フランス政治に詳しい名古屋外国語大学の山田文比古教授は、今回のフランスの年金改革について、「これまでの政権も含めた積年の課題であり、マクロン政権でも最初から最大の課題だったが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、先送りされてきた」として、2期目のマクロン大統領にとって、いわば肝いりの政策だと指摘しました。
そのうえで、マクロン政権が投票せずに法案を採択する手段を選んだことについて、「憲法で規定されてはいるが、政治的には別問題だ」と述べ、強権的な対応だとする国民の反発をさらに招きデモやストライキは、今後、数週間単位で続くのではないかという見方を示しました。
また、「抗議活動が長引き、反発がさらに強まったときに政府がどう対応するかだ。法案を取り下げる可能性も残されている」と述べ、デモやストライキが拡大すれば、マクロン政権が改革案を撤回せざるを得なくなる事態もありうるとしています。
一方で、年金改革が実現できた場合は、マクロン大統領がウクライナ情勢などの外交課題にこれまで以上に注力できるのではないかと指摘しました。

仏 年金制度改革法案を議会での投票行わず採択 労組など猛反発
フランスでは、マクロン政権が国民の間で反対が根強い年金制度の改革案を成立させるため、議会での投票を行わずに法案を採択する異例の措置に踏み切りました。これに対して労働組合などが猛反発していて、マクロン政権への逆風が強まりそうです。
フランスのマクロン政権は、財政再建の一環として、年金の支給を開始する年齢を現在の62歳から64歳に引き上げるなどとした改革案の成立を目指しています。
これに対し受け取る年金額が減るなどとして労働組合などは各地でデモやストライキを続けてきました。
こうした中、マクロン政権は16日、改革案を成立させるため議会下院にあたる国民議会で、投票せずに、法案を採択する異例の措置に踏み切りました。
議会では少数与党のため、投票で改革案が否決されるのを避けるためだと見られています。
しかし、労働組合などは猛反発していて、野党勢力は17日、ボルヌ首相の内閣に対する不信任決議案を提出しました。
採決は、来週中にも行われる見通しで可決されれば、改革案は廃案となります。
また、パリ中心部ではデモ隊と警官隊が衝突する事態にもなりました。
パリでは、ゴミの収集にあたる作業員などのストライキも2週間近く続いていて、市役所によりますと、およそ9400トンのゴミが回収されず放置されています。
パリに住む62歳の女性は「街のあちこちにゴミが散乱していて、社会問題というより、健康問題だ」と話していました。
労働組合は今後、大規模なデモも予定していてマクロン政権への逆風が強まりそうです。