「再配達」削減 集中的に呼びかけへ 受け取り方できることは

物流業界で人手不足が深刻な課題となる中、国土交通省は、宅配業者の大きな負担となっている「再配達」の削減を利用者に呼びかける取り組みを来月、ネット通販や宅配事業者と協力し、集中的に進めることになりました。

置き配サービスや宅配ロッカーの利用など、再配達を減らすために私たちができることは。

時間指定なのに不在 宅配ドライバーは

東京・府中市にある運送会社は、会社のドライバーだけでなく、個人事業主の配送業者などと契約して、ネット通販で注文された日用品や食品などさまざまな商品の宅配業務を請け負っています。

この会社では、再配達となる荷物の割合が18%程度に上っていて、宅配ドライバーの負担の増加に頭を悩ませています。
こちらの40代のドライバーは、マンションや戸建て住宅を1軒1軒まわりながら、毎日70個から100個ほどの荷物を配達しています。

ドライバーは届け先に到着すると、少しでも配達にかかる時間を短縮しようと小走りで玄関先まで向かっていました。ただ、インターフォンを2回鳴らして反応がなければ、せっかく運んだ荷物を再び車内に戻さなければなりません。
配達に同行した14個の荷物のうち、不在だったのは5個。ほぼ3個に1個が再配達となりました。こうした場合、その日のうちにさらに3回から4回訪ね、それでも不在だと翌日、再び配達に向かうことになります。朝8時に配達を始めても、すべて回り終えるのが夜8時を過ぎることも多いということです。

さらに、配達業務は荷物1個当たりで単価が決まっているため、再配達で負担が増えても会社やドライバーの収入が増えるわけではありません。
ドライバーの男性は「荷物が多い日には、車から玄関先まで走らなければ1日の配達を終えられないこともあります。時間を指定をしているのに不在の時は『なんで?』と思います」と話していました。

運送会社「デリバリーサービス」の志村直純 社長は「数をこなすことが収益につながるという仕組みになっているので、不在でお届けできないとデメリットも大きい。例えば置き配だと料金が少し割り引かれたり、時間指定だと割り増しになったりといった仕組みが整備されるとありがたい」と話していました。

1割上回る 再配達率

物流業界では来年4月から、トラックドライバーの労働規制が厳しくなるのに伴って、輸送量が大幅に減少することが懸念されるなど、人手不足が深刻な課題となっています。
こうした中、国土交通省は宅配業者の負担となっている「再配達」の削減に向けた取り組みを、来月1か月間、集中的に進めることとなりました。

具体的には、利用者に対して、荷物を確実に受け取ることができる時間帯を指定することや、玄関先などに荷物を届ける「置き配」の活用、それにコンビニでの受け取りや街なかの宅配ボックスの利用などを呼びかけます。
ネット通販や宅配の大手事業者と協力し、取り組みへの理解を求める内容をそれぞれのホームページに掲載するなど、利用者への周知を徹底する方針です。

国土交通省によりますと、再配達となる荷物の割合は去年10月の調査で11.8%となっていて、こうした取り組みを通じ、2025年度に7.5%まで引き下げたい考えです。斉藤国土交通大臣は、14日の閣議のあとの記者会見で「荷物を送る立場、受け取る立場としてできることがあることを理解してもらい、国民の皆様にもご協力いただきたい」と呼びかけました。

いつでも受け取れる「宅配ロッカー」増設へ

駅やスーパーなど自宅以外の場所で荷物を受け取ることができるサービスも広がっています。
このうち、宅配大手の「ヤマト運輸」は、駅やスーパーを中心に荷物の受け取りができる「宅配ロッカー」を増やしています。

ネット通販を利用する際などにあらかじめ自宅や勤務先などに近いロッカーを届け先に指定すると、荷物が届いてから3日間いつでも受け取ることができます。また送りたい荷物をこのロッカーに入れておくことで、荷物を発送することもできます。

会社では現在、全国およそ6700か所に宅配ロッカーを設置していて、今後も各地の再配達の状況などを見ながら、増やしていくことにしています。

広がる置き配サービス バッグも

人手不足が続く物流業界で再配達の削減が課題となるなか、家にいなくても荷物を受け取ることができるサービスが広がっています。

東京のベンチャー企業が手がけるのは、置き配用のバッグです。
バッグはロックが付いたワイヤーを使って、折り畳んだ状態で玄関のドアノブなどにつり下げることができます。
広げると2リットルのペットボトルが18本入るほどの容量があり、届いた荷物を宅配業者にバッグの中に入れてもらうことで、外出している場合でも荷物を受け取ることができます。
バッグにはファスナーを施錠するための南京錠もついているほか、省スペースで済むので、マンションなどの集合住宅でも導入しやすいとしています。

この会社では、宅配バッグの取り扱いを2018年の秋から始め、これまでに20万個程度販売したということです。

このバッグを手がける「Yper」の内山智晴 社長は「再配達が減って快適に荷物を受け取れるようになったと反響をいただいている。このスタイルが広がれば確実に配達の効率化に貢献できると考えている」と話していました。