地価 東京都心の商業地上昇 背景は? オフィス間競争激化も

ことし1月時点の全国の商業地の価格は、プラス1.8%と2年連続で上昇しました。去年は下落していた東京都の一部の区でも上昇に転じています。大型オフィスの供給が増加する一方、専門家からは、今後、東京都心などでオフィスビルどうしの競争が激しくなるという見方も出ています。

東京都心 港区などが上昇に転じる

東京都心の千代田区、中央区、港区の商業地は、新型コロナの感染拡大でオフィス需要が減少するという見方から、去年の地価公示ではいずれも地価が下落していました。

しかし、ことしは港区がプラス2.8%、千代田区と中央区がプラス2.1%といずれも上昇に転じました。

大型オフィスの供給 大幅↑

東京 中央区 八重洲 3月7日撮影
その背景にあるのが大規模な再開発です。

東京・中央区八重洲の東京駅前にオフィスや商業施設などが入る大規模再開発ビルが今月全面オープンしたのをはじめ、都心部は今後、港区や渋谷区などで大型オフィスの供給が予定されています。

不動産の調査やコンサルティングなどを行う「ジョーンズ ラング ラサール」によりますと、千代田区や港区など東京都心5区の大型オフィスの供給面積はことし61万平方メートル余りにのぼるとみられ、これは過去20年の平均供給量の34万平方メートル余りを大きく上回っています。
さらにオフィス仲介大手の「三鬼商事」のまとめでは、千代田区や港区など東京都心の5区にあるおよそ2600棟の先月の空室率は平均6.15%となっています。

専門家や業界の間では空室率5%が一般的にオフィス需要を判断する際の目安とされています。

専門家からは、一部のビルで空室がうまらず、選ばれるオフィスとそうでないオフィスとの差が出始めているという指摘も出ています。

独自の取り組みで高い入居率

こうした中、築年数の古いビルでも、テナント側のニーズを継続的にくみ取ることで、高い入居率を維持しているビルもあります。

東京・中央区にある築90年を超えるビルは、今も空室は1部屋にとどまり、順調にオフィスが稼働しています。
その要因のひとつが環境に配慮した取り組みです。

ビルを所有・運営する会社は企業の環境意識が高まる中、オフィスビルに対しても今後高い省エネ性能を求める傾向が強まるとみて海外の事例なども参考にしながら15年ほど前から取り組みを強化してきました。

例えば
▽屋上に遮熱性のある塗料を塗って夏のビル内の温度上昇を抑える工夫をしているほか、
▽ビルのエリアごとに温度を制御できる空調を導入するなど省エネ対策を進めてきました。
さらに
▽電力の使用量や二酸化炭素の排出量をロビーに表示して、常に「見える化」したり、
▽リサイクルしやすいようにゴミの分別を細かくして13種類に徹底したりするなど、入居者の環境意識にも働きかける取り組みを続け、2018年には、不動産関連では世界的な環境認証も取得しました。

こうした取り組みで、2021年度の電力の使用量は2010年度よりも40%近く削減できたということで、電気代の値上がりが続く中、使用量を根本的に減らしたことが、コスト削減にもつながっているといいます。
ビルを所有・運営する会社「近三商事」の森隆社長は「新しいビルとの競争は、築年数の古いビルにとってやはり大変だが、オフィスにはさまざまなニーズがあるので、そのビルのとりえをうまく生かすことが重要だ。これからも勉強をしながら新しいことに取り組んでいきたい」と話していました。