【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

モルドバ東部 治安当局 “テロ行為計画で容疑者拘束”

ウクライナの隣国モルドバの東部に位置し、ロシアの影響下にある沿ドニエストル地方の治安当局は9日、この地域でウクライナの情報機関が「テロ行為」を計画していたと主張した上で、容疑者を拘束したと発表しました。

これに対しウクライナの保安庁は「ロシアによって画策された挑発行為だ」と否定しています。

沿ドニエストル地方は、モルドバからの一方的な分離独立を宣言し、モルドバ政府の統治が及んでいない一方、ロシア軍が駐留するなどロシアの強い影響下にあります。

今回の事態についてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は9日「ウクライナの信用失墜とモルドバの不安定化を目的とした、ロシアによる情報工作の可能性が高い」と分析しています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、欧米寄りのモルドバやウクライナの政府は、ロシア軍が沿ドニエストル地方にも介入してくるのではないかと、警戒を強めています。

ロシア軍の大規模ミサイル攻撃 国内への誇示が目的か

ロシア軍が9日に行った、首都キーウなど各地に対して80発以上を発射する大規模なミサイル攻撃については、巡航ミサイルや通常、迎撃用に使われる地対空ミサイルに加えて、ロシア側が極超音速ミサイルだと誇示する「キンジャール」も6発という異例の数が発射されたと指摘されています。

イギリス国防省は10日、「2月16日以来の大規模な長距離攻撃であり、おそらく、去年12月以来最大の攻撃の1つだ」と分析しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は9日、「ロシアの攻撃は国家のプロパガンダの目的で行われたものだ。今月2日にウクライナからの襲撃でロシア西部の州で死者が出たとして、国内の戦争支持者から報復を要求する声が高まった。プーチン大統領はこれをなだめるため、希少なミサイルをむだに使用した」と指摘しました。

ロシア軍はすでに深刻なミサイル不足に陥っているとみられるものの、プーチン大統領はウクライナに対する報復攻撃だとして、国内に誇示する必要があったという見方がでています。

ゼレンスキー大統領「ロシアのミサイル 6人の命奪った」と非難

ロシア軍が9日行った、ウクライナ全土への大規模なミサイル攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は動画のメッセージで「文明社会に対し戦争を仕掛けるテロ国家による新たな攻撃で、一部の地域や都市では停電や断水が発生した。ロシアのミサイルは6人の命を奪った」と非難しました。

ウクライナ産農産物の輸出 ロシアとの合意の期限迫る

ウクライナ産の農産物の輸出をめぐり、ウクライナとロシアの合意の期限が今月18日に迫っていますが、ロシア側はロシア産の農産物の輸出が滞っているなどと主張し延長に難色を示しており、延長されるかどうかが焦点になっています。

国連のグテーレス事務総長は8日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談し、合意の延長に向けて各国との調整を続ける考えを示しました。

これに対し、ロシアのラブロフ外相は9日、ウクライナ産の農産物が輸出される一方、ロシア産の農産物や肥料の輸出は制限が続いていると不満を示し「合意は半分しか履行されておらず、中途半端になれば、合意の延長は非常に複雑な状況になる」とけん制しました。

ロシア側はこれまでもロシア産の農産物などの輸出が滞っているなどとして、延長に同意しない可能性を示唆していて、合意が延長されるかどうかが焦点になっています。

“イランの会社への航空部品輸出に関与”中国企業などに制裁 米

ロシアがイラン製の攻撃用の無人機でウクライナを攻撃していると指摘されていることに関連して、アメリカ政府は、中国企業5社などがイランの会社への航空部品の輸出に関わっていたとして、資産凍結などの制裁を科しました。

アメリカ財務省は9日、声明を発表し、中国企業5社と中国人1人が、無人機を製造しているイランの会社への部品の輸出に関わっていたなどとして制裁リストに追加し、資産凍結などを科したと明らかにしました。

このうち中国東部の浙江省にある会社は、アメリカ政府がウクライナへの攻撃に使われていると指摘しているイランの無人機「シャヘド」のエンジンを含む航空部品の販売や輸出に関わっていたということです。

