再配達を2度も3度も… 減らすにはどうしたら?

再配達を2度も3度も… 減らすにはどうしたら?
「再配達になる割合は多いと4割という時もある。しょうがない事情もあると思うが、時間指定で不在だと『なんで?』って思います…」

年間およそ50億個に上る日本の宅配便。その1つ1つを配達する宅配ドライバーへの取材を通じて見えてきたのは、毎日、ぎりぎりの状況で荷物を届けている現実でした。ネット通販の普及で宅配便の数はいまも増え続けています。私たちにできることとは?(経済部記者 樽野章/山口局記者 池田昌平)

再配達率4割も…配達現場の実情

3月中旬、40代の宅配ドライバーに同行取材させてもらうことができました。

取材に応じてくれたこの日、1日で配達する荷物は約70個。
印象的だったのが、車を降りると走りながら配達する姿でした。

飲料水のボトルが入った10キロ近い箱を抱えながらも急いだ様子でインターフォンを押していました。
ドライバー
「ネット通販サイトでセールをしている時は、特に荷物の配達が集中しますね。私の場合は、1日に配達できる荷物は、150個くらいが限界ですが、走らないと間に合わないですよ。もうこれはくせになっているのでいつも走っていますね」
負担を大きくしているのが荷物の再配達です。

インターフォンを2回鳴らして反応がなければ、せっかく運んだ荷物を再び車内に戻さなければなりません。
こうした場合、その日のうちにさらに3回から4回訪ね、それでも不在だと翌日、再び配達に向かうことになります。

配達に同行した14個の荷物のうち、不在だったのは5個。

ほぼ3個に1個が再配達でした。

朝8時に配達を始めてもすべてを回り終えるのは夜8時を過ぎることも多いといいます。
ドライバー
「再配達になる割合は多いと4割という時もあります。しょうがない事情もあると思うんです。でも時間指定で不在だとなんで?って思うことがあります。1回で配達が終わるのならそれに越したことはないので、できれば変わって欲しい」
このドライバーが所属する東京・府中市の運送会社です。
個人事業主の配送業者などとも契約して、ネット通販で注文された日用品や食品などさまざまな商品の宅配業務を請け負っています。

この会社では再配達の荷物の割合が全体で18%程度に上っているということです。

配達業務は荷物1個あたりで単価が決まっています。

おおむね数百円の単価で、数をこなす必要があり、再配達で負担が増えても会社やドライバーの収入が増えるわけではありません。

運送会社の社長は、再配達を減らすためには根本的な仕組みを整備しないといけないと考えています。
デリバリーサービス 志村直純社長
「数をこなすことが収益につながるという仕組みになっているので、不在でお届けできないとデメリットも大きい。例えば置き配だと料金が少し割り引かれたり、時間指定だと割り増しになったりといった仕組みが整備されるとありがたい」

再配達を減らせ!政府が集中的な取り組みへ

「荷物を送る立場、受け取る立場としてできることがあることを理解してもらい、国民の皆様にもご協力頂きたい」

3月14日、斉藤国土交通大臣は、こう呼びかけ、4月の1か月間、再配達の削減に向けた集中的な取り組みを進めると明らかにしました。
・荷物を確実に受け取ることができる時間帯を指定する
・玄関先などに荷物を届ける「置き配」の活用
・コンビニでの受け取りや街なかの宅配ボックスの利用など
こうした取り組みへの理解を求める内容を、それぞれのホームページに掲載するなど、利用者への周知を徹底する方針です。

広がる多様な受け取り方

私たちには何ができるのでしょうか。

あの手この手の動きが広がっています。

東京のベンチャー企業Yperが手がけるのは「置き配」用のバック。

バッグはロックが付いたワイヤーを使って、折りたたんだ状態で玄関のドアノブなどにつり下げることができます。
広げると2リットルのペットボトルが18本入るほどの容量があります。

ファスナーを施錠するための南京錠もついているほか、省スペースで済むので、マンションなどの集合住宅でも導入しやすいということです。

長野県諏訪市で行われたこのバッグによる効果を調べる実証実験では、478人の市民が参加。

再配達の荷物の割合を80%余り減らすことができたということです。
Yper 内山智晴社長
「再配達が減って快適に荷物を受け取れるようになったと反響をいただいている。このスタイルが広がれば確実に配達の効率化に貢献できると考えています」
ネットでの注文で「置き配」を選択できるという企業もあります。

家具や日用品を扱うイケアでは、去年夏からネット注文をする際に置き配にするかどうかを尋ねる方法に改めました。
新型コロナで非接触で荷物を受け取りたいという利用者のニーズを踏まえ導入しましたが、いまでは半数ほどが置き配を選ぶということです。

「在宅であったとしても、置き配のほうが楽だ」という人も増えていて、今後は初期設定を置き配に変えることを検討しています。
イケア・ジャパン 大久保竜介さん
「荷物が届くのを待つために家で待機しないで済むという点が便利なんだと思います。物流はライフラインとなっていて、生活に欠かせないものです。みんなで維持するために協力する必要があり、小売企業としてもできることから対応をしていきたいです」
配達をあえて遅くすることで、負担を和らげようと模索する動きも。

ヤフーなどは通販サイト「LOHACO」で去年8月から、毎月の特定の日に限って配達日を3日後から7日後まで選べるサービスを始めました。
配達を遅くする代わりに、利用者にはポイントを付与。

配達日を遅くすればするほどポイントが高くなる仕組みです。

いまでは半数の利用者が遅めの配達を選んでいて、利用者の反応も上々だということです。

再配達は“当たり前のサービス”なのか?

海外では、再配達すると追加の料金がかかったり、再配達はしてくれず、配送センターまで荷物を取りに行かないといけなかったりするケースが多いということです。

荷物が届けられるまで何度も再配達してくれて、追加の料金もかからない…。

慣れてしまって久しい、こうしたサービス。

物流業界で働く人たちに支えられて成り立ってきたのだということに、思いをはせる時期に来ているのではないか、取材を通じてそう感じました。
経済部記者
樽野章
2012年入局
福島局などを経て
経済部で国土交通省を担当
山口放送局記者
池田昌平
2015年入局
高松局を経て現所属
地域経済の課題を取材