米 経営破綻の2銀行 「ストレステスト」対象外 審査追いつかず

アメリカで2つの銀行が経営破綻しましたが、この2つの銀行は金融当局が実施する去年の健全性の審査、いわゆる「ストレステスト」の対象となっていなかったことが分かりました。大規模な金融緩和を背景に資産が急拡大したため、当局の審査が追いつかなかった実態が判明した形です。

アメリカでは今月10日から12日、「シリコンバレーバンク」と「シグネチャーバンク」が相次いで経営破綻し、FRB=連邦準備制度理事会がリスクを事前に把握できなかった問題が指摘されています。

アメリカでは、2008年の金融危機を教訓に金融機関の健全性をチェックする厳しい審査、ストレステストを導入しています。

審査は、1000億ドル以上の資産を持つすべての金融機関が対象です。

アメリカ金融当局の関係者によりますと、破綻した2つの銀行は去年12月の時点では1000億ドル以上の資産がありましたが、去年の審査対象やことし予定されている審査の対象にも入っていなかったことが分かりました。

関係者によりますと、審査には膨大な手続きが必要で、準備に少なくとも2年はかかるためだということです。

大規模な金融緩和を背景に「シリコンバレーバンク」の去年3月末時点の預金はその2年前と比べ3.2倍に急増し、要件としては審査の対象になっていましたが、当局の対応が追いつかなかった実態が判明した形です。

金融当局は、状況に応じてより柔軟な審査を行うべきだとの指摘もあり、FRBは5月1日までに監督や規制の在り方を見直すとしています。

日銀 黒田総裁「どのような影響がありうるのか よく見ていく」

アメリカで相次いだ銀行の経営破綻について日銀の黒田総裁は、15日の衆議院の財務金融委員会で金融システムなどへの影響を注意深く見ていく考えを示しました。

この中で日銀の黒田総裁は、今週、スイスで開かれた国際会議に出席した際に各国の中央銀行の総裁らと今回の銀行の破綻が世界の金融市場にどのような影響を与えるのか、議論したことを明らかにしました。

黒田総裁は「アメリカの政府や中央銀行にあたるFRBが預金の全額保護など、金融システムの安定のために必要な対策をかなり迅速に講じたので総裁会議では安どしたという感じがあった」と述べて、アメリカの金融当局の対応を評価しました。

また今後について、「どのような影響がありうるのか感度を高くしてよく見ていく必要はある」と述べて、金融システムへの影響などを注意深く見ていく考えを示しました。