ガーシー参院議員「除名処分」 参院懲罰委で決定 あす正式決定

国会への欠席を続け、懲罰処分としての議場での陳謝に応じなかったガーシー参議院議員に対し、参議院懲罰委員会は、議員の資格を失わせる除名処分とすることを決定しました。15日の本会議で正式に決まり、除名になる見通しです。

海外に滞在し、国会に一度も登院していない政治家女子48党のガーシー参議院議員は、懲罰処分の「議場での陳謝」に応じませんでした。

これを受けて、参議院懲罰委員会は、14日、改めて審査を行い、ガーシー議員の弁明について、党の浜田政策調査会長は「不登院という事情をもって除名処分に至ることは違法だ」と述べました。

このあと、討論が行われ、自民党や立憲民主党など各党からは「国民の意思と参議院を愚弄する行為だ」などとして、「除名」とすべきだという意見が相次ぎました。

そして、採決の結果、最も重い懲罰処分で、議員の資格を失わせる「除名」とすることを全会一致で決定しました。

除名処分は、15日の本会議で正式に決まり、尾辻議長が宣告して除名になる見通しです。

国会議員の「除名」処分は、これまでに衆参両院で1例ずつありますが、国会への欠席が続いたことを理由とするのは初めてです。

政女 浜田政調会長「『除名』処分は正直ショック」

政治家女子48党の浜田政策調査会長は、記者団に対し「改めて『除名』という処分に進むような感じがして、正直、ショックを受けている」と述べました。

鈴木宗男 参院懲罰委員長「民主主義の基本わきまえていない」

参議院懲罰委員会で委員長を務める日本維新の会の鈴木宗男議員は、記者団に対し「民主的な手続きの選挙で国民から選ばれたことの重みを考えながら、手続きや段階を踏んで、きょうの除名に至った。ガーシー議員は、法律や規則があって成り立つという民主主義の基本をわきまえていない。慎重な手続きをとって結論を出したので国民の理解は十分いただけると思う」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「参議院の意思示してご理解いただきたい」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「慎重・丁寧に手続きを進めて、与野党でしっかり合意形成を行ったうえで、非常に重い決断をした。このような事態に至ったことは本当に残念だが、参議院としての意思をはっきりと示して国民の皆さんにご理解をいただきたい」と述べました。

立民 斎藤参院国対委員長「非常に残念なこと 苦渋の決断」

立憲民主党の斎藤参議院国会対策委員長は、記者団に対し「非常に残念なことだが、再三の働きかけにも応じてもらえない環境がずっと続いてきたので除名という判断も致し方ない。主要政党すべてが思いを同じくした上での判断であり、苦渋の決断だ」と述べました。

懲罰の仕組み 現憲法下で「除名」は2例

衆参両議院は、憲法の規定に基づき、院内の秩序を乱した議員に懲罰を与えることができ、処分は重い順に「除名」「登院停止」「議場での陳謝」「議場での戒告」の4つが定められています。

国会の召集日から7日以内に正当な理由無く登院せず、議長が出席を求める書面を出しても応じないなど、秩序を乱す行為があった場合、議長は懲罰委員会に審査を付託し、処分は本会議で正式に決定されます。

議員資格を失わせる「除名」は憲法の規定で出席議員の3分の2以上の賛成が必要とされます。

今の憲法の下で国会議員が除名となったケースは2例あります。

昭和25年には、本会議で予算案に反対の討論をしたにもかかわらず、採決で賛成した小川友三参議院議員が除名になりました。

また昭和26年には代表質問で、当時の占領政策を批判する発言をしたとして「陳謝」の処分を受けた川上貫一衆議院議員が陳謝を拒否したことで除名になりました。

15日の本会議でガーシー議員の除名処分が正式に決まれば、72年前の川上議員以来です。

また平成以降では、3人が登院停止、1人が陳謝、1人が戒告の懲罰を受けています。

このうち平成25年にはアントニオ猪木参議院議員が国会の許可を得ないまま北朝鮮を訪問し、30日間の登院停止となりました。

また平成12年には松浪健四郎衆議院議員が内閣不信任決議案をめぐる討論の際に、本会議場の壇上からコップの水を野党側の席に向かってまき、25日間の登院停止になっています。

同志社大 武蔵教授「処分はやむをえない」

参議院事務局の元職員で国会の制度に詳しい同志社大学の武蔵勝宏教授は、ガーシー議員が不当逮捕される可能性などを理由に帰国しないことについて「国会議員には会期中の不逮捕特権があり、日本の司法手続きを理由に出席できないというのは正当な理由とは言えない。陳謝の懲罰に対して、出席すると回答しながら欠席したことは参議院の権威をおとしめるもので処分はやむをえない」と指摘しました。

そのうえで「ガーシー議員が集めた28万票余りは重みがあるが、国会議員は投票してくれた有権者だけでなく全国民の代表で、高額の歳費が支払われ続けることも理解は得られない。議員が主張するオンラインでの参加には国会改革として道理はあるが、実現するには法改正が必要で、議員として国会に出席したうえで主張するべきだった」と述べました。

一方で、議員資格を失わせる除名処分については「戦後3例目の非常に重い処分で、裁判で争うこともできず、本会議の決定が最終決定となる。慎重の上にも慎重な検討が必要で、本人に弁明の機会がなかったのは残念だ。会期末までまだ3か月あり、登院停止処分を踏まえたうえで会期末に除名にするやり方もあり得たのではないか」と話していました。

麗澤大 川上教授「国会議論が極めて重要 有権者は認識すべき」

政治心理学が専門でネットと政治の関係に詳しい麗澤大学の川上和久教授は、ガーシー議員が当選した背景について「参議院の比例代表はテレビで全国的な知名度があるタレント候補が当選するケースが多かったが、近年はネットユーザーから支持を集める人が得票を伸ばす現象が出てきている。芸能人のスキャンダルを取り上げる『暴露系ユーチューバー』として活動し政治の闇を暴くと訴えたガーシー議員が政治不信を抱く有権者のニーズをくみ取った側面はあると思う」と指摘しました。

そのうえで「ネット社会では自分の考えに近い情報だけに接触する『フィルターバブル』という現象が広がり、社会の分断が加速することが懸念されている。こうした中で言論の場である国会で合意を見いだしていく努力を続けなければ、民主主義は崩壊する危険もはらんでいる。国会の場で考えが違う人たちと議論することは民主主義社会で極めて重要で欠かせない手続きだということを今回の除名処分を教訓に有権者は改めて認識すべきだ」と述べました。