遊漁船と衝突か “三浦半島沖 クジラの交差点のようなところ”

7日朝、神奈川県三浦市沖の海で、遊漁船から「クジラのようなものと衝突した」と通報があり、消防によりますと船に乗っていた6人が軽いけがをしたということです。海上保安部などが詳しい状況を調べています。

横須賀海上保安部や消防によりますと、7日午前6時半ごろ、神奈川県三浦市沖の海で、遊漁船の船長から「クジラと思われる障害物と衝突し、けがをした」と消防に通報がありました。

この事故で、船に乗っていた40代から70代の男性6人が顔や腰などに軽いけがをし、病院に搬送されました。

船に浸水などの被害はなく、すでに港に戻りました。

船は、7日午前6時ごろ、イカ釣りのために三浦市の間口漁港を出発し、船長と釣り人の合わせて16人が乗っていたということです。

海上保安部によりますと、クジラを直接見た人はいませんが、船に乗っていた人が「下から突き上げるような衝撃を感じた」と話していて、船を調べた結果、左舷の船首の底に長さ30センチメートルの亀裂が見つかったということです。

現場は、三浦市の南の沖合13キロほどの海上です。

専門家「3月はクジラ増える時期」

クジラの生態に詳しい専門家は、今回の衝突が起きた海域ではクジラの目撃情報が多いとして、周辺を航行する際には注意が必要だと指摘しています。

日本鯨類研究所の加藤秀弘顧問は、今回の衝突が起きた神奈川県三浦市沖について「三浦半島の先は、クジラの交差点のようなところで、目視の頻度が多い。船にとっていちばんの脅威はマッコウクジラで、大きいものだと17メートルくらいになる。3月はマッコウクジラが増えてくる時期だ」と述べ、周辺を航行する際には注意が必要だと指摘しています。

そのうえで「今回の遊漁船がどういう状態だったかはわからないが、一般的にクジラは大変耳がいいので、船のエンジン音を察知して避けてくれる特性がある。一方で、雑音が少ないヨットや水中翼船のような高速船は感知しにくい。停泊していてもエンジンを止めないなど、音を出すようにすれば、100%の保障はないがリスクは減らすことができる」と話しています。

船舶とクジラの衝突事故はこれまでも

航行中の船舶がクジラや、クジラとみられるものに衝突する事故はたびたび起きています。

国の運輸安全委員会の事故調査報告書などによりますと、4年前の2019年3月には、新潟県の佐渡沖でジェット高速船がクジラの可能性がある物体に衝突し、乗客乗員合わせて109人がけがをする事故がありました。

また、2017年2月には長崎県対馬市の沖合で、高速船がクジラに衝突し、乗客9人がけがをしました。

このほか、2016年2月には伊豆大島の沖合で、高速船がクジラのような生き物と衝突し船の一部が壊れて航行できなくなりました。