花粉症の私 りんごが食べられなくなりました

花粉症の私 りんごが食べられなくなりました
過去10年で最多の飛散量とも推測されていることしの花粉。

“鼻水がとまらない”
“目がかゆくて涙が”
“喉がイガイガする”

花粉症に悩まされる皆さんの悲痛な声がSNS上にあふれています。
でも、花粉症の怖さはそれだけではありません。

突然、好きだった果物が食べられなくなる。そんなリスクもあるんです。

(ネットワーク報道部 野呂一輝 玉木香代子 清水阿喜子)

唇がたらこに そしてりんごが食べられなくった

薬を飲んでも、鼻水が止まらない。せきも止まらない。

マスクの着用が「個人の判断」になっても、絶対手放せない花粉症歴約20年の私(清水)。

いまから5年前のことです。
実家に帰省し、くつろぎながら家族とりんごを食べていました。

すると数分ほどで、唇が腫れ上がったのです。

写真は残っていないのですが、まさに、「たらこ」と表現するのがふさわしい腫れ方でした。
1時間ほどして症状は落ち着き、幸い、大事には至りませんでした。

でも、とても不安になりました。
「これまでは食べても、ジュースを飲んでも、そんな症状が出たことは一度もなかったのに…」
帰省から戻った後、耳鼻咽喉科でアレルギーの血液検査を受けました。

結果は、りんごは陰性。

でも、医師からこう言われました。
「花粉症に関係している可能性がありますね。症状が出ているなら、りんごは控えてください」
それ以来、私は、大好きだったりんごが、食べられなくなりました。

バナナで意識を失った

唇が腫れる程度ではすまない経験をした人もいます。

こちらは、今月、SNS上に投稿されたマンガです。
バナナを食べたら、突然、気持ち悪くなって、意識を失った。

驚きの体験が記されています。

投稿したのは楠 あやとさん。

長年、ひどい花粉症に悩まされていて、3年前、おやつとしてバナナを食べたそうです。

食べた後、20分ほどして腹痛が始まり、呼吸も困難に。さらに寒気もして動けなくなり、そのまま意識を失ってしまったそうです。

後日、病院で診察を受けたところ、医師からは花粉症との関係を指摘されたうえで、こう告げられました。
「もうバナナは禁止。果物全般注意してください。アナフィラキシーショックで命を落とすおそれもありますよ」
楠さんは、中学生のころからメロンやパイナップルを食べるとアレルギー反応が出ていたそうです。

でも、それが花粉症と関係があり、果物全般に注意が必要だとは知らなかったといいます。
楠 あやとさん
「SNSを見ると、同じように『果物を食べて体調を崩した』という方は少なくないようですが、症状が軽かったからか、『医師の診察は受けていない』という投稿をよく見ます。でも、自分の経験をふまえると、すぐに診てもらった方がいいと思います」

花粉症と食物アレルギー その深い関係

花粉症と食物アレルギー、いったいどういう関係があるのでしょうか?日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会の理事で、日本医科大学の大久保公裕教授に話を聞きました。
花粉症は、体の中に入り込んだ花粉に対して免疫が反応することで引き起こされるアレルギーです。

大久保教授によりますと、果物や野菜の中には、花粉とよく似た構造の物質を持つものがあり、食べたときに、免疫細胞が花粉と勘違いしてアレルギー症状を起こしてしまうことがあるそうです。

「交差反応」と呼ばれています。
数分程度で口の中がイガイガする、のどがかゆくなる、唇が腫れるといった症状が出ることが多く、「口腔アレルギー症候群」と呼ばれています。

大久保教授に、主な花粉について交差反応を起こす可能性のある果物や野菜を教えてもらいました。
▼カバノキ科(シラカンバ・ハンノキ・オオバヤシャブシ)リンゴ、モモ、サクランボ、西洋ナシ、キウイフルーツ、セロリ、ニンジン、ジャガイモ、大豆など
▼ヒノキ科(スギ)トマト
▼イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ)キウイフルーツ、オレンジ、メロン、スイカ、トマトなど
▼キク科(ヨモギ)ニンジン、セロリ、マンゴーなど・キク科(ブタクサ)バナナ、メロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリなど

症状が出たら 食べないで

もし、症状が出たら、どうすればいいのか。

大久保教授によると、多くの場合、かゆみや腫れなどの症状はしばらくすると収まります。

ただ、原因となったものを食べ続けてしまうと、血圧が低下して、ショック症状を引き起こす場合があるそうです。

大切なのは、「何を食べたかを確認し、医師に相談する」ことです。
大久保公裕教授
「花粉症の人の中で、交差反応が出る割合はそれほど高いわけではなく、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、症状が出たら、原因となった食べ物を確認し、それを避けることです。加熱すれば食べることができるものもありますが、症状の出方にもよりますので、まずは、医師に相談してください」

子どもに症状が出たら

子どもに症状が出た場合、注意することはあるのか、気になる方もいると思います。
国立成育医療研究センターの小児専門のアレルギー指導医、山本貴和子医師に聞きました。
Q.そもそも子どもは、何歳ごろから花粉症を発症する可能性がありますか?

A.早いと2歳頃から発症する方が出ると考えています。大人と同じように、鼻水やくしゃみ、目のかゆみがでます。

Q.花粉症になる子どもは増えていますか?

A.現場で診ていて増えていますし、早い段階から発症する子どもも増えているように感じています。

Q.「交差反応」による症状について、花粉症の子どもを持つ親は何に気をつければいいでしょうか?

A.まず、花粉症に対しては、マスクで体の中に入る花粉の量を減らし、薬で症状を抑えてください。
そのうえで、交差反応については、「起こりえることを知っておく」ことが大切です。

子どもがこんな様子を見せたら「交差反応かもしれない」と考え、その食べ物を控えて、アレルギーの専門医に相談してください。
食べたあとに「変」など違和感を訴える。
かゆがっている。
イガイガするという。
口の中に手を入れる。
のどが腫れている。
食べたときにいやがる。