ドライバーの切り札?最新アプリで最適ルートが瞬時に!

注文した商品が希望した時間帯に届く便利な時代ですが、そのサービスを支える物流業界では、ドライバーの人手不足が課題になっています。決められた商品を、限られた時間でどれだけ効率的に運べるか。日々、時間に追われるドライバーたちが頼りにするアプリがあると聞き、取材を始めました。(名古屋放送局記者 玉田佳)
普通のカーナビのようだが…
3年前からこのアプリを導入しているという名古屋市の会社。夕食の材料となる食材を家庭に届けています。

近年はネットからの注文が増えたこともあり、配達ドライバーの人手不足が続いているということです。
多い日には1人で80軒ほど回ることもあるんだそう。
多い日には1人で80軒ほど回ることもあるんだそう。

そんな忙しいドライバーたちが頼りにしているのがこのアプリ。
1人での配達が3日目だという新人ドライバーさんの運転席を見せてもらうと、一見、普通のカーナビか地図アプリのような画面が。
1人での配達が3日目だという新人ドライバーさんの運転席を見せてもらうと、一見、普通のカーナビか地図アプリのような画面が。

でもドライバーの方は「秘密兵器のような存在です」と話し、とても信頼を寄せている様子。
一体、どんな機能を持つアプリなのでしょうか?
一体、どんな機能を持つアプリなのでしょうか?
その日の配送計画が一瞬で!
アプリを開発したのは、名古屋市に本社を置くベンチャー企業です。
社長の松下健さんは30歳。名古屋大学でAI=人工知能を活用したアルゴリズムの研究に取り組み、在学中に起業しました。
きっかけは、物流業界で人手不足や働き方改革が課題になっているのを知ったこと。複雑な計算を瞬時にこなすことができるAIのアルゴリズムが、物流業界の課題解決に役立てられるのではないかと考えたといいます。
社長の松下健さんは30歳。名古屋大学でAI=人工知能を活用したアルゴリズムの研究に取り組み、在学中に起業しました。
きっかけは、物流業界で人手不足や働き方改革が課題になっているのを知ったこと。複雑な計算を瞬時にこなすことができるAIのアルゴリズムが、物流業界の課題解決に役立てられるのではないかと考えたといいます。

松下社長
「物流でも絶対にコンピューターが得意とする分野があるはずだというのを信じてやみませんでした。おそらく今後も“勘・コツ・経験”が残るエリアと、コンピューターに任せたほうがいいエリアが必ずあり、ここに可能性があると考えました」
「物流でも絶対にコンピューターが得意とする分野があるはずだというのを信じてやみませんでした。おそらく今後も“勘・コツ・経験”が残るエリアと、コンピューターに任せたほうがいいエリアが必ずあり、ここに可能性があると考えました」
この会社が開発したのは、いわゆる「ラストワンマイル」と呼ばれる、配達先までの最後の区間の配送を効率化するためのアプリです。
配送ルートを作る人がまず行うのがその日の配達先の登録です。
配送ルートを作る人がまず行うのがその日の配達先の登録です。

配達先の住所に加えて、どの荷物をどの時間帯に届けるのかや、荷物の個数などをエクセルデータにまとめ、アプリに取り込みます。
そして、ドライバーごとの出発・帰着の場所や休憩時間を設定し、計算を始めると、AIが無数の組み合わせの中から最も効率的なルートを自動で導き出してくれるのです。
そして、ドライバーごとの出発・帰着の場所や休憩時間を設定し、計算を始めると、AIが無数の組み合わせの中から最も効率的なルートを自動で導き出してくれるのです。

完成したのがこちらのルート。ドライバーごとにルートが色分けされ、配送順も示されています。

取材で訪れた際のシミュレーションでは、50個の荷物を4人のドライバーで手分けして運ぶ計画が、計算開始からわずか1分で完成しました。
会社によると、配達業務を行う事業者の中には、事前に配送計画を作るために多くの時間がかかり、業務の負担になっているケースが少なくないといいます。
アプリを導入したある運送会社では、これまで地図を見ながら毎日2時間かけて配送ルートを作っていましたが、大幅に時間が短縮されたということです。
会社によると、配達業務を行う事業者の中には、事前に配送計画を作るために多くの時間がかかり、業務の負担になっているケースが少なくないといいます。
アプリを導入したある運送会社では、これまで地図を見ながら毎日2時間かけて配送ルートを作っていましたが、大幅に時間が短縮されたということです。
計画がずれない!
さらに、配達にかかる時間を正確に予測できるのも特徴です。
配達の現場では事前の計画どおりに進まないことがたくさんあります。
例えば道路の渋滞で目的地に着くまでに時間がかかってしまった…。
配達の現場では事前の計画どおりに進まないことがたくさんあります。
例えば道路の渋滞で目的地に着くまでに時間がかかってしまった…。

