【解説】“ベラルーシに戦術核兵器”ロシア 中国の蜜月関係は

プーチン大統領は同盟関係にあるベラルーシに戦術核兵器を配備する方針を表明するなど、ウクライナへの軍事支援を強化する欧米側へのけん制を強めています。

この方針がロシアと中国の蜜月関係に果たして悪影響を与えないのか、注目されています。油井秀樹キャスターの解説です。

(動画は5分04秒。データ放送ではご覧になれません)

プーチン大統領 “ベラルーシに戦術核兵器配備”

ロシア軍が掌握をねらうウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトの状況について、ロシア側の攻撃の勢いが失われているという見方が相次いでいます。

こうしたなかで、ロシアのプーチン大統領は同盟関係にある隣国のベラルーシに戦術核兵器を配備する方針を表明し、ことし7月1日までにベラルーシ国内に核兵器を保管する施設が建設される予定だと明らかにしました。
ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之 研究員は、ロシアのプーチン大統領がベラルーシに戦術核兵器を配備すると明らかにしたことについて「ほかの国を巻き込んだ形で核のカードを切ってきたのは、新しいフェーズだ。侵攻が長引いて、ロシア軍が思うような戦いが進められていない中で、欧米をけん制するとともに、軍事力を強化しているというロシア国内向けのメッセージではないか」と指摘しました。

また、ロシア側が現時点で戦術核を使用する可能性は低く、ベラルーシへの戦術核兵器の配備が戦況に大きな変化をもたらすことはないとしました。

そのうえで長谷川研究員は「ロシア側は、NATO=北大西洋条約機構や欧米諸国と比べて、戦車など通常兵器でかなり劣っている。プーチン大統領は引き続き、核のカードを使うことに依存し、今後、その依存を深めるリスクがある」と述べ、ロシア側は引き続き、核戦力を誇示して威嚇を続けるとみられるとしてその意図を見極めていく必要があると指摘しました。
プーチン大統領の発言についてウクライナ外務省は26日「犯罪的なプーチン政権による新たな挑発行為だ」と非難し、NATOの報道官も「危険で無責任な主張だ」などとして、ウクライナや欧米側から批判の声が上がっています。

油井キャスターの解説「習主席のメンツつぶしたと指摘も」

プーチン大統領が表明したベラルーシに戦術核兵器を配備する方針。

この方針がロシアと中国の蜜月関係に果たして悪影響を与えないのか、注目されています。

というのも、先週、モスクワで行われた、プーチン大統領と中国の習近平国家主席との会談で、両首脳は関係強化の共同声明を発表しましたが、その中には、こんな文言があるのです。
「すべての核保有国は、核兵器を国外に配備すべきではなく、国外に配備した核兵器は撤去すべきだ」

それだけに今回のプーチン大統領のベラルーシに核兵器を配備する方針は、数日前に発表した中ロ共同声明とは相いれず、習近平国家主席のメンツを潰したという指摘が出ているのです。

指摘した1人がアメリカのマイケル・マクフォール元駐ロシア大使です。
これまでプーチン大統領と何度も面会したことがあるアメリカ有数のロシア通とも言われるマクフォール氏は、ツイッターに「プーチンは共同声明と反対のことを行った。プーチンもルカシェンコも習近平を侮辱した。この(核配備)決定が中国で良く受け入れられるとは思えない」
と投稿したのです。

「中国は侮辱された」という指摘ですが、実際に中国は、今回のプーチン大統領の発表をどう思っているのか。

中国外務省の報道官は27日、次のように反応しました。
「すべての当事者は、ウクライナ危機の平和的解決に向けた外交努力と情勢緩和の促進に焦点をあてるべきだ」

冷ややかな反応で、少なくとも歓迎はしていないといえそうです。

実は習近平国家主席のロシア訪問をめぐっては、欧米からは中ロ蜜月という点で警戒する声が多かった一方で、先ほどの核兵器の文言に関しては評価する声も一部で出ていたのです。

その1人がEUの外相にあたるボレル上級代表で、「1つの重要なことは、習主席の訪問が核戦争のリスクを減らしたことだ」と発言し、中国を評価していたのです。

このEUのボレル上級代表、フォンデアライエン委員長、そしてスペインのサンチェス首相、フランスのマクロン大統領といったヨーロッパの政治指導者は近く相次いで中国を訪問し、ロシアの軍事侵攻をとめる役割を果たすよう促す方針と伝えられています。

中国が和平に向けて具体的な対応を示すのか。

それともロシアに寄り添う姿勢を続けるのか。

まずはヨーロッパの指導者達の会談でどのような対応を示すかが焦点となりそうです。