政府 「商工中金」民営化への法律改正案を閣議決定

政府系金融機関の「商工中金」について、政府は、保有する株式をすべて売却し民営化するための法律の改正案を10日の閣議で決定しました。

政府は10日の閣議で、「商工中金法の一部を改正する法案」などを決定しました。

商工中金の完全民営化の方針は2006年に決まっていましたが、リーマンショックや東日本大震災でたびたび延期され、その後、資金繰りが悪化した中小企業への貸し付けで申請書類の改ざんなどの不正が明らかになりました。

このため改正案では、半官半民の弊害をなくし中小企業への柔軟な支援を可能にするための制度改革を行うとしていて、政府が保有する46%余りの株式は、法律の改正から2年以内に全国の中小企業や商工会議所などに売却することにしています。

民営化後は、融資先の販路拡大を後押しする企業を子会社にできるようにするなど、ほかの金融機関と同じ程度まで業務拡大が認められることになります。

さらに国の認可が必要だった代表取締役の選任を届け出制に変更するなど、国の関与を弱めることにしていますが、コロナ禍などで行った国の資金をもとに中小企業に貸し付ける「危機対応融資」の機能は残すことにしています。

政府は今の通常国会で関連する法案の成立を目指す方針です。

民営化への経緯は

商工中金は、1936年に設立された政府系の金融機関で、貸出残高のおよそ9割以上が中小企業向けです。

大きな特徴は、災害などが発生した際、資金繰りが悪化した中小企業に貸し付ける「危機対応融資」と呼ばれる機能があることです。

商工中金の完全民営化は、2006年に小泉政権のもとで決まりましたが、2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災で、この融資の対応にあたったことから、2度にわたって延期されました。

しかし2016年、この融資などに関連し、申請書類の改ざんといった5500件余りの不正が発覚しました。

不正の原因を調べた第三者委員会は、「過大なノルマや現場へのプレッシャーがあった」と指摘しました。

この不正がきっかけとなり、商工中金の組織のあり方を検討する国の有識者検討会が発足。

2018年に国に依存する経営体質を改め、解体的な出直しが必要だとして、4年後に完全民営化が可能かを判断すべきだとする提言をまとめました。

その後、大手銀行出身でプリンスホテルの常務を務めていた関根正裕氏が社長に就任し、事業再生のための融資を積極的に行うとともに、営業ノルマを廃止するなどの経営改革に乗り出しました。

そして先月、国の検討会は、中小企業の資金繰りを支えるため「危機対応融資」は残した上で、政府が保有する株式はすべて売却し、民営化すべきだとする報告書をまとめていました。