また、南部の広西チワン族自治区にある別の会社は100万ドル以上、日本円にして1億3600万円相当の数千点の航空部品の販売や輸出に関わっていたということです。

ロシア選手らの国際大会での除外求める声明

ウクライナのオリンピック委員会は、IOC=国際オリンピック委員会が検討しているロシアとベラルーシの選手の国際大会への復帰について、軍事侵攻が終わるまで除外の継続を求める共同声明に国内の競技連盟と署名しました。

ウクライナのオリンピック委員会は9日、首都キーウで国内の競技連盟などを集め会合を開きました。

この中では、IOCがことし1月に軍事侵攻を理由にスポーツの国際大会から除外されているロシアとその同盟国のベラルーシの選手について、国や地域を代表しない『中立』を条件に復帰を検討するとしたことへの対応などが話し合われました。

その結果、IOCに対し、軍事侵攻が続くかぎり両国の選手を国際大会に復帰させないよう求める共同声明に署名し、発表しました。

米 CIA長官「プーチン大統領 欧米の支援疲れねらっている」

アメリカ・CIAのバーンズ長官は9日、議会下院の公聴会に出席し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領について「彼は時間を自分のために利用できると確信している。消耗戦を通じて、ウクライナ軍を疲弊させ、欧米によるウクライナへの支援を弱体化できると信じている」と述べ、プーチン大統領が欧米の支援疲れをねらっているとの分析を示しました。

そして分析の結果として、「戦場では、今後の数か月が非常に重要だ。私は、プーチン大統領が現在、真剣な交渉を行う用意はないと確信しているが、交渉の見通しが立つかどうかは、今後の戦局しだいだ」と述べ、今後の数か月が重要な局面になるとの見方を示しました。

そのうえで「重要なことは、われわれができるかぎりの支援を提供することだ」と述べ欧米諸国は支援疲れをねらうプーチン大統領の思惑を打ち砕くためにも、ウクライナにできるかぎりの軍事支援を行う必要があるとの考えを強調しました。

ウクライナ各地でミサイル攻撃 ロシア国防省 “報復攻撃”

ウクライナでは9日、前線から離れた首都キーウなど各地へミサイル攻撃があり、ウクライナ側によりますとこのうち西部リビウ州と東部ドニプロペトロウシク州で市民など少なくとも6人が死亡しました。

これに対してロシア国防省は9日、今回の攻撃はウクライナからの襲撃でロシア国内で死者が出たとすることへの報復攻撃だったと主張しています。

また、南部ヘルソン州ではバスの停留所や住宅がロシアの戦車からと見られる砲撃を受けて、地元当局は市民4人が死亡したと発表しています。

ザポリージャ原発の「電力供給が回復」ウクライナ原子力発電公社

ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」はロシア軍のミサイル攻撃によって送電線が切断されていたザポリージャ原子力発電所について、「電力供給が回復した」と現地時間の9日午後4時半ごろ、SNSに投稿しました。

「エネルゴアトム」によりますとザポリージャ原発は現地時間9日午前3時50分すぎに送電線が切断されたことで原子炉の冷却などに必要な外部からの電力の供給が失われ、非常用の発電機を稼働させて原発に電力供給を行っていました。

その後、送電線の修復を行い、国内の電力網への接続に切り替えることができたということです。送電線が切断されてから使用していた非常用の発電機は、燃料が10日分しかないということで、「エネルゴアトム」は電源を回復できなければ重大な事故につながると危機感を示していました。

米 バイデン政権 ウクライナ支援含む国防費は3.3%の増加

アメリカのバイデン政権は新年度の「予算教書」を発表し、国防予算を増額する一方、高所得者層の税率の引き上げなどによって400兆円余りの財政赤字の削減を目指す方針を示しました。