しかし、このアプリでは移動や配達にかかる時間が秒単位で表示されています。しかもそれが大きくずれないというんです。
いったいどうやっているのか?
カーナビにもあるような渋滞予測はもちろん加味されていますが、集合住宅への配達では荷物の個数に応じて所要時間が調整されます。
さらに街中を走る「ラストワンマイル」の配達ドライバーならではの悩みにこたえる機能も。
いったいどうやっているのか?
カーナビにもあるような渋滞予測はもちろん加味されていますが、集合住宅への配達では荷物の個数に応じて所要時間が調整されます。
さらに街中を走る「ラストワンマイル」の配達ドライバーならではの悩みにこたえる機能も。

例えばみなさん、こんな経験はないでしょうか。
カーナビに目的地を入力したときにピンが刺さるのは敷地の中心。このため駐車場の入口からは離れた「目的地周辺」で案内が終了してしまい、入口に回るのに余計な時間がかかってしまった…。
あるいは、カーナビに従って運転し、目的地に到着したら「裏口」や「搬入口」だった…。
1日に何十か所もの配達を担うドライバーにとって、こうした時間のロスを防ぐことは死活問題です。
カーナビに目的地を入力したときにピンが刺さるのは敷地の中心。このため駐車場の入口からは離れた「目的地周辺」で案内が終了してしまい、入口に回るのに余計な時間がかかってしまった…。
あるいは、カーナビに従って運転し、目的地に到着したら「裏口」や「搬入口」だった…。
1日に何十か所もの配達を担うドライバーにとって、こうした時間のロスを防ぐことは死活問題です。

このアプリでは、番地だけではなく、緯度や経度のレベルで目的地を登録できるため、あらかじめ車を止めやすい場所を設定しておけば想定外の時間のロスを防ぐこともできます。
アプリを導入した大手物流企業からは「丸1日かけて数十件の配達を終えた段階で、事前の計画との誤差が数分に収まった」という報告も寄せられているということです。
こうしたこだわりは、会社の技術者自らが現場へのヒアリングで得た意見を反映したもの。
開発当初は「実用性がない」として、なかなか物流企業に受け入れてもらえなかったことから、現場の声をAIに落とし込む作業を積み重ねてきたのだといいます。
アプリを導入した大手物流企業からは「丸1日かけて数十件の配達を終えた段階で、事前の計画との誤差が数分に収まった」という報告も寄せられているということです。
こうしたこだわりは、会社の技術者自らが現場へのヒアリングで得た意見を反映したもの。
開発当初は「実用性がない」として、なかなか物流企業に受け入れてもらえなかったことから、現場の声をAIに落とし込む作業を積み重ねてきたのだといいます。
配達×AI 業界に広がるか
冒頭で紹介した食材配達サービスの会社。アプリを導入して、社内で代々引き継がれてきたルートを見直した結果、1日の配達時間が最大で30分短縮されました。

さらに、新人ドライバーはルートを覚える必要があるため、これまでは研修に2週間をかけていましたが、アプリを活用したことで期間が3日に短縮できたケースもあったということです。
この会社の営業所長は「限りある時間をどれだけ捻出できるかが一番効果が出るところだと思う。一軒一軒、間違いなく早く届けるために活用していきたい」と話していました。
これまでに、このアプリを導入した企業はおよそ160社。
トラックドライバーの人手不足や労働環境の改善が求められる中、社長の松下さんはさらなる需要拡大を見込み、実用性に磨きをかけていきたいと話します。
この会社の営業所長は「限りある時間をどれだけ捻出できるかが一番効果が出るところだと思う。一軒一軒、間違いなく早く届けるために活用していきたい」と話していました。
これまでに、このアプリを導入した企業はおよそ160社。
トラックドライバーの人手不足や労働環境の改善が求められる中、社長の松下さんはさらなる需要拡大を見込み、実用性に磨きをかけていきたいと話します。

松下社長
「おそらく国内、世界でも本当にマニアックにラストワンマイルの配送のことだけを毎日考えて、どうすればアルゴリズムがよくなるか、どうすれば現場に受け入れられるかを考えいてる会社はないと思います。お客さんの要望を聞いてそれをひたすら改善し、フィードバックをもらって改善することを繰り返し、名古屋から世界を代表する、次の日本経済を支える会社になっていきたい」
「おそらく国内、世界でも本当にマニアックにラストワンマイルの配送のことだけを毎日考えて、どうすればアルゴリズムがよくなるか、どうすれば現場に受け入れられるかを考えいてる会社はないと思います。お客さんの要望を聞いてそれをひたすら改善し、フィードバックをもらって改善することを繰り返し、名古屋から世界を代表する、次の日本経済を支える会社になっていきたい」

取材では、コンピューターの可能性を信じる松下社長が、何度も“現場力”の大切さを語る姿が印象的でした。
AIはラストワンマイルの配達をどこまで改革するのか。今後も注目していきます。
AIはラストワンマイルの配達をどこまで改革するのか。今後も注目していきます。

名古屋放送局記者
玉田 佳
2017年入局
長崎局を経て2022年から現所属
経済取材を担当
玉田 佳
2017年入局
長崎局を経て2022年から現所属
経済取材を担当