将棋「王将戦」第6局 藤井五冠と羽生九段の対局 初日終わる

将棋の八大タイトルの1つ、「王将戦」の第6局が佐賀県で始まり、タイトル防衛に王手をかける藤井聡太五冠(20)と、挑戦者の羽生善治九段(52)が初日の対局を終えました。

「王将戦」第6局は、佐賀県上峰町に対局場が設けられ、午前9時、羽生九段の先手で始まりました。

対局は序盤に大駒の「角」を交換したあと、羽生九段が攻めの姿勢を見せ、早くから駒がぶつかり合う展開となりました。

藤井五冠も相手の攻めを受けながら、反撃のチャンスをうかがうなど、互いにおよそ1時間の長考を挟みながら陣形を整え、午後6時すぎ、羽生九段が次の1手を紙に書いて立会人に渡す「封じ手」を行って初日の対局が終わりました。

藤井五冠は、今年度すでに叡王、棋聖、王位、竜王の防衛に成功し、「王将戦」は今年度5回目のタイトル防衛戦です。

一方、羽生九段は、これまでに獲得したタイトルが歴代最多の通算99期を誇り、今回の「王将戦」を制すと、100期の大台に乗ります。

2人は、タイトル戦としては今回の「王将戦」が初顔合わせで、藤井五冠が羽生九段を相手にここまで3勝2敗として防衛まであと1勝に迫っています。

第5局まではいずれも先手が白星を挙げていて、タイトル獲得に向けてあとがない羽生九段は、先手番の今回の対局に勝利し、最終局に持ち込みたいところです。

第6局は12日午前9時に「封じ手」を開封して再開され、勝敗は12日午後に決まる見通しです。

森下卓九段が分析「“剛速球”対“変幻自在”」

藤井聡太五冠(20)と羽生善治九段(52)によるここまでの「王将戦」について、日本将棋連盟の常務理事を務める森下卓九段(56)に聞きました。

森下九段は、年齢差32歳の藤井五冠を相手に、ここまで2勝を挙げている羽生九段について、多彩な戦術を使うなど、本領を発揮していると分析し、「羽生九段は、後手の第1局、第3局、第5局で『一手損角換わり』、『雁木』、『横歩取り』と独自の作戦をとっている。結果的にはどれも敗れたが、羽生九段は、先手の第2局は『相掛かり』、第4局は『角換わり』と、メジャーな戦法で勝っている。メジャーと言えない作戦でもきっちり将棋を作っているほか最新型でも藤井五冠を相手に対応している。羽生九段は昔からオールラウンドプレーヤーでまさに“変幻自在”と言われていたが、勝った先手の対局は完勝と言っていい将棋で、羽生九段のすごさを実感させられた」と振り返りました。

一方の藤井五冠については、対局前から“自分の投げる球を相手に見せている”と話し、「藤井五冠は後手の場合、2手目は『8四歩』で、相手がどう来ても必ず飛車先の「歩」を突く。昔から『王者の一手』と言われるが、AIも後手では2手目が必ず『8四歩』なのでAIに忠実なのだとある棋士から聞き、なるほどと思った。このように、藤井五冠は『俺はこれを投げるぞ』と相手に球を示すのだが、その球が球速170キロくらいある」と表現していました。

そして、今回のタイトル戦にかける両者の心境については、「羽生九段は昨年度の勝率が3割台になったが、その中から立て直して今回の挑戦権をつかんだ。もともとの力は桁違いだが52歳になって羽生九段といえども衰えは感じていると思う。それをいかにカバーしてプラスの面を出すか、というところに今回の勝負にかける執念を感じた。また、藤井五冠はタイトル戦を11期制しているとは言え、七番勝負で角番が1度もない。追い詰められたことが1度もないわけなので、最終局に持ち込まれると、“天下無敵の藤井聡太”といえどもやっぱり平常心でいることは難しいのではないか」と語っていました。

その上で、第6局の見どころについて、「藤井五冠は命懸けで勝ちに来ると思う。羽生九段がどう戦うか、楽しみな対局だ」と予想していました。