【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる3日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

クアッド外相会合“国際法に従ったウクライナの平和が必要”

日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組み=クアッドの外相会合が行われました。会合は、インドで開かれたG20=主要20か国の外相会合に続いて、3日、およそ1時間行われ、林外務大臣のほか、アメリカのブリンケン国務長官、オーストラリアのウォン外相、インドのジャイシャンカル外相が出席しました。

この中で林大臣は、ウクライナ情勢などをめぐり「いかなる場所でも、力による一方的な現状変更を許さず、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くことが重要だ」と述べました。

そして4人の外相は、国際法に従ったウクライナの恒久的な平和が必要だとして、紛争の平和的な解決を尊重するとともに、核兵器の使用や威嚇は許されないという認識で一致しました。

そのうえで、ウクライナ情勢をめぐり、国連安全保障理事会の機能不全が指摘されていることを踏まえ、安保理改革に向けた政府間の交渉に積極的に関与することを確認しました。

日米 中国など念頭 “ロシアへ軍事支援させない” 認識を共有

林外務大臣とアメリカのブリンケン国務長官の会談は、日本時間の3日午後、ニューデリーでおよそ20分間行われました。

両外相は、ロシアによるウクライナ侵攻から1年が過ぎるなか、国際社会の結束を維持しながらロシア制裁とウクライナ支援を継続していくことで一致しました。

また、中国などを念頭に、第三国がロシアに軍事的な支援を行わないようにすることが重要だという認識を共有しました。

さらに、ウクライナ情勢をめぐり、中立的な立場を取る国が少なくないとされる「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国への働きかけや支援を行うことの重要性を確認しました。

一方、中国をめぐっては沖縄県の尖閣諸島周辺で当局の船が領海侵入を繰り返していることなどを念頭に、さまざまな課題に緊密に連携して対応することで一致しました。

ロシア“ウクライナから武装集団侵入” 3日夜に安保会議

ロシアは、西部のウクライナとの国境地域に武装集団が侵入して死者が出たと発表し、ウクライナ側を一方的に非難しました。プーチン大統領は「われわれが粉砕する」と報復を示唆していて、日本時間の3日夜にも開かれる安全保障会議でどのような対応を打ち出すかが焦点です。

ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁は2日、ウクライナと国境を接する西部のブリャンスク州に、ウクライナから武装集団が侵入し住民が殺されたと発表しました。地元の知事は、SNSで住民2人が死亡したと主張しています。

プーチン大統領は2日、オンラインでの会議でウクライナ側によるものだとして一方的に非難し、「ネオナチの連中がこうした暴力を起こしている。彼らは何も成功できないし、われわれが粉砕する」と述べ、報復を示唆しました。

プーチン大統領は3日、日本時間の3日夜にも安全保障会議を開催する予定で、どのような対応を打ち出すかが焦点です。

これに対し、ウクライナ軍側として戦うロシア人の部隊「ロシア義勇軍」を名乗る集団がSNSで関与を主張しました。

また、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記はツイッターで、「ロシアでは、反ファシストの民兵組織が活動している」と投稿しました。

米シンクタンク「ロシア軍の死傷者数は20万人から25万人」

アメリカのシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所はロシアによる軍事侵攻から1年に合わせて、ロシア軍の死傷者数などの分析を先月公開しました。

ロシア側の軍の兵士や民間軍事会社の戦闘員などの死者数を6万人から7万人と推定し、第2次世界大戦以降、旧ソビエトやロシアが行ったすべての軍事作戦の戦死者数を合わせた数よりも上回ると分析しています。

さらに、死傷者数は20万人から25万人と推定しています。

ロシア側の死傷者数については先月、イギリス国防省も合わせて17万5000人から20万人に上るとみられるという見方を示すなど、甚大な被害が出ている可能性が指摘されていますが、ロシア国防省は去年9月に兵士の死者は5937人と発表して以降、正確な実態は明らかにしていません。

