【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

大規模ミサイル攻撃 ロシア軍は報復と発表

ウクライナでは9日、首都キーウや西部の州など各地でロシア軍がミサイルなどによる攻撃を行い、少なくとも6人が死亡するなど、被害がでています。

これに関連してロシア国防省は「ロシア西部の州でウクライナ政府が組織したテロ行為に対する大規模な報復攻撃を実施した」と発表しました。

ウクライナ当局は9日、首都キーウをはじめ各地でロシア軍がミサイルや無人機などによる攻撃を行ったと発表しました。

このうち西部リビウ州では住宅がロシア軍に攻撃され、地元の州知事は市民5人が死亡したと明らかにしました。

また東部ドニプロペトロウシク州でも市民1人が死亡したということです。

首都キーウ市の当局は、市内でけが人が出ているとしています。

ゼレンスキー大統領は9日「敵はわれわれを威嚇するために81発のミサイルを発射し、みじめな戦術にまた戻った」とロシア軍の攻撃を激しく非難しました。

これに対しロシア国防省は「3月2日にロシア西部のブリャンスク州でウクライナ政府が組織したテロ行為に対する大規模な報復攻撃を実施した」と発表しました。

そのうえで、ロシア側が極超音速ミサイルだと主張する「キンジャール」などを使って、ウクライナ側の軍事インフラなどの目標物を破壊したと主張しています。

プーチン政権は、2日にウクライナとの国境地域の西部ブリャンスク州に武装集団が侵入して死者が出たと発表しています。

その後、プーチン大統領はウクライナ側によるものだと一方的に非難したうえで「彼らは何も成功できないし、われわれが粉砕する」と述べ、報復を示唆していました。

IAEA ザポリージャ原発電源喪失を確認

一方、ウクライナの原子力発電公社によりますと、9日、南部のザポリージャ原子力発電所に電力を供給する最後の送電線がロシア軍のミサイル攻撃によって切断されたということです。

これについて、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長も9日、ザポリージャ原発と外部の送電網をつなぐ送電線が切り離され、原子炉の冷却などに必要な外部からの電力の供給が失われ、現在は非常用の発電機を稼働させ冷却に必要な電力を供給していると明らかにしました。

ザポリージャ原発はこれまでも送電線が砲撃で損傷するなどして外部からの電力の供給が途絶える事態が相次いでいて、グロッシ事務局長は重大な事故につながりかねないと危機感を示しました。

ウクライナ軍 “ロシア軍が極超音速ミサイルなどで大規模攻撃”

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、ロシア軍が9日、ウクライナ各地へ行った攻撃について、ミサイル81発、無人機8機によるものだったと発表しました。

このうちウクライナ側は、ミサイル34発、無人機4機を撃墜したとしています。

また発表では、ロシアから発射されたミサイルは爆撃機や艦艇などからの巡航ミサイルなどで、このうち6発はロシア側が極超音速ミサイルだとする「キンジャール」だったとしています。

ウクライナ空軍のイグナト報道官は、地元メディアに対し、今回のミサイル攻撃は、大規模なものだったという見方を示した上で「『キンジャール』が合計6発発射されたことはこれまでにないものだ」と述べて、迎撃は難しくウクライナ側に危険をもたらすものだという認識を示しました。

首都キーウなどでミサイル攻撃相次ぐ

ウクライナ当局は9日、首都キーウをはじめ東部ハルキウ州や南部ミコライウ州など各地でロシア軍によるミサイル攻撃が相次いでいると発表しました。

このうち、NHKの取材班が滞在している首都キーウのホテルでは日本時間の9日午後1時ごろ、現地時間の9日午前6時ごろ、「ドーン」という爆発音のような音が聞こえました。

キーウ市当局によりますと、爆発があったキーウ市内のアパートの駐車場では、とめてあった車が炎上し、飛び散った破片で周囲の車や建物にも被害が出たということで、3人がけがをしたとしています。また、キーウ市内の発電所がミサイルの攻撃を受けたとの情報も出ています。

キーウのクリチコ市長は市内南部や西部の地区で爆発があったとSNSに投稿し、市民に対し、シェルターにとどまるように呼びかけています。

ザポリージャ原発 最後の送電線が切断

ウクライナの原子力発電公社によりますと、現地時間9日午前4時前に南部のザポリージャ原子力発電所に電力を供給する最後の送電線が、ロシア軍のロケット攻撃によって切断されたということです。

現在は、予備の発電機を使って原発に電力を供給しているということです。

発電機の燃料は10日分しかないということで、電源を回復できなければ重大な事故につながると危機感を示しています。

EU ウクライナに弾薬特化2900億円の軍事支援 加盟国に提案

EU=ヨーロッパ連合は8日、スウェーデンで国防相会議を開きウクライナへの軍事支援について協議しました。
参加したウクライナのレズニコフ国防相は会議に先立ち、記者団に対して「最も重要なのは防空システムと弾薬、弾薬、そして弾薬だ」と述べ、弾薬の必要性を強調しました。

