H3ロケット打ち上げ失敗 原因究明へ 着火信号送る動作など中心

日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機が、発射後、2段目のエンジンに着火せず、打ち上げに失敗したことについてJAXA=宇宙航空研究開発機構は、着火の信号を送る一連の動作に問題がなかったかを中心に、飛行時のデータを分析するなどして、詳しい原因を調べる方針です。

日本の新たな主力ロケット「H3」初号機は、7日午前10時37分鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。

初号機は、計画どおり飛行していましたが、1段目と2段目のロケット分離後2段目のエンジンが着火せず、搭載した地球観測衛星「だいち3号」を予定の軌道に投入できる見込みがないとして、発射からおよそ14分後にロケットを破壊する信号を送り、打ち上げは失敗しました。

JAXAによりますと、2段目のエンジンは、運用中のロケット「H2A」でも使われていますが「H3」用に改良され、着火の信号を送る機器などが従来と異なるということです。

JAXAは、着火の信号を送る一連の動作に問題がなかったかを中心に、飛行時のデータを分析するなどして詳しい原因を調べる方針です。

「H3」は、国家プロジェクトとして9年前から開発が始まり、2度の年度をまたぐ延期を経て先月、打ち上げに臨みましたが、発射直前、ロケットの1段目の装置で異常が発生し、打ち上げが中止されました。

JAXAの山川 宏 理事長は7日の会見で「組織の長として重く受け止めている。われわれの責務として透明性を持って速やかに原因を徹底究明し、対策を打つことが最優先の課題だ」と話していました。

「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、パワー増強とコストダウンの両立を目指す新しい大型ロケットとして開発が進められていますが、今後の原因究明や対策次第では、日本の宇宙開発が海外から大きく後れをとることが懸念されます。

専門家「信頼性へのダメージは避けられない」

宇宙開発に詳しい笹川平和財団の角南 篤 理事長は、「H3」の打ち上げ失敗について「期待が高かっただけに失敗のインパクトが大きい。宇宙やその関連技術は信頼性が一番大切であり、それに対する大きなダメージは避けられない」と指摘しました。

その上で、アメリカなどが人類の宇宙進出の足がかりとして月を探査する「アルテミス計画」など、「H3」の使用が計画されているミッションへの影響については「人工衛星などを宇宙へ運ぶ輸送機の提供が遅れる。宇宙開発はいろいろな産業にとって重要で後れを取ると、日本の産業界や民間利用などに影響が出ると考えられる。年内には『H3』の打ち上げのめどをつけてほしい」と述べ、一刻も早い「H3」の打ち上げ成功につなげることが大切だと指摘しました。

そして、「新しい技術を実証する上で失敗は必ずしも珍しいことではないが、失敗の後の対応が最も重要だ。失敗の原因を速やかに解明するとともに、各段階で公開しながら透明性をもって信頼を回復することが重要で時間がかかればかかるほどダメージは大きくなる」と話していました。