新型コロナ影響による「特例貸付」 返済され始めたのは2割以下

新型コロナの影響で仕事を失った人などに、当面の生活費を貸し付けた国の「特例貸付」の返済がことし1月から始まりましたが、実際に返済が始まったのは対象の2割に満たないことが、厚生労働省への取材で分かりました。
担当者は「社会福祉協議会などと連携しながら、個々の世帯の状況に応じて対応していきたい」としています。

生活に困った人に、当面必要な費用を無利子で貸し付ける国の「緊急小口資金」と「総合支援資金」は、感染拡大以降「特例貸付」として、新型コロナの影響で失業した人や、収入が減った人にも対象が広げられ、2人以上の世帯は最大で200万円まで借りることができました。

貸し付けは、およそ382万件、金額にしておよそ1兆4431億円に上り、このうち、件数の7割近くを占める258万件は、ことし1月から返済時期を迎えています。

しかし、1月末の段階で実際に返済され始めたのはおよそ46万件と、2割に満たないことが、厚生労働省への取材で分かりました。

そのほか、
▽住民税が非課税の世帯など、返済が免除となったのがおよそ89万件
▽返済が猶予となったのが3万件余りとなっていて、
▽免除や猶予を受けておらず、返済していない件数は111万件余りに上っています。

厚生労働省生活困窮者自立支援室の担当者は「社会福祉協議会などと連携しながら、個々の世帯の状況の把握に努め、対応を検討したい」としています。

専門家「長期的な支援が重要」

「特例貸付」について詳しい日本福祉大学の角崎洋平准教授は「生活に困窮している世帯への貸し付けなので、こうした数字は当初から予想されていたものだ。免除にもならず返済もできていない世帯の中には、生活に余裕のない人も少なくないと考えられ、積極的なフォローや支援が必要だ」と指摘しています。

そのうえで、「社会福祉協議会など、支援機関とのつながりが絶えてしまっている人に接触し、貸し付け以外の長期的な支援につなげることも重要だ」と話していました。