ロシア 日本海で巡航ミサイル発射と発表 日米けん制のねらいか

ロシア国防省は、演習の一環として、日本海で太平洋艦隊のディーゼル型の潜水艦「ペトロパブロフスク・カムチャツキー」が巡航ミサイル「カリブル」を発射したと、3日、発表しました。

公開された映像では、潜水艦は極東の中心都市ウラジオストクを出航し、合図があったあと、海上からミサイルが発射される様子が映し出されています。

ロシア国防省はミサイルは、1000キロ以上離れた極東ハバロフスク地方の演習場にある標的に命中したとしています。

ロシアは、この「カリブル」の発射演習を繰り返し行っていて、ウクライナ侵攻ではウクライナの重要インフラなどへの攻撃にも使っています。

演習は、ウクライナ侵攻などをめぐり対立し、アジア太平洋地域で軍事力を強めているとみているアメリカや、ロシアへ制裁を科す日本などを、けん制するねらいもあるものとみられます。

日本政府 ウクライナに224億円余の無償資金

日本政府はウクライナの復旧・復興に向けた支援を強化するとして、新たにインフラ整備のための機材の供与など、合わせて224億4000万円の無償資金協力を決めました。

具体的には、地雷や不発弾の処理や、ロシアによる攻撃で破壊された電力施設の整備、それにオンライン教育の環境整備などに必要な機材を供与するとしています。

また、ウクライナの基幹産業である農業の回復に向け、とうもろこしなどの種子を提供する予定です。

財源は、今年度の補正予算を充てるとしています。

外務省は「ウクライナからは、将来の国の再建に向けて今から取り組みたいと言われており、日本らしさを生かしながら支援していきたい」としています。

東部ドネツク州バフムトで激しい戦闘

ウクライナ軍の参謀本部は2日、東部ドネツク州のバフムトの戦況について「ロシアが進軍し、敵部隊が市街地を襲撃している」と発表し激しい戦闘が続いているとみられます。

米国務長官とロシア外相が軍事侵攻後初めて対面で接触 G20会合

アメリカ国務省の高官は2日、記者団に対し、ブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相がG20の外相会合が行われていたインドでおよそ10分間、接触したと明らかにしました。

この中でブリンケン長官はウクライナへの支援を継続するアメリカの立場を強調したほか、ロシアとアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行の停止を考え直すよう求めたということです。

ブリンケン長官はG20の外相会合のあと記者会見を行い、ロシアによる核軍縮条約の履行の停止について「無責任だ」と批判した上で、「互いに条約を順守することは両国の利益だ」と強調しました。

国務省によりますと、米ロの外相が対面で接触するのは、去年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、初めてだということです。

一方、ロシア外務省の報道官は地元の国営メディアに対し「ブリンケン長官がラブロフ外相にG20のセッションの移動中に接触を求めた」と述べ、アメリカからの申し出に応じたものだと主張した上で交渉などはなかったとしています。

日本で寄付されたカイロがウクライナに到着

ウクライナではロシアによる攻撃が続き、今なお停電が頻発して暖房が使えない地域もある中、日本全国から寄付された使い捨てカイロが、2日、首都キーウに到着しました。

ウクライナに到着した使い捨てカイロは、山形市と福島市に拠点を置く市民団体、『ウクライナに「使い捨てカイロ」を送ろう』会の呼びかけで、日本全国から寄付されたものです。
ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻の影響で今なお停電が頻発して暖房が使えない地域もあり、そうした地域の人たちに少しでも暖まってもらおうと団体が呼びかけたところ、あわせて31万個あまりが寄付されたということです。

今回はそのうちおよそ3万5000個がポーランドを経由して首都キーウに到着し、2日、現地の慈善団体の関係者などがトラックで届いた荷物を受け取っていました。

今後、現地の慈善団体が激しい戦闘が続くウクライナの東部や南部にいる市民や兵士に届けるということです。
ウクライナの慈善団体の代表、ドミトロ・ステフニエンコさん(50)は「冬に暖をとることができる使い捨てカイロは、市民だけでなく兵士も含めて多くの人を救ってくれます。日本人にはとても感謝しています」と話していました。

