無理です!“風呂で目を離すな” どうすればいいの?

いつものワンオペのお風呂。

子どもの体が冷えないように、先に湯船に入れて、自分の体を洗おう…。

実は、そんな日常にキケンが。

お風呂は毎年10人以上の幼い子どもがおぼれて命を落とす場所なのです。

とはいえ“片ときも目を離すな”なんて無理!

でも大丈夫。

少しの配慮で事故は防げます。

(大阪放送局 記者 中本史)

ちょっと目を離しただけ

これまで国に寄せられた事故の事例です。

(事例1)
1歳の子を湯船に入れて、上の子を呼びにいった。1分ほどで戻ったが意識がもうろうとして浮いていた。救急搬送。

(事例2)
親が髪を洗っていて、気が付くと2歳の子が呼吸が止まった状態で浮いていた。入院。

いずれも、親が一緒にお風呂に入っていたけれど、ちょっと目を離した隙の出来事でした。
お風呂で溺れて命を落とした子どもは、2020年までの5年間に0歳から4歳で69人にのぼります。

短時間で危ない

お風呂では、短時間で命取りになる危険性が潜んでいます。

おぼれるとどのような状態になるのか。

子どもの事故防止に取り組む佐久医療センター小児科の坂本昌彦医師に聞きました。
坂本昌彦医師
「おぼれると、脳に空気がいかなくなって低酸素脳症になってしまいます。溺水は6分間で死に至ると言われていますが、3分間でもリスクがあります。今は集中治療のレベルが上がっているので、今まで命を落としていた子も救命できるようにはなりました。しかし、必ずしも完全に元気になって家に戻れるわけではなくて、低酸素脳症で寝たきりの状態になってしまうこともあるんです」

思い込みがワナ

親が一緒に入っていたはずなのに、なぜ溺れて亡くなってしまうのでしょうか。

その背景には、“おぼれると気付くはず”という思い込みがあると言います。

実は、子どもは音を立てずに静かに溺れることが多く、ちょっと風呂場を離れると気付かないというのです。
日本小児科学会の2019年の全国調査でも、子どもが溺れかけた経験のある保護者1156人中、およそ9割が、子どもは声を出していなかったと回答しています。

坂本医師によると、アメリカでは1970年代からその現象が指摘されていて、水難救助関係者の間では常識となっているということです。


坂本昌彦医師
「耳をそばだてていれば、溺れた場合に気づけるはずだというのは思い込みです。静かに溺れることがあるというのは知っておくべき重要な点です」

バチャバチャさせて「助けて~」と叫ぶのは、漫画や映画の世界のこと。
先入観と言えそうです。

手が届く範囲に!

では、どうしたらいいのでしょう?

現実的にできる対策を坂本医師にききました。
1 「手が届く範囲にいる」
きょうだいの世話をしたり自分の髪を洗ったり。
“目を離さない”というのは難しいですよね。
手の届く範囲にいることで異変にすぐ対応できます。

2「湯船に子どもだけで入らせない」
親が髪や顔を洗う時は、子どもを湯船から出すと、事故のリスクはぐんと減ります。

3「会話を続ける」
どうしても湯船に先に入れざるをえないときは、会話を続けたり、一緒に歌を歌ったりすると万が一おぼれてもすぐに気づくことができます。

4「残し湯に注意」
防災への備えとしてお風呂に湯を残す家庭もあります。
子どもは、湯が数センチの高さでも顔がつかっておぼれてしまいます。
誤って風呂場に入らないようにゲートや鍵を設置してください。

浮き輪も注意

そして、お風呂でのリスクは赤ちゃん用の浮き輪を使う際にも。

育児の便利グッズとして使われている側面もあり、SNS上では湯船での写真がたくさんアップされています。
しかし、何件も事故の報告がされています。

日本小児科学会では、親が髪を洗う間など子どもから目を離す場面では絶対に使用しないこと、と注意喚起しています。
坂本医師によりますと、日本でのお風呂の事故リスクは欧米の2~7倍ほどというデータもあるということです。

もちろん背景には湯につかるという日本の習慣があるのですが、それだけ風呂は事故が起こる場所でもあります。

“目を離さない”ことは無理だけれど、“手が届く範囲にいる”ことで事故は防げます。

どうか安全に親子の楽しいお風呂時間を過ごしてください。

NHK大阪では、子どもとの日々の生活の中で、ひやっとした体験などを募集しています。

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