Q.なぜ今回の破綻が起きたのか。
A.今回破綻したシリコンバレーバンクは、集まった預金をスタートアップ企業に多く貸し出していたが、十分な貸し出し先を確保できなくなったため、資金を債券で運用していた。
しかし、アメリカはこの1年ぐらい金利を上げてきたため、その結果、債券が値下がりしてしまった。
一方で銀行として支払いを迫られたときに、債券を売ることは直接の損失になるので、結局十分な資金の調達ができず、さらに預金の引き出しが始まったため破綻につながった。
Q.破綻をどう受け止めているか。
A.驚いている。
アメリカの銀行はリーマンショックなどがあり、非常に厳しい対応を取りながら規制を行ってきた。こうした中、あまりに非常識なことが起きている。
1つは、シリコンバレーバンクはスタートアップ企業に集中して貸し出しをしていて、これは銀行の動きとしては危険なことだ。
このほか、債券をこれだけ保有していたら、債券が値下がりしたときに、損失を出さないように手立てを組んでおくことが今の銀行に求められているはずで、このような基礎的に準備しておかなければいけないことをやっていなかった。そのため、規制当局の対応も疑問に思う。
Q.今回、アメリカ財務省などはシリコンバレーバンクについて「すべての預金者を保護する」と発表したが、どれほど特別なことなのか。
A.異例と言っていい。
非常にびっくりしたのは、週末の短時間で、財務長官やFRB=連邦準備制度理事会の議長などが連携して動いたということで、ある意味アメリカの危機対応の強さを発揮していると思う。
大きな銀行が突然破綻して、結果としてそれが広まってしまうことを避けるために当局が強く動いたことは、リーマンショックの時との違いだと思う。
Q.利上げを続けるFRBの政策への影響は。
A.今回の対応で、いわゆる金融パニックのようなことは防ぐことができるということを分かってもらわないと、FRBは金利を上げてインフレを抑えようとしているが、それがやりづらくなるのではないかという見方が出てきてしまう。
仮に金融パニックのようなことが起きて、利上げをやめるだとか、本当に必要な利上げを十分にできないとなると、インフレを抑えられなくなるという心配につながる。
そのため、こうした状況の中で今回の破綻が起きたことは今後の大きな試練になると思う。
Q.世界経済や日本経済にはどのような影響があるか。
A.今、例えばアメリカ経済は、このところ思った以上に調子がいいので利上げを強く行わなければいけないというふうになっていた。
それに伴い、為替相場はドル高円安に動いていたが、アメリカがそんな利上げができないということになると、今度は円が高くなる。
そういった為替の影響も出てくる。
ずっとインフレが強いままだとなると、株価は上がらなくなってしまう。
そういった金融市場を通じた影響が出てくる可能性がある。
それから、利上げを抑えていると、先行きはもっと利上げをしなければいけなくなる可能性もあり、その時にアメリカの景気へのダメージがあると、日本の輸出や景気も悪くなるということもあるので、いろいろな意味で悩ましい問題が起きたといえる。

アメリカ 相次ぐ銀行の経営破綻 背景と影響は【Q&Aで詳しく】
アメリカのシリコンバレーバンクとシグネチャーバンクが破綻したことについて、アメリカの金融政策に詳しい元三菱UFJ銀行のエコノミスト、鈴木敏之氏に聞きました。

日本の金融市場 大きく動揺

アメリカの銀行が相次いで経営破綻したことを受けて週明けの金融市場は大きく動揺しました。
東京株式市場では銀行株などに売り注文が膨らみ、13日、日経平均株価は一時、500円以上急落しました。
また、東京外国為替市場ではドルが売られ、一時、1ドル=133円台まで円高ドル安が進んだほか、債券市場ではリスクを避けようと日本国債を買う動きが強まり長期金利が大きく低下しました。
金融庁や日銀は、現時点で国内の金融システムへの影響は限定的だと見ていますが、金融市場への影響やアメリカの金融当局の対応などを注意深く見ていくことにしています。
東京株式市場では銀行株などに売り注文が膨らみ、13日、日経平均株価は一時、500円以上急落しました。
また、東京外国為替市場ではドルが売られ、一時、1ドル=133円台まで円高ドル安が進んだほか、債券市場ではリスクを避けようと日本国債を買う動きが強まり長期金利が大きく低下しました。
金融庁や日銀は、現時点で国内の金融システムへの影響は限定的だと見ていますが、金融市場への影響やアメリカの金融当局の対応などを注意深く見ていくことにしています。
専門家「金融システムへの影響 見極める必要」

日本への影響について、三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「シリコンバレーバンクは特殊な形態の銀行で、スタートアップ企業との取り引きを非常に積極的に行っており、法人からの預金をかなりたくさん持っている。取引先が業績不安で預金を引き上げたことで今回のようなことが起きたが、そのまま日本の銀行にあてはめるというのは難しく、過度に警戒する必要はないと考える。リーマンショックのようにリスクが他の銀行に波及して金融システム全体を揺るがすような展開になる可能性は低いのではないか」と指摘しました。
そのうえで「当局の政策が打ち出されたので、その効果を見極めるという状況になっていくが、市場にも不安定な状態が残る可能性が高いと思う。銀行の破綻であり、全く金融システムに影響が出ないわけでもないので、あまり楽観はせず、当局の政策を受けて金融市場が落ち着いていくかどうかを見極める必要がある」と話しています。
そのうえで「当局の政策が打ち出されたので、その効果を見極めるという状況になっていくが、市場にも不安定な状態が残る可能性が高いと思う。銀行の破綻であり、全く金融システムに影響が出ないわけでもないので、あまり楽観はせず、当局の政策を受けて金融市場が落ち着いていくかどうかを見極める必要がある」と話しています。