
WBC 村上宗隆 “信頼”が生んだ起死回生の一打【記者解説】
土壇場の9回ウラ、勝負を決めたのは今大会、不振に苦しんでいる村上宗隆選手のひと振りでした。野球のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの準決勝で日本はメキシコに逆転サヨナラ勝ちしました。
「信頼は揺るがない」
いつも通り打席に送り出した指揮官の後押しがスラッガーの本来の力を呼び覚ましました。
(スポーツニュース部 記者 金沢隆大)
今大会、日本代表の4番を任された村上選手は1次ラウンドから調子が上がらない状態が続いていました。

昨シーズン、プロ野球で日本選手最多となる56本のホームラン、史上最年少の三冠王と記録を更新し続けた日本球界を代表するバッターが、打率1割台で長打なし。
準々決勝から打順は5番になりました。
迎えた準決勝も思うようなスイングができません。
準々決勝から打順は5番になりました。
迎えた準決勝も思うようなスイングができません。

「調子は上がっている」と感じてはいましたが、3点を追う4回ウラ、2アウト一塁三塁のチャンスで回ってきた第2打席で見逃し三振を喫するなど、この試合、3三振と打線のブレーキとなっていました。
そんな中で迎えたのが土壇場の9回です。
そんな中で迎えたのが土壇場の9回です。

4対5と1点を追う場面で先頭の大谷翔平選手がツーベース。
続く、吉田正尚選手がフォアボールを選びノーアウト一塁二塁と絶好のチャンスで打席が回ってくると「送りバントが頭をよぎった」と村上選手は振り返ります。
ここで栗山監督が送ったサインは、その『送りバント』ではありませんでした。
『ヒッティング』
「お前に任せるから思い切って行け」という信頼の証しでした。
この指揮官の判断に村上選手は「腹をくくれたし、打つしかないと開き直れた」と気合いが入りました。
続く、吉田正尚選手がフォアボールを選びノーアウト一塁二塁と絶好のチャンスで打席が回ってくると「送りバントが頭をよぎった」と村上選手は振り返ります。
ここで栗山監督が送ったサインは、その『送りバント』ではありませんでした。
『ヒッティング』
「お前に任せるから思い切って行け」という信頼の証しでした。
この指揮官の判断に村上選手は「腹をくくれたし、打つしかないと開き直れた」と気合いが入りました。

球場の注目を一身に集めた3球目。
速球をはじき返し、2人目のランナーが生還した瞬間を見届けると村上選手はヘルメットを脱いで両手を突き上げました。
速球をはじき返し、2人目のランナーが生還した瞬間を見届けると村上選手はヘルメットを脱いで両手を突き上げました。

栗山監督は試合後の記者会見で村上選手について「悔しい思いをしてきたと思うが『最後はお前で勝つ』とずっと言ってきた」と、その信頼は揺るがなかったことを改めて強調しました。
栗山監督が就任当初から掲げてきた「アメリカを倒して世界一」という目標に欠かせない村上選手の復活。その最後のピースがはまった瞬間でした。

《NHKプロ野球解説 小早川毅彦さんに聞く》
日本がサヨナラ勝ちでメキシコを破った準決勝について、NHKプロ野球解説の小早川毅彦さんにポイントを聞きました。
日本の勝因は?
小早川さんは、日本の勝因について「失点をしても次の失点を防ぐ。あるいは得点できなくても次の回にチャンスを作るといった、選手一人ひとりのつなぐ意識がしっかり出ていた。それが、結果的にサヨナラ勝ちに結びついたと思う」と指摘しました。

投手陣については、「メキシコの強力打線はレベルが高く、日本の投手のウイニングショットについてきたが、その中でも、各ピッチャーともしっかりと抑えることができていた。すばらしかったと思う」とたたえました。

一方、打線については「日本は左バッターが多い中、メキシコの先発サウスポー、サンドバル投手のスライダーやチェンジアップに苦労していた。そうした中で、チーム全員で粘って球数を投げさせて、展開よりも早いイニングで交代させたことが大きかった」と分析しました。

サヨナラ勝ちにつながった9回の攻撃について「あの大谷選手でさえも先頭バッターとしてしっかり『つなぐ』という気持ちを持って打席に入り、結果的にノーアウト二塁といういい状況を作り出すことができた。そのあとの吉田選手も前の打席でホームランを打っている中、フォアボールでつなぎ、最後は苦しんでいた村上選手が決めた。本当にさすがだと思う」と絶賛しました。
3大会ぶりの優勝へ アメリカとの決勝は?
連覇を狙うアメリカとの決勝は「アメリカは打線が非常に強力で、1番から9番まで誰でもホームランを打てるし、どこからでも連打できる。まさにドリームチームといっていい。ただ、ピッチャーは少し実力が劣ると感じていて、決勝は点の取り合いになるのではないか。アメリカは本気で日本に勝ちにくるので、多少、失点すると思うが、あとひとつ、最後の力を出し切って優勝してほしい」と話していました。


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