ロシア “ウクライナから武装集団が侵入して住民を殺害”

ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁は2日、ウクライナと国境を接するロシア西部のブリャンスク州にウクライナから武装集団が侵入し、住民が殺されたと発表しました。

地元の知事は、SNSで住民2人が死亡したなどと主張しています。
これについてプーチン大統領は2日、オンラインでの会議で「きょう新たなテロ行為があり彼らはロシア領土に侵入し市民に発砲した」と述べ、ウクライナ側によるものだと主張して激しく非難しました。

一方、ウクライナのポドリャク大統領府顧問はツイッターに「工作員が侵入したとするロシアの主張は、典型的な挑発行為だ」などと書き込みウクライナ側の関与を否定しています。

またこれに関連して、ウクライナ軍側として戦うロシア人の部隊「ロシア義勇軍」を名乗る集団がSNSに動画を投稿し、プーチン政権と戦うために国境を越えたとして関与を主張しています。

ロシアのプーチン大統領は、2日に予定していた地方視察を中止したということで、3日に予定されている安全保障会議で、今後の対応が協議されるとみられます。

軍縮会議で各国の代表が退出 ロシアへの抗議の意思を示すため

ジュネーブで開かれている軍縮会議に2日、ロシアのリャプコフ外務次官が出席し、ロシアがアメリカとの核軍縮条約「新START」の履行を停止したことについて、「現在の最も深刻な脅威は、アメリカや同盟国がウクライナや周辺での紛争をあおろうとしていることだ。ウクライナを支援するアメリカが、ロシアの戦略施設の安全性を調査しようとしたため、条約をめぐる状況は悪化した」と述べ、ウクライナを支援しロシアの核関連施設への査察を求めるアメリカに、責任があると主張しました。
そのうえで、「アメリカは他の西側諸国とともにロシアを戦略的に敗北させようとしている。アメリカや同盟国の行動は、ヨーロッパのほかアジア太平洋地域にも深刻な混乱を引き起こしうる」と述べ、NATO諸国によるウクライナへの支援をけん制しました。
このリャプコフ外務次官の発言の間、欧米各国や日本などの代表はウクライナの代表とともに、ロシアへの抗議の意思を示すため議場から退出しました。

議場を出たイギリスの大使は、「自由のために戦っているウクライナの人々との連帯を示したい。彼らの戦いは私たちの戦いもである」と話していました。

G20外相会合閉幕 欧米とロシアなど隔たり大きく

インドで開かれていたG20=主要20か国の外相会合は、2日閉幕しましたが、ウクライナ情勢をめぐって欧米とロシアなどの間で意見の隔たりは大きく、G20として課題が残る形となりました。

インドの首都ニューデリーで2日間にわたって開かれていた、G20の外相会合には、アメリカのブリンケン国務長官やロシアのラブロフ外相、それに中国の秦剛外相などが出席しました。

2日目の全体討議では、ウクライナ情勢が主要な議題となり、各国が世界的なエネルギーや食料価格の高騰などへの対応について意見を交わしました。

閉幕後、議長国を務めたインドのジャイシャンカル外相は「各国の立場が異なる中、最大限努力したが、隔たりを埋めることはできなかった」と述べ、共同声明の採択を見送ったことを明らかにしました。

また、会合の期間中、アメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が軍事侵攻が始まって以降初めて、対面で接触し、アメリカ側はウクライナへの支援を続ける立場を強調しました。
一方、中国の秦外相はロシアのラブロフ外相と会談し、ウクライナに軍事支援を続けロシアに制裁を科す欧米などをけん制しました。

ロシアによる軍事侵攻が始まってから1年がたつなか、会合では立場の異なる各国が一致点を見いだせるかが焦点となっていましたが、欧米とロシアなどの間で意見の隔たりは大きく、G20として課題が残る形となりました。