G20外相会合閉幕 共同声明は見送り 各国の対立が一段と鮮明に

インドで開かれていたG20=主要20か国の外相会合は2日、閉幕しました。インドの外相は共同声明の採択を見送ったことを明らかにし、ウクライナ情勢を巡る各国の対立が一段と鮮明になりました。

インドの首都ニューデリーで2日間にわたって開かれていたG20の外相会合は2日に全体討議が行われ、アメリカのブリンケン国務長官やロシアのラブロフ外相、それに中国の秦剛外相などが対面で出席しました。

2日は、ウクライナ情勢を主要な議題に世界的なエネルギーや食料価格の高騰などへの対応について、各国が意見を交わしたあと閉幕しました。

閉幕後、会見したインドのジャイシャンカル外相は「各国の立場が異なる中、最大限努力したが、隔たりを埋めることはできなかった」と述べ、共同声明の採択を見送ったことを明らかにしました。

今回の会合では、G20として一致した対応を打ち出すことができるかどうかが焦点となっていましたが、ウクライナ情勢を巡る各国の対立が一段と鮮明になりました。

ロシア外相 欧米側の制裁を非難

ロシア国営メディアによりますと、ロシアのラブロフ外相はG20=主要20か国の外相会合の全体討議で「違法な制裁や世界貿易の自由への侵害などの試みをとめる必要がある」と主張して、ウクライナへの軍事侵攻をめぐってロシアに科された欧米側の制裁を非難しました。

また去年、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐって、国連とトルコの仲介で実現したロシアとウクライナによる合意について「ウクライナの穀物の大部分は、貧しい国ではなく、低い価格でヨーロッパに運ばれている」などと主張し、合意の履行が不十分だとして欧米側を非難しました。

この合意は今月18日に期限を迎えますが、ラブロフ外相は1日も、トルコのチャウシュオール外相との会談で合意の延長について「ロシア側の生産者の利益が考慮される場合にかぎり、可能になる」と主張していました。

ロシア側は、合意の延長に同意しない可能性も示唆していて欧米側やウクライナ側をけん制するねらいもあるとみられます。

中国外相 “和平交渉を促す”

G20=主要20か国の外相会合に、就任以来初めて参加した中国の秦剛外相は2日の全体討議で、ウクライナ情勢をめぐって対話と停戦を呼びかける中国の立場を改めて主張しました。

中国外務省によりますと、秦外相は、中国が2月24日に発表した「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題した文書に触れたうえで、「中国は一貫して平和の側に立ち、和平交渉を促す」と述べ、建設的な役割を果たしたいと強調したということです。

また、対立するアメリカを念頭に「国際的な問題は話し合いで決めるべきで、強権的な政治、ましてや陣営どうしの対抗をすべきではない」と述べけん制しました。そのうえで「一国主義や保護主義、経済的なつながりを切り離す『デカップリング』に反対する」と述べ、サプライチェーンを安定させ、多国間主義を強化し、世界の発展を促進すべきだと訴えました。

G20舞台に2国間会談活発

G20=主要20か国の外相会合の会場では2日、全体討議の合間に各国による2国間の会談も行われました。

このうち、アメリカのブリンケン国務長官は、議長国のインドやブラジル、それにオランダの外相と相次いで会談しました。

またロシアのラブロフ外相は、2月28日にニューデリーに入り、3月1日、インドとトルコの外相とそれぞれ会談したのに続いて、2日は、中国の秦剛外相と会談しました。

一方、中国の秦外相は、インドとドイツの外相と個別に会談をこなすなど、参加各国は2国間の会談を通じて、活発な外交を繰り広げました。

ただ、これまでのところ、アメリカのブリンケン国務長官がロシアや中国と会談したとの情報はなく、ウクライナ情勢をめぐる対立の根深さを印象づけています。

ロシア外相 中国との連携強化を強調

ロシアのラブロフ外相と中国の秦剛外相が2日、G20=主要20か国の外相会合が開かれたインドの首都ニューデリーで会談しました。

ロシア外務省の発表によりますと、会談でラブロフ外相は「両首脳が合意した経済、文化を含むあらゆる分野において継続して着実に連携が進んでいる」と述べ、両国の連携強化を強調しました。

そのうえで、両国の交流をさらに深めるため、定期的に会談を行うことを確認したとしています。

一方、中国側の発表によりますと、ウクライナ情勢をめぐって秦剛外相は、対話と停戦を呼びかける中国の立場を説明し、政治的な解決を支持すると強調したということです。

そのうえで秦外相は、「火に油を注ぐことや和平交渉を破壊すること、制裁や圧力に反対する」と述べ、ウクライナに軍事支援を続け、ロシアに制裁を科す欧米などをけん制しました。

これに対し、ラブロフ外相は中国の客観的かつ公正な立場、建設的な役割を称賛したということです。

中豪外相 関係改善に向け会談

G20=主要20か国の外相会合に参加しているオーストラリアのウォン外相は2日、中国の秦剛外相と会談しました。

会談の冒頭、ウォン外相は秦外相の就任を祝福したうえで「私たちは互いの違いを適切に認識することができれば、それぞれの国益を守りながら関係を発展させることができる」と述べました。

会談後、メディアの取材に応じたウォン外相は「貿易の障害となっているものを取り除くことが両国の利益となるということを伝えた」と述べ、中国がオーストラリアからの輸入品に関税を上乗せしている措置の撤廃に向け、対話を続けていく姿勢を改めて強調しました。

オーストラリア政府は、貿易問題などをめぐって冷え込んだ中国との関係の改善に取り組む姿勢を示していて、秦外相の就任後、初めてとなる外相会談を行うことで、対話を重視する姿勢を示すねらいがあるものとみられます。

米国務長官とロシア外相が短時間意見を交わす

アメリカ国務省の高官はG20=主要20か国の外相会合が行われていたインドの首都ニューデリーでブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相が短時間、意見を交わしたと記者団に明らかにしました。

詳しい内容は明らかになっていませんが、およそ10分間のやりとりの中で、ブリンケン長官はウクライナへの支援を継続するアメリカの立場を強調したということです。

一方、ロシア外務省の報道官はロシア国営メディアに対し「ブリンケン国務長官がラブロフ外相にG20のセッションの移動中に接触を求めた」と述べたうえで交渉などはなかったとしています。