【春闘】 満額回答が相次ぐ 各社の賃上げの詳細は

ことしの春闘は、15日が最大のヤマ場となる経営側からの集中回答日です。記録的な物価の上昇に見合う賃上げが大きな焦点となり、大手企業を中心に異例の早期決着や労働組合の要求どおりの満額回答が相次ぎました。

あの企業の賃上げはどうなったのか、詳しくお伝えします。

【各社の回答は】

大手自動車メーカー

満額回答が目立っています。

▽トヨタ自動車
労働組合が「職種別」や「階級別」に15パターンの賃上げ要求を示し、最も高いケースでは月額9370円の賃上げを求めたほか、ボーナスは月給6.7か月分を要求していたのに対して、2月に行われた初回の交渉で満額回答しました。

また、社員の育成に向けて来年4月から年次、学歴、職歴などを評価の要素から除外して社員の挑戦を評価する人事制度を新たに導入するとしています。

3年以内に、管理職になる前の出向や研修などの「社外」経験を原則必須にすることも盛り込まれています。

佐藤次期社長は15日の記者会見で、「昨今の物価や社会環境の変化を考えるとより暮らしやすい環境をつくっていくのが大きな流れだ。トヨタがもつ産業への影響を考えるとなるべく早期に話し合いが進む環境をつくりたいと考えた」と述べました。

一方、労働組合の西野勝義 執行委員長も記者会見し、「賃金と一時金についてはこれまでの議論を通じて経営側が職場のことを把握したうえでの回答だと受け止めている。人事制度の変革についてもスピード感をもってやっていきたいという会社の強い意志を感じた」と述べました。

▽ホンダ
30年ぶりの高い水準となるベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて月額1万9000円の賃上げ、ボーナスは年間6.4か月分で満額回答。

▽日産自動車
今の賃金体系が導入された2005年以降、最も高い水準の月額1万2000円の賃上げ、ボーナスは年間5.5か月分で満額回答でした。

▽三菱自動車工業
ベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて月額1万3000円の賃上げの満額回答に加え、来月(4月)入社する新入社員の初任給を大学卒の場合、10%引き上げます。

▽SUBARU
月額1万200円の賃上げで、満額回答でした。

▽スズキ
組合側の要求どおり、ベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて月額1万2200円の賃上げで満額回答しました。

満額での回答は2013年以来、10年ぶりです。

▽マツダ
ベースアップ相当分と定期昇給分に加え、物価高支援の一時金も含めて月額1万3000円の賃上げで満額回答しました。

ベアを行うのは4年ぶりで賃上げ額は、この20年間で最も高い水準となりました。

▽ダイハツ工業
ベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて月額1万1200円の賃上げで満額回答しました。

満額での回答は2006年以来、17年ぶりです。

大手電機メーカー

電機メーカーの労働組合でつくる「電機連合」はベースアップに相当する賃上げで月額7000円以上を求めていて、主要12社の交渉では、月額5000円以上を最低の水準とする方針で経営側と交渉してきました。

▽日立製作所
ベースアップ相当分として組合の要求どおり月額7000円で満額回答した日立製作所が会見を開き、事業の成長や生産性の向上を進めることで、来年も賃上げを継続したいという考えを示しました。

月額7000円の回答は、今の要求方式となった1998年以降、最も高い金額で定期昇給などを含めた賃上げ率は平均で3.9%となります。

田中憲一常務は15日の記者会見で「物価が急激に上昇し、例年以上に従業員の期待が高い交渉だった。日本経済の好循環に貢献して企業の社会的責任を果たすとともに賃金引き上げの推進力を維持する観点を重視して回答を決断した」と述べました。

そのうえで、「単年度の物価を機械的に反映するのではなく、成長と分配の好循環を、特に意識した。事業が成長して成果を出せれば、賃金水準の改善を継続して行って行きたい」と述べ、事業の成長や生産性の向上を進めることで、来年も賃上げを継続したいという考えを示しました。


▽パナソニックホールディングス
月額7000円で満額回答し、引き上げ額はこの10年間で最も高い水準だということです。

▽三菱電機、富士通
月額7000円で満額回答しました。

三菱電機が満額で回答するのは、記録が残る1974年以降で初めてです。

▽東芝、NEC
ベースアップ相当分として月額5000円に加え、福利厚生で使えるポイント2000円分を付与すると回答しました。

▽シャープ
具体的な金額を明らかにせず、去年の月額3000円を上回る給与の改定を行う方針を伝えました。

組合側の判断では、要求どおり月額7000円の満額回答になるとしています。

大手機械メーカー

▽三菱重工業、川崎重工業、IHI
ベースアップに相当する月額1万4000円の賃上げをそれぞれ満額回答しました。各社とも満額での回答は1974年以来、49年ぶりです。

通信大手

▽NTTグループ
14万4000人の組合員が加盟するNTTの労働組合は、グループの主要6社でベースアップ相当分として正社員の賃金を2%、平均で月額6400円相当の引き上げを要求していました。

NTTグループは15日、交渉の結果、ベースアップ相当分として平均で月額3300円を引き上げることで組合側と妥結したと発表しました。

ベースアップは10年連続で、妥結額は去年を1100円上回り、過去最高の上げ幅だということです。

会社では定期昇給分をあわせると全体で3.3%の賃上げになるとしています。

一方、物価高騰に対応した手当として労働組合が求めていた、10万円の一時金については応じませんでした。

外食大手

▽ゼンショーホールディングス
牛丼チェーンの「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスは、4月から正社員の賃金について、ベースアップを含めた月額平均で9.5%引き上げることで組合側と妥結しました。

会社の発表によりますと、賃上げ額は月額平均3万2864円で、このうち基本給を引き上げるベースアップは2万6718円とベースアップ分だけでも7.7%余りの引き上げとなります。

全体の賃上げ額とベースアップ分はいずれも過去最高の引き上げ幅だということです。

ゼンショーホールディングスは2021年の春闘で、2030年まで毎年ベースアップを行うことで組合側と合意しています。

また、ことし4月入社の新卒社員の初任給も引き上げ、大卒の場合これまでの22万2000円から25万円とすることを決めました。

郵政

▽日本郵政グループ
日本郵政グループはベースアップ相当分として月額平均で4800円の賃上げを行うことで15日夜に組合側と妥結しました。

ベースアップは2015年以来8年ぶりで、2007年の民営化以降で最大の上げ幅だということです。

また、定期昇給などを含めた賃上げ率は5.11%になるとしています。

会社では、物価上昇への対応や優秀な人材の確保などを勘案したとしています。

日本郵政グループの労働組合でおよそ23万人の組合員が加盟するJP労組は、ことしの春闘でベースアップ相当分として月額平均で9000円の賃上げを要求していました。

【14日までの各社の回答は】

航空業界

▽日本航空
組合側の要求を1000円上回る月額7000円のベースアップを実施すると回答しました。

▽全日空
過去30年で最も高い水準となる6000円のベースアップを実施すると回答しました。

新型コロナの水際対策の緩和に伴って旅客需要が回復する中で待遇改善で人材の確保につなげようという動きが相次いでいます。

ビール業界

▽サントリーホールディングス
月額1万円のベースアップの実施で妥結し、定期昇給分などもあわせると平均で月額7%の賃上げとなります。

▽サッポロビール
過去40年で最も高い水準の9000円のベースアップの実施で妥結しています。