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コオロギが食用って…なぜ?

日本では少子化が課題となる一方で、世界の人口は80億人を超え、急激な増加が続いています。

将来の食糧危機に備えて、選択肢の1つとして注目されているのが「コオロギ」です。

日本でもコオロギの食用に取り組む企業が増えていて、私たちの食べ物をどうするのか議論になっています。コオロギをめぐる現状を追いました。

(ネットワーク報道部 記者 松本裕樹 野田麻里子 大阪放送局 小野明良)

広がるコオロギビジネス フンや抜け殻も…

3月2日。「世界農業遺産」に認定されている徳島県西部の山間地の畑で、ある実証実験がメディアに公開されました。

地元の新聞社やテレビ局だけでなく大阪からも報道機関が訪れるなか、農家が収穫していたのが青々と育ったホウレンソウ…
実は堆肥で使われているのは、コオロギのフンや抜け殻です。

徳島県で食用コオロギの養殖と食品開発・販売を行うベンチャー企業と地元農家が循環型農業の一環として取り組んできました。

堆肥の原料となるコオロギのフンや抜け殻は乾燥しているため、臭いがあまりせず、農家も管理しやすいメリットがあるといいます。
4年前に設立され、現在、徳島県内の2つの生産拠点で数百万匹のコオロギを飼育しているこの会社。

食用コオロギを粉末状にした「コオロギパウダー」を年間5トンから6トンほど生産しています。
コオロギパウダーを使ったせんべいやクッキー、さらにカレーやプロテインバーなどの商品を手がけてきました。

コオロギを粉末状にする前には、水や餌を与えずお腹の中をきれいにしたうえで、特殊な殺菌処理を施すなど、衛生管理は徹底しているといいます。
株式会社グリラス 広報 川原琢聖さん
「コオロギはライフサイクルがほかの家畜より短く大量生産もできるなどのメリットがあり、私たちは将来の食糧危機を見据えた際の選択肢の1つとして捉えています。フンなどを活用した堆肥もまだ実証実験の段階ですが、循環型農業としての可能性を模索していきたいです」

「コオロギ」への期待と波紋

2013年には昆虫食をめぐって、FAO=国連食糧農業機関が家畜の飼育と比べて環境への負荷が少なく、栄養価も高いことから、食糧問題への解決策として有用だとする報告書を公表しました。

日本でも、タンパク質やミネラル、ビタミンなどが豊富だとして、コオロギの「食用」への関心が高まりました。

一方で、ことし2月半ば以降、コオロギの食用をめぐってSNSで議論が起きます。
コオロギについてのツイート件数は、3月1日にはおよそ30万件近くにのぼりました。
「コオロギパウダー」を使って調理実習を行った高校や、コオロギを使った商品を出している企業への問い合わせが相次ぎました。

波紋は、コオロギとは関係ない企業にも“飛び火”します。
「なぜコオロギを使うのか」
「使わないでほしい」
富山県の老舗の和菓子店には、2月下旬、突然店にメールが届きました。
SNSを調べたところ、「昆虫食に取り組む企業」を独自にとりまとめたという企業名入りのマップに載せられていたのです。

5年ほど前から、蚕沙(さんしゃ)と呼ばれる漢方にも使われる「蚕のフン」を粉末にして生地に練り込んだお菓子を販売していたこの企業。

養蚕産業が盛んだった地元ならではのおみやげとして好評だっただけに、複雑な思いを感じたといいます。
和菓子屋の店主
「マップを作った人に連絡を取り削除してもらいましたが、拡散された情報をもとに誤解したままの人もいるのかなと思うと複雑な気持ちです」

安全性は大丈夫?

食用のコオロギの安全性はどうなのでしょうか。

食の安全に詳しい科学ジャーナリストの松永和紀さんは、野生のコオロギと食用として飼育するコオロギは、分けて考えたほうがいいと指摘します。
科学ジャーナリスト 松永和紀さん
「食用のコオロギは事業者が適切な餌と環境で安全管理に責任を持って育てているもので、野生のものとは別です。欧州食品安全機関などの見解を読むかぎり、実は注意すべき点はふだん私たちが食べているほかの食品と共通していて、ことさらコオロギだから、昆虫食だから、ということではないのではないかと思います」
そのうえで、甲殻類アレルギーへの注意が必要だと言います。
「消費者が気をつけるべきなのは、絶対に生ではなく加熱したものを食べること。また多くの科学者が指摘するように、甲殻類アレルギーのある人は避けるべきだということがポイントになるのではないかと考えています」

コオロギ食 支援や法制度は?

コオロギの食用についての支援や法制度はどうなっているのでしょうか?

農林水産省によりますと、コオロギの養殖に特化した支援制度などはないといいます。

事業者が定めた経営計画が承認されれば、ほかの農家と同じように認定農業者として認められ、機械の導入に対する補助金や、低金利融資などの支援を受けられるようになるということです。
農林水産省 担当者
「世界的な食糧危機が進む中で、コオロギは将来の選択肢の1つにはなりうるかもしれないが、現状ではコオロギに特化した支援をしている訳ではありません」

模索が続く昆虫食の現場

食糧危機に備え模索が続く昆虫食をめぐる現場。

民間や大学などが連携し、新たな取り組みも始まっています。

大阪府立環境農林水産総合研究所には、昆虫の産業利用への知見を集めようと、3年前、民間企業や大学とともに「昆虫ビジネス研究開発プラットフォ―ム」が設立されました。

今では産学官あわせて124団体が加盟。

人間の食料としてや、養殖魚や豚などの飼料として、コオロギの可能性を模索しているそうです。

しかし、コオロギなどの昆虫を、食品や飼料のために生産する際、安全性の基準などを定めた法律は今のところありません。

そこで去年7月、コオロギ生産の自主的なガイドラインを設けました。
ガイドラインでは、コオロギの餌や生産施設の環境、衛生管理などについて、農林水産省のチェックを受けた上で指針をまとめたといいます。
昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム 藤谷泰裕 プロデューサー補佐
「コオロギの生産は、海外で先行事例があり、魚の餌として飼育技術がすでにあったため、新規参入のハードルが低いと思います。だからといって、国が法律を制定するほどは市場が拡大していないんです。食用コオロギに関わる事業者たちとともに、まずは自分たちで襟元を正していこうということでガイドラインを設けました」

将来の食糧危機考えるきっかけに…

私たちの口に入る食べ物。
好き嫌いがでるのは当然のことだと思います。

将来の食糧危機に備え、培養肉や代替肉の研究も進んでいます。

将来の食べ物、皆さんは何を食べたいですか。
そのためにどうしようと思いますか。

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