春闘 きょう集中回答日 賃上げの勢い どこまで広がるのか焦点

ことしの春闘は15日が集中回答日です。大手企業を中心に早期の決着や満額回答が相次ぎ賃上げの勢いが出ていますが、これが中小企業を含めてどこまで広がるのかや持続的な賃上げにつながるのかが焦点です。

ことしの春闘は15日、最大のヤマ場となる経営側からの集中回答日となります。

記録的な物価の上昇に見合う賃上げが大きな焦点となり大手企業を中心に異例の早期決着や労働組合の要求どおりの満額回答が相次いでいます。

このうち大手電機メーカーのパナソニックホールディングスは基本給を引き上げるベースアップ相当分として組合の要求どおり満額で回答する方針を決めました。月額7000円でこの10年間で最も高い水準です。

また三菱重工業はベースアップ相当分として組合の要求どおり月額1万4000円の賃上げを行う方針を固めました。満額での回答は49年ぶりです。

自動車業界ではトヨタ自動車は1回目の労使交渉で賃上げとボーナスについて3年連続で満額回答をしています。日産自動車とホンダも満額回答で決着しています。

航空業界でも日本航空と全日空が過去30年で最も高い水準となるベースアップの実施を決めています。

【各社の状況】

民間のシンクタンクの中には中小企業を含めたことしの賃上げ率は3%程度となり、1994年以来の高い水準になるという予測も出ています。

ただ当面は物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず実質賃金はマイナスの状況が続くという見方が出ています。

ことしの春闘は大手企業を中心に賃上げの勢いが出ていますが、これが中小企業を含めてどこまで広がるのかや持続的な賃上げにつながるのかが焦点です。

持続的な賃上げへ 5%賃上げ決めた企業は

カジュアルウエアや作業着などを展開する「ワークマン」は、ことし4月から社員とパート従業員450人あまりを対象に平均で5%賃上げすることをすでに決めています。

社員が物価上昇の影響を受けていることや雇用が流動化する中優秀な人材を確保する狙いで、会社としては過去最大の上げ幅です。

6歳と4歳の2人の子どもを育てる38歳の女性社員は、賃上げされた分で子どもの習い事を増やしたいと考えています。

女性社員は「子どもへの出費が大きくなっていたのでとてもうれしいです。賃上げは仕事のやる気にもつながり、よりよい製品を作っていこうという気になります」と話しています。

しかし大幅な賃上げを決めた一方、会社の経営環境は厳しさを増しています。

円安や原材料価格の高騰の影響で利益は圧迫され続け、ことし3月期の決算は13年ぶりに減益になる見通しです。

会社では作業着の素材をキャンプ用品にも使うことやチラシの材質を見直すなど細かなコスト削減の積み重ねで賃上げの原資をなんとか確保してきました。

しかし、こうした取り組みにも限界があり今後も継続的に賃上げできるかは不透明な状況になっています。

このため会社では持続的な賃上げを実現するために新たな取り組みを始めました。

それはほかの企業との協業による商品開発です。

先週開かれた新商品の発表会では大手電機メーカーのグループ会社と共同開発した冷暖房服が披露されました。

電気を通すことで冷えたり暖かくなったりする素材を活用した服で屋外で作業する人やアウトドアのイベントに参加する人などが快適に過ごすことができます。

これまでの主力だった作業着市場の枠を超え、新たな需要を取り込むことができると見込んでいて、3年後に年間で100億円の売り上げを目指しています。

付加価値の高い商品を新たな市場に投入し、賃上げなど従業員への還元を継続してきたい考えです。

ワークマンの土屋哲雄専務は「やはり人材が一番なので、優先的に人材投資につなげていきたい。賃上げを続けないと社員の共感も得られない。途中でやめないことが重要だ」と話しています。

専門家「経済の好循環へ 来年以降の賃上げが重要」

第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミスト新家義貴さんは経済の好循環につなげるためことしだけでなく来年以降の持続的な賃上げが重要だと指摘します。

新家さんは「ことしの春闘では賃上げの勢いは当初の想定よりも強く賃上げ率は3%を超える可能性もある。円安の効果もあり企業の収益は底堅く賃上げの余力があると感じる。ただ中小企業の賃上げは不透明で価格転嫁が十分にできていないところも多いと思う」と指摘します。

そのうえで「ことしの春闘は大事だが、毎年賃金が上がると感じれば消費もしやすくなるので来年以降の賃上げもどうなるかが重要だ。物価より賃金の伸びが高く、消費が拡大しやすい環境にすることが重要だ」と経済の好循環につなげるためことしだけでなく来年以降の持続的な賃上げが重要だと指摘しています。

新家さんは「企業は魅力的な商品を開発するなど売り上げを増やして収益を上げ、労働者に適正に分配する形で賃金を上げていかないと持続的ではない。デフレの状況だと売り上げが増えないのでコストを削減することで収益を上げるしかなかったが、今後は経営者も意識を変え、売り上げを増やすような前向きな取り組みが求められている」と述べ、賃上げの原資を生み出すための収益力の向上が必要だとしています。

また、企業が持続的な賃上げを実現するためには政府の対策も重要で企業の新たなビジネスを促進するための支援や人手が足りない業種への労働移動の円滑化に向けた取り組みなどが求められるとしています。