
旧優生保護法訴訟 不妊手術強制 国に賠償命じる判決 札幌高裁
旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、札幌市の81歳の男性が国を訴えた裁判で、2審の札幌高等裁判所は訴えを退けた1審判決を取り消し、国に1650万円の支払いを命じました。一連の裁判で国に賠償を命じる判決は6件目です。
札幌市に住む小島喜久夫さん(81)は、およそ60年前、旧優生保護法のもとで精神障害を理由に不妊手術を強制され、憲法が保障する子どもを産み育てる自由を奪われたなどとして、5年前、国に賠償を求める訴えを起こしました。
1審はおととし1月、「法律の規定は憲法に違反するが、国に賠償を求める権利はすでに消滅している」として訴えを退けていました。
16日の2審の判決で、札幌高等裁判所の大竹優子裁判長は旧優生保護法について「特定の精神疾患などを理由に『不良』とみなす、およそ許容しがたい極めて非人道的なものだ」と指摘し、1審に続いて憲法に違反すると判断しました。
そのうえで「国の施策によって助長された差別や偏見は、原告が裁判を起こすために必要な情報を得ることを阻害していた。『除斥期間』の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と述べて、1審判決を取り消し、国に1650万円の支払いを命じました。
全国で起こされている同様の裁判では、当初は訴えを退ける判決が続きましたが、去年2月に大阪高裁が初めて訴えを認めて以降、1件を除いて国に賠償を命じる司法判断が続いていて、今回が6件目で、2審の高裁段階ではすべて訴えを認めています。
いずれの裁判所も国の救済策の一時金320万円を大きく上回る額の賠償を命じていて、救済制度の見直しを求める声が高まることも予想されます。
厚労省「判決の内容を精査し対応」

札幌高等裁判所の判決について厚生労働省は「国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決の内容を精査し関係省庁と協議したうえで適切に対応したい」とコメントしています。