ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員は、ロシアのプーチン大統領がベラルーシに戦術核兵器を配備すると明らかにしたことについて、「ほかの国を巻き込んだ形で核のカードを切ってきたのは、新しいフェーズだ。侵攻が長引いて、ロシア軍が思うような戦いが進められていない中で、欧米をけん制するとともに、軍事力を強化しているというロシア国内向けのメッセージではないか」と指摘しました。
また、ロシア側が現時点で戦術核を使用する可能性は低く、ベラルーシへの戦術核兵器の配備が、戦況に大きな変化をもたらすことはないとしました。
そのうえで長谷川研究員は、「ロシア側は、NATO=北大西洋条約機構や欧米諸国と比べて、戦車など通常兵器でかなり劣っている。プーチン大統領は引き続き、核のカードを使うことに依存し、今後、その依存を深めるリスクがある」と述べ、ロシア側は引き続き、核戦力を誇示して威嚇を続けるとみられるとして、その意図を見極めていく必要があると指摘しました。
ロシア べラルーシに戦術核兵器配備方針 欧米へのけん制強める
ロシア軍が掌握をねらうウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトでロシア側の勢いが失われているという見方が相次いでいます。こうした中で、プーチン大統領は同盟関係にあるベラルーシに戦術核兵器を配備する方針を表明するなど、ウクライナへの軍事支援を強化する欧米側へのけん制を強めています。
ロシア軍が掌握をねらうウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトの状況について、ウクライナ軍の東部方面部隊の報道官は26日、ロシアによる攻撃の回数がこの2日間減っていることを明らかにしました。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も26日、「ロシア軍はバフムトや周辺の攻撃を続けているが、市内でわずかな前進しかみられない」と指摘し、ロシア側の攻撃の勢いが失われているという見方が相次いでいます。
こうした中で、ロシアのプーチン大統領は同盟関係にある隣国のベラルーシに戦術核兵器を配備する方針を表明し、ことし7月1日までにベラルーシ国内に核兵器を保管する施設が建設される予定だと明らかにしました。
さらに、プーチン大統領の側近のパトルシェフ安全保障会議書記は、27日に公開されたロシアメディアのインタビューに対し、「NATO=北大西洋条約機構はこの紛争の当事者となっている。戦場でロシアを敗北させ、解体するという目的を隠そうともしていない」と反発するなど、ロシア側はウクライナへの軍事支援を強化する欧米側へのけん制を強めています。
プーチン大統領の発言について、ウクライナ外務省は26日、「犯罪的なプーチン政権による新たな挑発行為だ」と非難し、NATOの報道官も「危険で無責任な主張だ」などとして、ウクライナや欧米側から批判の声が上がっています。
専門家「プーチン大統領 核のカード依存深めるリスクある」