バイデン政権は9日、ことし10月から始まる新たな会計年度の予算について政府の考え方を議会に示す「予算教書」を発表しました。

歳出の要求総額は6兆8830億ドル、日本円にして940兆円余りで前の年度から8%増加しました。

このうち国防費はウクライナへの支援などを含めて8864億ドル3.3%の増加となっています。

ウクライナ産農産物の輸出合意 国連 延長へ向けて調整継続へ

ウクライナ産の農産物の輸出をめぐり、国連とトルコの仲介で実現したウクライナとロシアの合意は今月18日に期限が迫っています。

国連のグテーレス事務総長は8日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談し、会談後の記者会見で、ゼレンスキー大統領は「合意を継続することが人道面からも非常に重要だという点で意見が一致した」と述べ、グテーレス事務総長も合意の延長に向けて各国との調整を続ける考えを示しました。

ロシア ラブロフ外相 農産物輸出合意「履行は半分」

ロシアのラブロフ外相は9日、モスクワで行った記者会見の中でウクライナ産の農産物が輸出される一方、ロシア産の農産物や肥料の輸出は制限が続いていると不満を示し「合意は半分しか履行されておらず、中途半端になれば、合意の延長は非常に複雑な状況になる」とけん制しました。

ロシア側はこれまでもロシア産の農産物などの輸出が滞っているなどとして、延長に同意しない可能性を示唆し揺さぶりを続けています。

IAEA事務局長 外部電源の喪失 「いつかは運が尽きる」

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、9日オーストリア、ウィーンの本部で開かれている理事会で発言し、ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所と外部の送電網をつなぐ送電線が切り離されたことについて、今回が6度目の外部電源の喪失だと指摘しました。

そのうえで、「この状態を放置していればいつかは運が尽きてしまう」と述べ、重大な事故につながりかねないと危機感を示しました。

ウクライナ復興へ無償資金協力 JICAとウクライナ政府が署名

日本政府が決めたウクライナの復旧・復興に向けての224億円余りの無償資金協力について、日本側の窓口となるJICA=国際協力機構とウクライナ政府との契約の署名式が行われました。

署名式は9日、オンラインで行われ、JICAの山田順一副理事長とウクライナのクブラコフ復興担当副首相兼インフラ相が契約書に署名しました。

日本政府は、ウクライナ政府に
▽地雷や不発弾の処理対策、
▽ロシアによる攻撃で破壊された電力施設や上下水道、オンライン教育の環境整備などに必要な機材を供与することにしています。

JICAを通じた無償資金協力は合わせて224億4000万円となります。

ウクライナのクブラコフ復興担当副首相は、「国民の生活を改善させるための重要な支援に対して心から感謝している。両国間のさらなる連携を進めていきたい」と述べました。

ジョージア「ロシアの法律と同じ」抗議活動で法案取り下げ発表

ロシアの隣国、ジョージアで、外国から資金提供を受ける団体に登録を義務づける法案をめぐり、「ロシアの法律と同じだ」などと大規模な抗議活動が行われたことを受けて、与党は9日、法案を取り下げると発表しました。

ただ、野党側は今後も抗議を続ける姿勢を示していて、混乱が収束に向かうか不透明です。

ジョージアの議会では7日、外国から20%以上の資金提供を受けている団体を「外国の代理人」として登録することを義務づける法案を成立させる動きを進めたところ、野党側は、政権の意向に沿わない個人や団体を統制するロシアの法律と同じだなどと強く反発していました。

首都トビリシでは、法案に反対して数万人が集まり大規模な抗議活動を行い、一部では治安当局と衝突するなど混乱が広がりました。

こうした中、9日、法案を成立させる動きを進めてきた与党は、声明で「法案を無条件に取り下げる」と発表しました。

ただ、野党側は「何度もうそをついてきたので信用できない」として、今後も抗議を続けていく姿勢を示していて、混乱が収束に向かうか不透明です。

今回の法案について、ロシア側は「全く関係がない」などとして法案への関与を否定しています。

ジョージアは去年、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したあと、ウクライナに続いて、EU=ヨーロッパ連合への加盟を申請していて、EUなどからは、今回の法案について民主的でないと懸念する声が出ていました。