鳥インフルエンザは渡り鳥によってウイルスが持ち込まれることで感染が広がりますが、今シーズンは早い時期から3つの系統のウイルスが国内各地に持ち込まれ、地域に生息する野鳥にも広がったことから、過去にないペースで発生が相次いでいるとみられています。
茨城県つくば市にある農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構は、今シーズン、養鶏場などで発生した鳥インフルエンザについて、最初に発生が確認された去年10月28日からことし1月中旬までに検出された60例のウイルスの遺伝子を解析しました。
その結果、検出されたウイルスは、いずれも高病原性の「H5型」の一種で、
▽3年前の2020年からおととしのシーズンにヨーロッパで検出されたもの、
▽おととしから去年のシーズンにヨーロッパで検出されたもの、
▽おととしに西シベリアや中国で検出されたものの、
合わせて3つの系統のウイルスが、日本国内に入り込んでいることが分かったということです。
それぞれのウイルスは、今シーズン国内で発生した当初から、北海道・東北から九州・沖縄までの広い範囲に入り込んでいて、複数の系統のウイルスが見つかった地域もあったということです。
そして、3つの系統のウイルスは、渡り鳥以外の国内にいる野鳥からも検出されているということです。
環境省によりますと、野鳥でも、去年9月25日から3月1日までにハシブトガラスやハヤブサなどで、「H5型」のウイルスへの感染が過去最多の199例確認されていて、研究グループは、渡り鳥に加えて地域に生息する野鳥でも広がっていることが、過去にないペースでの発生につながっているとみています。

鳥インフルエンザ 1500万羽超処分 最多シーズンの1.5倍に
鳥インフルエンザで処分されるニワトリなどの数は、今シーズンはすでに過去最多となっていますが、新たに福岡市の養鶏場で発生が確認され、1つのシーズンで初めて、合わせて1500万羽を超えました。処分されるニワトリの数は、これまでで最も多かった2020年からのシーズンの1.5倍となっています。
鳥インフルエンザは、日本で越冬する渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるとされ、例年、秋から春ごろにかけて発生しますが、今シーズンは去年10月28日に岡山県倉敷市と北海道厚真町で、これまでで最も早い時期に確認されたあと、過去にないペースで発生が相次いでいます。
2日、新たに福岡市の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が確認され、農林水産省によりますと、今シーズン処分されることになるニワトリなどの数は、合わせておよそ1502万羽となりました。
これまで、処分された数が最も多かったのは2020年の秋から2021年の春にかけてのシーズンの、およそ987万羽でしたが、今シーズンは、すでに1.5倍となっています。
また、これまでに発生がなかった山形県や沖縄県など、6つの県でも確認されるなど、発生箇所の数も25道県の77か所と過去最多となっています。
農林水産省は、全国各地で鳥インフルエンザが発生するリスクが高まっているとして、養鶏場などに対して消毒の実施など対策の徹底を呼びかけています。
3系統のウイルス 早期から野鳥にも広がり


農研機構人獣共通感染症研究領域の内田裕子グループ長は「渡り鳥によって持ち込まれたウイルスが国内の野鳥に広がり、環境中にウイルスが拡散したことで、養鶏場などでの感染機会が増え、大規模な発生につながっていると考えている。北に帰り始めている渡り鳥とともにウイルスも北に移動していくと考えられ、今後、北海道や東北では一層の注意が必要だ。昨シーズンは、5月まで発生があったことを踏まえて、引き続き警戒してほしい」と話しています。