会議のあと、EUの外相にあたるボレル上級代表は記者会見し、弾薬の供与に特化した20億ユーロ、日本円で2900億円にのぼる新たな支援を加盟国に提案したことを明らかにしました。

弾薬は加盟国のそれぞれの在庫に加え、共同で調達して確保を目指すということです。

今月20日に外相・国防相会議を開き、合意を目指すとしています。

EUは軍事支援を行う基金に20億ユーロを積み増すことを去年12月に決めましたが、今回の案に各国が合意すれば、その積み増し分がそのまま弾薬の供与にあてられることになります。
ボレル上級代表は「今後も支援を続けるのであればさらなる積み増しについて決めなければならない。これはリーダーたちによる政治的な決断だ」と述べ、今月行われるEU首脳会議でさらなる支援について協議が行われるという見通しを示しました。

ロシア バフムト東側を支配と主張 ウクライナは徹底抗戦の構え

ロシア側はウクライナ東部ドネツク州の掌握をねらい、ウクライナ側の拠点のひとつバフムトへの攻撃を強めていて、8日にはロシアの民間軍事会社ワグネルのトップがバフムト市内を流れる川の東側を支配下に置いたと主張しました。

これに先立ち、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も7日の分析で、ロシア側がバフムトの東側を掌握した可能性が高いと指摘しています。

これに対して、ウクライナ軍の参謀本部は8日、ロシア側がバフムトへの攻撃を続けているものの市内や周辺への攻撃を退けていると発表しました。

ウクライナのゼレンスキー政権はバフムトの防衛態勢を強化するなど徹底抗戦の構えを示していて、攻防は一層激しくなっているものとみられます。

国連事務総長“ウクライナ産農産物の輸出 合意延長に向け調整”

国連のグテーレス事務総長は8日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談し、その後、共同で会見しました。

この中でグテーレス事務総長は「国連の立場は明確だ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は国連憲章と国際法に違反している。公正な平和が確保されるまでわれわれはウクライナの人たちを苦しめる紛争の影響を和らげるため努力し続ける」と強調しました。

一方、会談では、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐって国連とトルコの仲介で実現したウクライナとロシアの合意についても協議が行われました。

この合意は、今月18日に期限が迫っていますが、ロシアはロシア産の農産物や肥料の輸出が滞っているなどとして合意の履行が不十分だと主張し、延長に同意しない可能性も示唆しています。

これについてゼレンスキー大統領は「今月18日以降も合意を継続することが人道面からも非常に重要だという点で意見が一致した」と述べました。

また、グテーレス事務総長は、この合意に基づいて2300万トンの穀物が輸出され、世界の食料価格を抑えることにつながったと強調した上で「合意に沿った輸出の基盤を最大限に活用できるよう条件づくりに取り組む」と述べ、合意の延長に向けて各国との調整を続ける考えを示しました。

ゼレンスキー大統領 命を落とした女性たちに哀悼の意

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、「国際女性デー」に合わせてビデオメッセージを公開し「ウクライナのために働き、命をささげたすべての女性たちを思い出し、 感謝することが大切だ」と述べ、ロシア軍との戦いで命を落とした女性たちに哀悼の意を表しました。

ウクライナではロシアと同様に、旧ソビエト時代から「国際女性デー」には女性に花やプレゼントを贈って感謝する習慣があります。

しかし、ロシアの軍事侵攻を受けて「敵国と一緒に祝うべきでない」などとして国民の間でこの習慣を続けるべきかどうか議論になっています。

プーチン大統領「国際女性デー」で女性を表彰

ロシアのプーチン大統領は3月8日の「国際女性デー」にあわせてモスクワのクレムリンで各分野で活躍する女性を表彰し、ウクライナ東部や南部の占領地域で活動するという従軍記者や医療従事者も招かれました。

プーチン大統領は「ロシアは再び、安全保障や主権への脅威に直面している」としたうえで、女性たちは軍事侵攻を支えるために献身的に活躍しているとして功績をたたえ、国民に対して結束を呼びかけた形です。

ウクライナ陸軍司令官 戦闘続くバフムトの拠点訪問

ウクライナ東部で作戦を指揮するウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は8日、自身のSNSに激しい戦闘が続くバフムトの拠点を訪れたとする映像を公開しました。

映像にはシルスキー司令官が兵士たちと握手を交わして激励し、一人ひとりに勲章を手渡す様子が写っています。

シルスキー司令官は「すべての敵は破壊され、勝利はもたらされる。今あなたたちは最も重要な場所にいるのだ。あなたたちの勇気をたたえる」と述べ、兵士たちを鼓舞していました。

NATO事務総長「バフムト陥落の可能性 排除できない」

ロシア軍が攻撃を強めているウクライナ側の拠点のひとつ、バフムトをめぐって、NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は8日、訪問先のスウェーデンで記者団に対し「ロシア側は大きな損失を出しているが、バフムトが近く陥落する可能性も排除できない」と述べました。

そのうえで「これは転換点ではない。ただ、われわれはロシアを過小に評価してはならないということだ」と述べ、ウクライナへ支援を続ける必要性を強調しました。