入学シーズン 制服・ランドセル値上がり リユースやサブスクも

「こんなに一気に値上げが進む状況は初めて。申し訳ない気持ちです」

去年、やむをえず制服を値上げした販売店社長のことばです。
卒業・入学シーズンを迎える子どもたちの保護者の皆さんにも物価高の影響が及ぶ中で、選択肢として注目されているのが制服の再利用「リユース」や、定額で好きなランドセルを選べる「サブスクリプション」です。

学生服は値上がりが続く

学生服はこの10年、値上がりを続けています。

総務省の「小売物価統計調査」を基に算出したところ、全国の都道府県での学生服の平均価格は、10年前の2013年1月時点で以下の価格でした。
▽男子用 3万407円
▽女子用 2万9055円

その後、価格上昇傾向が続き、ことし1月時点では、
▽男子用 3万6976円 10年前に比べて+21.6%
▽女子用 3万5774円 10年前に比べて+23.1%

男女とも、この10年で20%以上値上がりしていました。

制服専門の販売店「価格を上げざるをえない 申し訳ない気持ち」

全国に5店舗を展開する制服専門の販売店は、ブレザーやスカート、カーディガンなどおよそ10万点の商品を取り扱っています。

店によりますと、新型コロナや円安、ロシアによる軍事侵攻などの影響で、原材料費や輸送費が高騰していて、この3年間でブレザー1着に使うウール生地の価格がおよそ700円上がったほか、輸入の際に使うコンテナ1つ当たりの代金もおよそ15万円上がったということです。

店では、海外での生産拠点を見直すなどコスト削減を続けてきましたが、企業努力だけでは賄いきれず、去年9月から一部の商品の販売価格をおよそ5%から15%値上げしたということです。
娘の制服を購入するため、店を訪れた母親は「春先から電気料金が値上がりすると聞くのでそれが少し怖いです。本人が気に入ることがいちばんなので、多少高くてもしかたないと思います」と話していました。
制服販売店を運営する相浦孝行社長は「こんなに一気に値上げが進む状況は初めてです。できるかぎり手ごろな価格で届けたいと思っていましたが、価格を上げざるをえない状況になってしまい残念で申し訳ない気持ちです。生産にかかるコストを削減するために努力していきたい」と話していました。

「リユース」の店では約2000点を販売

学生服の価格が上がる中、SDGsの観点からも注目されているのが「リユース」です。

千葉県市川市にあるリユース店では、市内の中学校や高校の卒業生から買い取った制服や体操着など、およそ2000点を販売しています。

買い取ったあと、ほつれを直したりクリーニングをしたりするということで、制服の場合、価格は新品の3分の1から半額ほどに抑えられ、例えば、新品だとおよそ2万円のブレザーは7700円で販売しています。

店によりますと、ことしは、去年の同じ時期に比べて来店者数は1.7倍、売り上げは約2倍に増えているということです。
中学3年生の娘と訪れた40代の母親は「8人きょうだいなので、すごく助かります。コロナ禍で、学校に通っていた日数がこれまでより少なかったり、ジャージで登校する日も多かったりすると聞いていて、きれいな商品が多いと感じました」と話していました。

娘は「新品じゃなくてもきれいですし、リユース品でも気にしないです。コロナ禍であまり使われていない制服はリサイクルした方がいいと思います」と話していました。
店を経営する石垣瑠美さんは「自分の子育ての経験から学校生活にかかる費用を少しでも抑えられる仕組みが必要だと思いました。新品の価格が高いことに驚いて、リユース品を検討する人もいます。教育費がかさむ中、制服の値段も上がっているのが来店者が増えている理由の1つだと思います」と話していました。

ランドセルの「サブスク」も

ランドセルも値上がりが続いています。

かばんメーカーでつくる「日本鞄協会ランドセル工業会」が行ったアンケートによりますと、4年前の2019年4月に入学した児童の購入価格は平均で5万2300円でしたが、去年、2022年4月に入学した児童の購入価格は平均で5万6425円でした。

こうした中、SNSなどで話題になっているのが、定額で好きなランドセルを選べるいわゆる「サブスクリプション」です。
SNSには「長く大切に使うことを教えるのも大事では」という意見がある一方「好きな色は変わるし、高学年になると使わなくなるからいいかも」といった意見もありました。
このサービスを始めた大阪市内のランドセルメーカーでは、1か月単位の契約の場合、プランに応じて990円から3850円で、50種類から250種類のランドセルを選べます。

1か月から3か月に1回、別のランドセルに交換でき、利用中に気に入ればそのまま買い取れるほか、3年間同じプランを継続して利用すればそれ以上費用はかからず、プレゼントされるということです。

郵送で全国からの注文にも対応していて、サービスを始めた2月15日以降、約2週間で200件ほどの申し込みがあり、その約6割は新1年生ですが、2つ目のランドセルとして選ぶ利用者もいるということです。
ランドセルメーカーの庄山理恵専務取締役は「サブスクリプションなら子どもの成長や好みなど、環境に合わせてそのときにいちばん好きなランドセルを選べるので、購入する際の選択肢の1つになればいいと思う」と話していました。