「クレディ・スイス」中央銀行から最大約7兆円余 調達の用意

スイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」は経営への懸念が高まる中、中央銀行から最大で500億スイスフラン、日本円でおよそ7兆1000億円を調達する用意があると発表しました。懸念を払拭(ふっしょく)するねらいがあるとみられます。

クレディ・スイスは16日、中央銀行である「スイス国立銀行」から最大で500億スイスフラン、日本円でおよそ7兆1000億円を調達する用意があると発表しました。

クレディ・スイスは、財務報告で内部管理に問題があると明らかにしたほか、15日には筆頭株主が追加投資に否定的な姿勢を示したと伝えられて株価が急落するなど、経営に対する懸念が高まっていました。

これを受けてスイスの中央銀行と金融当局は15日、共同声明を発表し、必要であれば、クレディ・スイスに資金繰りを支援することを明らかにしていました。

クレディ・スイスとしては巨額の資金を調達できると金融市場に示すことで経営への懸念を払拭するねらいがあるとみられます。

アメリカで2つの銀行が破綻したことに続いてヨーロッパの大手金融グループも経営問題が伝えられ、世界の金融市場では動揺が続いています。

株安 円高が進む

16日の東京株式市場は、アメリカで相次いだ銀行の経営破綻のほか、スイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」の経営悪化への懸念から、株価は一時、500円以上値下がりしています。

▽日経平均株価、午前の終値は、15日の終値より255円9銭安い、2万6974円39銭。

▽東証株価指数=トピックスは、25.33下がって、1934.79。

▽午前の出来高は9億3512万株でした。

市場関係者は「取引開始直後から欧米の金融機関への信用不安が広がり、全面安の展開になった。ただ、『クレディ・スイス』がスイスの中央銀行から日本円にして最大で7兆円余りを調達する用意があると発表されると下げ幅は縮小した」と話しています。
一方、16日の東京外国為替市場では、アメリカの銀行の相次ぐ経営破綻やスイスの大手金融グループの経営悪化への懸念から、比較的安全な資産とされる円を買う動きが強まり、円相場は値上がりしています。

市場関係者は「スイスの大手金融グループクレディ・スイスの経営悪化への懸念から比較的安全な資産とされる円が買われ、1ドル=132円台まで円高が進んだ。クレディ・スイスが中央銀行から巨額の資金を調達すると発表されたことで円を売る動きもみられるが、市場の不安を完全に払拭(ふっしょく)するには至っていない」と話しています。

「クレディ・スイス」とは

スイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」は、スイスのチューリヒに本拠を置き、投資銀行業務や資産運用などのビジネスを50か国以上で展開する世界有数の金融機関です。

社員は2021年末の時点でおよそ5万人で、スイスでは、大手金融グループ「UBS」と並んで2大金融機関とされています。

クレディ・スイスの前身であるスイス信用銀行は、1856年、スイスがヨーロッパでの孤立を避けるために行われた、アルプスを横断する鉄道網の整備事業に対する資金調達を目的として設立されました。

その後、機関投資家など富裕層を主なターゲットに、世界各地に拠点を設けて事業規模を拡大してきました。

しかし、おととし(2021年)には、元幹部が詐欺などの罪で起訴されたアメリカの投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」との取り引きに関連して「クレディ・スイス」はおよそ50億スイスフラン(日本円にして7000億円程度)の巨額の損失を計上。

去年1月には、当時の会長がイギリスの新型コロナウイルスの自己隔離規制に違反してテニスのウィンブルドン選手権を観戦していたことが報じられ混乱を招いた責任をとって退任するなど不祥事も相次ぎ、リスク管理の甘さが指摘されました。

グループ全体の決算をみると、▼2021年の1年間の最終損益が16億5000万スイスフラン、日本円にしておよそ2300億円の赤字だったのに対し、▼2022年1年間の最終損益は72億9300万スイスフラン、日本円にしておよそ1兆円と赤字が拡大し、業績が低迷していました。

また、顧客の預け入れ資産の流出が続いていました。

クレディ・スイスは、去年10月、▼9000人規模の人員削減や▼新たに資本の調達を発表するなど経営の立て直しを進めていました。

経営状況への懸念がくすぶり続ける中、アメリカの大手メディア、ブルームバーグは、15日、筆頭株主であるサウジアラビアの金融機関、サウジ・ナショナル・バンクの会長のインタビューを報じました。

この金融機関は、すでにおよそ9.9%の株式を保有する筆頭株主ですが、会長はインタビューの中で持ち分を10%とするには「規制上の障壁がある」などと話し、追加の投資は行わない意向だと伝えられると、市場に動揺が走りました。