その「10円」理由は 18日から鉄道運賃上乗せ 路線・区間一覧も

3月18日から首都圏のJRと一部の私鉄で普通運賃が一律で「10円」引き上げられます。

さらに今後、首都圏以外でも引き上げが予定されているところがあります。

また値上げ?と思うかもしれませんが、これには理由があるんです。

運賃引き上げの理由は?

「鉄道駅バリアフリー料金」が上乗せされるためなんです。
聞き慣れないこの「料金」、全国の鉄道の駅や車両のバリアフリー化をさらに進めようと、国が2021年に創設した新たな制度です。

すべての利用者に「薄く広く」負担してもらおうと、3月18日から全国で初めて、JR東日本と首都圏の一部の私鉄で、この料金の導入が始まります。

さらに今後、福岡市に本社を置く西日本鉄道をはじめ、JR西日本や阪急電鉄などの関西の私鉄でもバリアフリー料金制度を活用した値上げが順次、実施されます。

どこの鉄道会社が導入?

3月18日からバリアフリー料金を導入するのは、JR東日本、東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道、小田急電鉄、相模鉄道、横浜高速鉄道などです。

東京メトロと私鉄は全線で、JRは特に利用者が多い都心部周辺のエリアで導入されます。
バリアフリー料金は、普通運賃で利用するか、定期券を利用するかで、加算額が変わってきます。

普通運賃で利用する場合、原則として運賃に加え、一律「10円」がプラスされます。

通勤定期券を利用する場合は、JR東日本は1か月280円、東京メトロは1か月370円、私鉄は1か月600円が加算されます。

3か月定期や6か月定期の場合は、それぞれ割り引かれた金額が上乗せされます。

一方で、通学定期券は家計への負担を考慮して、各社ともバリアフリー料金の対象外となっています。

ちなみに、東急電鉄でも同じ3月18日から普通運賃で平均13%程度の値上げを実施しますが、こちらはバリアフリー料金ではなく、国の認可を受けた通常の値上げです。

バリアフリー料金 具体的にはどんなことに使われる?

すばり、鉄道のバリアフリー対策全般です。

例えば、転落防止のためのホームドアの設置や、駅の通路の段差解消、点字ブロックの設置や体の不自由な人などに対応したトイレ、車両の改修など、各社が必要に応じて、さまざまなバリアフリー設備の設置や更新に使われることになります。
このうちJR東日本では、2035年度までにホームドアを591か所で整備するほか、エレベーターの整備、ホームと車両の段差の縮小などに取り組むことにしています。

東京メトロでは、すべての駅でのホームドア設置や多機能トイレの整備を進めることにしています。

小田急電鉄では、2022年度からの10年間に、30駅でホームドアを設置する計画で、制度の活用によりホームドアの設置は従来の2倍近いペースで進められる見込みです。
西武鉄道では、2030年度までに28駅でホームドアの整備を進める計画のほか、ホームやトイレの位置を点字で示す案内図、段差解消のためのスロープなどを整備する予定です。
横浜高速鉄道では、ホームドアはすでにすべての駅に設置されていますが、一般のトイレのブースを広くしてベビーチェアを設置したり、電車内の車いすやベビーカーのためのスペースを増やしたりすることにしています。

駅のバリアフリー化 現状は?

鉄道の駅では、都市部を中心にバリアフリー化が進められていますが、ホームドアの設置などは十分に進んでいないのが現状です。

1日当たりの利用者数が10万人以上の駅でホームドアが設置された乗り場の数は406か所と、約45%にとどまっています。
地方鉄道も含めて全国に2万か所近くある乗り場の1割余りとなっています。

国土交通省は、「鉄道駅バリアフリー料金」などの制度を活用し、ホームドアを2025年度までに全国で1日当たり10万人以上が利用する駅のほとんどにあたる800か所を含む、優先度の高い3000か所に整備することを目標にしています。

バリアフリー料金 適切に使われるかチェックできるの?

バリアフリー料金を導入する鉄道会社は、あらかじめ国にバリアフリー化の計画を提出し、徴収した料金は必ずバリアフリー対策に使わなければなりません。

鉄道各社は、バリアフリー料金で徴収した金額とそれを何に使ったのかという実績を毎年度ごとに国土交通省に報告する義務があります。
そして、この実績はホームページなどで公表することが求められています。

こうした仕組みで、国は適切に使われるかチェックしたいとしています。

そのほかのサービスは?

3月18日からは、障害のある人がICカードを利用して運賃の割り引きを受けられるサービスが関東地方などの鉄道やバスではじまります。

これまでは障害のある人が鉄道やバスでSuicaやPASMOといったICカードを使う場合は、駅員のいる改札で、障害者手帳を駅員に示さなければいけませんでした。
事前に発行を受けた専用のICカードを利用すれば、障害者手帳を見せなくても自動改札機で割り引きを受けられるようになります。

3月18日から導入されるJR東日本の「オフピーク定期券」って?

「オフピーク定期券」は、朝のラッシュ時=ピーク時に利用できない代わりに、通常の定期券より10%ほど安くなる定期券です。

朝のラッシュ時の混雑緩和を目指し、新たに導入されることになりました。
利用できない時間帯は各駅のピーク時間帯によって異なっていて、例えば、大船駅や取手駅は午前6時40分から8時10分、東京駅や新宿駅は午前7時半から9時です。

オフピーク定期券を利用できるかどうかは、駅に入場した時間で判定され、利用できない時間に駅に入場したら普通運賃の精算が必要になります。

導入されるのは通勤定期券のみで、通学定期券では導入されません。

一方で、通常の通勤定期券はこれまでより1.4%値上げされることになっています。

利用する人たちからはどんな声が?

利用者の声を聞いてみると、ほとんどの人がこの運賃引き上げについて知りませんでしたが、理由を聞くと納得する人が多くいました。
(新宿駅を利用する20代の女性)
「運賃が上がることは知りませんでしたが、バリアフリーが理由ならいいと思います。混雑時はいつ誰が転落するかわからず、ホームドアがないのは危ないと思っていました」

(新宿駅を利用する60代の女性)
「私もこれから年もとってくるのでバリアフリーの整備は大事だと思いますし、ホームドアなどはどんどん整備してほしいです」

(子どもをベビーカーに乗せて鉄道を利用する女性)
「障害のある人の事故が減るのならいいと思います。私もベビーカーだとエレベーターを使いますがなくて困ることがあるので増えるのはありがたいと思います」

皆さんが鉄道を利用するときに上乗せされる「10円」。

この10円で、みんなが利用しやすい駅になるのなら…、どうでしょうか?