【解説】プーチン大統領と習主席 接近する両者の思惑は

ウクライナ情勢をめぐり、大きな動きがありました。ロシアと中国。そして、ウクライナとG7の議長国、日本の首脳会談が同じ日に行われました。どんな意味があるのか、今後のウクライナ情勢に及ぼす影響は。

ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんの解説です。

(動画は17分41秒。データ放送ではご覧になれません)

プーチン大統領は3月、中国の習近平国家主席をモスクワに招きました。

「敬愛する国家主席、そして大切な友よ、ようこそ、モスクワへ」。

両首脳は2日間で、夕食も共にしながら実に10時間以上にわたって協議に専念しました。習主席は、来年の大統領選挙をめぐって、立候補するかどうかまだ明らかにしていないプーチン大統領の再選に期待感を示しました。
「私はロシア国民が引き続き大統領に揺るぎない支持を与えると固く信じている」。

そして、プーチン大統領は、中国が示してきた対話と停戦を呼びかける立場を支持する姿勢を示し、ウクライナへの軍事支援を強める欧米をけん制しました。
「中国が提示した和平案は、平和的な解決の基礎となり得るが、今のところ欧米とウクライナに準備があるようには見えない。むしろ西側は徹底してロシアと戦うことを決めたようだ」。

習主席は、ロシアとのさらなる連携強化に意欲を示す一方で、ロシアへの軍事支援について具体的な言及はありませんでした。
中国は、どのようなねらいで今回の首脳会談に臨んだのか。

ロシアとウクライナの「仲介役」を買って出ることで、存在感をアピールするねらいがあったとみられます。

中国外務省の報道官も、「中国は客観的かつ公正な立場を堅持する。和平交渉を促すために建設的な役割を果たす」と、習主席の訪問前に強調していました。

また、ゼロコロナ政策などで停滞した経済を回復させるため、ロシアとの経済的な結びつきをさらに強めたいという思惑もあったとみられます。

少なくとも中国は、対米関係が悪化することは望んでいないと思われる一方、プーチン政権が倒れてロシアに欧米寄りの政権が誕生することは避けたいと思っているはずです。
中ロ首脳会談と同じ日。岸田総理大臣がウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と首脳会談を行いました。そして、ウクライナに殺傷能力のない装備品を支援するため3000万ドルを拠出することを表明しました。

「これは中国にとって、大きな誤算だった」と専門家の兵頭さんは指摘します。図らずも、「ウクライナ・日米欧」VS「中ロ」という対立の構図が鮮明になってしまったからです。「これは中国にとって好ましくなかったはずだ」と言及しました。

なぜなら、中国が「中立的な立場だ」といくら言ったところで、G7議長国として岸田首相がゼレンスキー大統領と握手しているのと同じ日に、戦争を仕掛けたプーチン大統領と習主席が握手しているのは、どう見ても「中ロ同盟」、「中国はロシアの味方」と見えてしまいます。

日程が重なったのは偶然だろうが、「中国はメンツを潰された」と思っていると兵頭さんは指摘しました。

ただ、ウクライナにとって中国は「むげにできない」相手。
そもそも侵攻前は中国が最大の貿易相手国で、経済的に重要な存在でした。
ロシア・ウクライナともに無視できない、「中国」という新たな仲介者が出てきたことで、この動きがどう進むのか注目されます。