出入国在留管理庁は、法改正の目的について、不法滞在などで国外退去処分が確定しても出国を拒む外国人が、年間およそ3000人で推移し、施設での収容が長期化していることを解消するためだと説明しています。
特に現在の法律では、難民認定の手続き中は国外への強制送還が一律に停止されるため、入管庁としては送還を避けるためとみている難民申請が繰り返され、難民認定の審査処理の長期化などにより、本来、ひごされるべき外国人の救済が困難になっているとしています。
こうした問題を解消するため、おととしの通常国会に提出された旧法案には、
▽難民申請中は強制送還が停止される規定について、3回目の申請以降は、原則、適用しないこと。
▽退去するまでの間、施設に収容するとしていた原則を改め、入管が認めた「監理人」と呼ばれる支援者らのもとで生活することを認めること。
それに、
▽難民の認定基準を満たさないケースでも、紛争から逃れてきた人などを難民に準じて保護の対象とする新たな制度の創設などが盛り込まれました。
しかし、おととしの通常国会では、難民申請中でも3回目の申請以降は強制送還が可能となることに対して、野党側や、難民申請中の外国人、支援団体から反対の声が上がりました。
野党側は、
▽難民申請中でも3回目の申請以降は強制送還できる規定を削除することや、
▽収容期間の上限を設けることなど、10項目の修正案を示し、与野党で修正協議が行われてきました。
しかし、会期中のおととし3月、名古屋出入国在留管理局の施設で収容中のスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(33)が体調不良を訴えて亡くなると、入管側の対応が問題となります。
野党側が、ウィシュマさんが死亡した真相の解明が欠かせず、法案の採決に応じられないとしたことなどを踏まえ、政府・与党は成立を見送ったことで、廃案となりました。
政府はその後も再提出の機会をうかがい、内容の再検討を進めていましたが、去年はさらに時間が必要だとして提出が見送られ、今の国会に提出されることになりました。
外国人収容の在り方見直す出入国管理法などの改正案 閣議決定
外国人の収容の在り方を見直す出入国管理法などの改正案が、7日の閣議で決定されました。
おととし政府が提出した、外国人の収容のあり方を見直す出入国管理法などの改正案は、野党側が、改正内容が不適切だなどと批判し、収容施設での死亡事案も重なって廃案となりました。
この改正案について、政府は7日の閣議でおととしの内容の一部を修正したうえで決定しました。
今回の改正案でも、
▽難民申請中は強制送還が停止される規定について、申請を繰り返すことで送還を逃れようとするケースがあるとして、3回目の申請以降は、原則適用しないことや、
▽退去するまでの間、施設に収容するとしていた原則を改め、入管が認めた「監理人」と呼ばれる支援者らのもとで生活することを認めること、
それに
▽難民の認定基準を満たさないケースでも、紛争から逃れてきた人などを難民に準じて保護の対象とする新たな制度の創設など法案の大枠は維持するとしています。
一方で修正点として、
▽収容の長期化を可能な限り避けるため、収容を続けるべきか3か月ごとに検討する制度を新たに盛り込んだほか、
▽「監理人」に求めようとしていた生活状況などの定期的な報告義務をなくすなどとしています。
政府は、今の国会で成立を目指す方針です。
これまでの経緯

齋藤法相「修正すべき点は修正した」

齋藤法務大臣は閣議後の記者会見で「保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度とし、現行入管法下の課題を一体的に解決するものだ」と意義を強調しました。
その上で、「旧法案に対するさまざまな指摘を真摯(しんし)に受け止め、修正すべき点は修正した。特に、名古屋入管における収容者死亡事案などを受けて監理措置や仮放免といった収容に関する制度は適切な運用を可能とすべく大きく修正を行った。法案の必要性を幅広く理解してもらえるよう説明を尽くしたい」と述べました。
その上で、「旧法案に対するさまざまな指摘を真摯(しんし)に受け止め、修正すべき点は修正した。特に、名古屋入管における収容者死亡事案などを受けて監理措置や仮放免といった収容に関する制度は適切な運用を可能とすべく大きく修正を行った。法案の必要性を幅広く理解してもらえるよう説明を尽くしたい」と述べました。