今回のIPCCの報告書について、国連のグテーレス事務総長は20日、ビデオメッセージを公表し、「過去半世紀の気温の上昇率はこの2000年で最も高い。二酸化炭素の濃度は少なくとも200万年ぶりに高い。気候変動の時限爆弾は刻々と進んでいる」と警告しました。
そして「報告書が示すように世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることは可能だ。しかし、そのためには対策の飛躍的な進歩が必要だ。世界はあらゆる面で気候変動対策が必要ですべての国が解決への役割を果たさないといけない」と訴えました。
また、スイスで記者会見したIPCCのイ・フェソン(李会晟)議長は「これまでの対策の速度と規模では、気候変動をくい止めるためには不十分だということを警告している」と指摘しました。
IPCCは世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるためには温室効果ガスの排出量を2019年に比べて2030年には43%程度、2035年には60%程度、削減する必要があるとしています。
イ・フェソン議長は「この報告書は私たちが問題を解決するための技術を持っていることを明確に強調するものだ」と述べ、エネルギーの効率性を高めることで温室効果ガスを大幅に削減できることなど報告書は対策を進める上での道しるべになるとしています。
IPCC報告 “短期に気温上昇1.5度に到達 大幅な排出削減策を”
世界各国の科学者でつくる国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」は、温室効果ガスの排出をこのまま継続すると「短期のうちに世界の平均気温の上昇は1.5度に達することが推定される」と指摘し、大幅な排出削減対策の必要性を強調した統合報告書を9年ぶりに公表しました。
IPCCは20日、地球温暖化の現状や影響、そして急速な気候変動への対応策などについて、世界各国の科学者の最新の研究結果をもとに議論し、9年ぶりに第6次の統合報告書を公表しました。
2015年の「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて、1.5度に抑えるよう努力することを目標に掲げていますが、今回の報告書では、2020年までの10年間で世界の平均気温は、1.1度上昇していると指摘し、「人間の活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない」と人類による影響を強調しました。
そして、大気や海洋などの広い範囲で急速な変化が起こっているとした上で、「人為的な気候変動は自然と人々に対し広範な悪影響と損失と損害をもたらしている」などと指摘しています。
また、継続的な温室効果ガスの排出により、2030年代の初頭までに平均気温の上昇は1.5度に達することが推定されるとした上で、少なくとも2025年までに世界の温室効果ガスの排出量を減少に転じさせ、2030年には2019年と比べて43%程度削減する必要があるとしています。
IPCCは「この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つ」として、急速かつ大幅な排出削減対策をすぐに取るよう、警鐘を鳴らしています。
国連事務総長「気候変動の時限爆弾は刻々と進んでいる」
西村環境相「来月のG7会合で国際社会をリードしていきたい」
IPCCの報告書について西村環境大臣は「『継続的な温室効果ガスの排出により短期のうちに1.5度に達する』という厳しい見通しが示されたが、これはこの10年間に、急速かつ大幅で、即時の温室効果ガス排出削減の必要性を示すものだ。温暖化を1.5度に抑えるには、日本を含めた世界全体の排出量を大幅に削減する必要がある。来月のG7=主要7か国の気候・エネルギー・環境大臣会合では議長国として、世界全体の脱炭素化に向けて国際社会をリードしていきたい」というコメントを出しました。