“袴田事件”再審認める決定 袴田巌さんの姉 喜びと感謝伝える

57年前、静岡県で一家4人が殺害された、いわゆる「袴田事件」で、死刑が確定した袴田巌さんの再審=裁判のやり直しが、13日に認められたことを受けて、弁護団や姉のひで子さんが集会を開き、喜びと感謝の気持ちを支援者に伝えました。

57年前の1966年に今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さん(87)が求めていた裁判のやり直しについて、東京高裁は13日、「有罪の根拠とされた証拠に合理的な疑いが生じ、袴田さんを犯人とは認められない」として、再審開始を決定しました。

決定から一夜明けた14日、都内で報告集会が開かれ、袴田さんの姉のひで子さんは「48年も刑務所の中にいた巌の苦労を思うと、私の苦労はなんでもない。57年間戦ってきて本当によかったと思います。巌にはきょう再審開始を伝えますが、理解できないと思うので、『とてもいいことがあったよ』と言うつもりです」と、時折声を詰まらせながら話しました。

その上で「検察の特別抗告があると思いますが、せっかく再審開始の決定が出たので、もうひとふんばり頑張っていこうと思います。長い裁判になりますがよろしくお願いします」と述べました。

また、弁護団の間光洋弁護士は「無罪に向けたレールは敷かれた。あとはどれだけ早くたどりつけるかだ。特別抗告は許されない」と訴えました。

巌さん 決定の報告にふだんと変わらず “そうか”

支援者によりますと、袴田巌さんは14日、起きたあと、再審の開始を認めたことを伝える新聞の1面の記事を数分間眺め、少し驚いた様子だったということです。

そして、お祝いとして用意された赤飯や尾頭付きのたいなどを朝食として食べてから、午後1時ごろに支援者の運転する車で日課のドライブに出かけたということです。

このあと、ひで子さんは帰宅した巌さんに裁判所の決定文を見せ、「再審開始になったよ、安心しな。もう心配いらん、何にも心配いらん」と伝え、袴田さんの頭をやさしくなでていました。

巌さんを支援している市民グループの代表の猪野待子さんは、「ひで子さんが伝えた時、巌さんはふだんと変わらず『そうか』といった感じでした。あすは、巌さんが食べたいと言った好物のうなぎをとって、みんなで食べたい」と話していました。

えん罪被害者などが会見「審理長期化を防ぐには法改正必要」

袴田巌さんの再審が認められたことを受けて、えん罪の被害者などが会見し、「審理の長期化を防ぐには再審に関する法改正が必要だ」と訴えました。

13日の決定を受けて、再審に関する法律の見直しを訴えている市民グループが都内で会見し、今の法律には検察の証拠開示や抗告に関する具体的なルールがないため、長期化などの課題が生じていると指摘しました。

1995年に大阪 東住吉区の住宅が全焼し女の子が死亡した火事で、放火や殺人などの罪に問われ、無期懲役の刑で服役したものの、再審で無罪が確定した青木惠子さんは「私も一度再審が認められたあと、検察が抗告し審理が延びた。えん罪は許されないことで、巌さんは高齢なので一日も早く確定して、裁判と関係のない生活を送ってほしい」と訴えました。

司法の問題点などを指摘している、映画監督の周防正行さんは「再審に関するルールがなく、手探りでやっている現状では公正な裁判が進められない。法律をもとに正々堂々と闘えるようにするべきだ」と話していました。