのが資産規模の急拡大です。
3つの銀行とも金融緩和によるマネー膨張の影響で総資産がこの3年間で、およそ2倍から3倍に急増していました。
アメリカの金融当局の関係者によりますと、審査には膨大な手続きが必要で、準備に少なくとも2年はかかるといいます。資産規模が大きくなってから金融当局が審査に入るまでには一定の時間がかかることになります。
金融緩和によるマネー膨張のスピードが速すぎて、いわば審査をすり抜けてしまった実態が浮き彫りになりました。
FRBのバー副議長はシリコンバレーバンクが2021年末時点で本来、ストレステストの対象となる1000億ドル以上の総資産がありながら審査の対象外となった理由について、「審査対象の銀行に移行するまでにはしばらく時間がかかるためだ。1000億ドル以上の銀行の審査は2年に1度のためシリコンバレーバンクは2024年に対象になるはずだった」と述べました。
また委員からシリコンバレーバンクがストレステストを受けていれば結果は違っていたかと問われたのに対し、バー副議長は「その答えは分からない」と明言を避けました。
そのうえで、ストレステストにおいて、金利上昇のリスクの審査は主要な方法ではないが、金利上昇リスクを踏まえて銀行の健全性を審査すべきだという考えを示しました。
専門家「当局が常に監督しなければならない」
破綻した銀行は、いずれもストレステストの対象ではなかったことについて、FRBの副議長を務めたプリンストン大学のアラン・ブラインダー教授は、「本来、預金残高が急激に伸びている銀行は当局が常に監督しなければならない。なぜ、これほど急速に資金が流入したのか。そして急速に流出する可能性はないのか、銀行のバランスシートにリスクが潜んでいるのかを把握するべきだ」と指摘しました。

また、銀行法が専門のアメリカン大学ヒラリー・アレン教授は、「預金の取り付けによる銀行の破綻はこれまで何度も目にしてきた破綻だが、SNSによって、うわさの広がるスピードが速くなったことは確かだ。今回の取り付けのスピードは規制当局にとってもショックで、SNSなどを通じて他の銀行にも波及することを恐れて異例の措置に踏み切った」という考えを示しました。
そのうえで、「2018年に行われた銀行への規制緩和は、シリコンバレーバンクのような規模の銀行が金融システム不安を引き起こすことを心配する必要はないという考え方だった。預金の全額保護のような措置を講じるのであれば、その重要性に見合ったより厳しい規制と監督を行うことが重要だ」と述べ、金融システムにとって重要な銀行の基準を厳しくして審査対象を2500億ドルから引き下げるべきだと主張しました。
そのうえで、「2018年に行われた銀行への規制緩和は、シリコンバレーバンクのような規模の銀行が金融システム不安を引き起こすことを心配する必要はないという考え方だった。預金の全額保護のような措置を講じるのであれば、その重要性に見合ったより厳しい規制と監督を行うことが重要だ」と述べ、金融システムにとって重要な銀行の基準を厳しくして審査対象を2500億ドルから引き下げるべきだと主張しました。