こうしたことから、近く報告書を公表するとともに、文部科学省に対し、学校の中で、転落のおそれのある窓など、特に危険性の高い場所の緊急点検を行うことや、設備などの安全点検について従来の手法を見直すこと、そして、安全管理を行う教職員の勤務実態も踏まえて、外部人材の活用を促進するよう求めたいとしています。
消費者事故調の中川丈久委員長は「労働者よりも、学校での子どもの安全が確保されていないことが調査で明らかになった。教職員に丸投げするのではなく、社会全体で子どもの安全について見直していかないといけない」と話していました。
消費者事故調 子どもの学校事故防止の緊急点検 文科省に求める
校舎の窓からの転落や、倒れてきたゴールポストの下敷きになるなど、学校の施設や設備による子どもの死亡事故などを防ぐため、消費者庁の安全調査委員会、いわゆる「消費者事故調」は、近く取りまとめる報告書の内容を明らかにし、文部科学省に対して、全国の学校で危険性の高い場所の緊急点検を行うことなどを求めるとしています。
消費者事故調は、学校の施設や設備などが原因で、子どもが死亡したり大けがをしたりする事故が起きているとして、3年前から再発防止のための調査を進め、近く取りまとめる報告書の内容を3月1日、明らかにしました。
消費者事故調によりますと、去年3月までの10年間に小中学生合わせて9人が死亡していて、掃除中に窓際にあった本箱の上でバランスを崩し、校舎の2階から転落したケースなど、「窓からの転落」が半数を占めていたということです。
また、去年3月までの5年間に起きた、死亡にはいたらなかった事故合わせて103件を分析したところ、設備別では、ガラスで腕を切るなど「窓やドアなどのガラス」によるものが最も多く、全体の4分の1ほどに上ったということです。
一方、学校の施設や設備の安全性は、定期的に点検することが法律で定められていますが、消費者事故調が各学校で使っている点検表を調べたところ、協力が得られた合わせて300校余りの小中学校のうち、窓からの転落事故のリスクを十分に考慮していない学校が6割余りに上るなど、効果的な点検手法が確立されていないことが浮き彫りになったということです。

学校施設・設備が原因と考えられる事故例

学校の施設や設備が原因になったと考えられる事故は、これまで繰り返し起きています。
2017年には、福岡県の小学校でフットサルのゴールポストが倒れ、4年生の男子児童が下敷きになって死亡しました。
この事故では、ひもで固定するはずのゴールポストが固定されておらず、安全点検も適切に行われていませんでした。
2017年には、福岡県の小学校でフットサルのゴールポストが倒れ、4年生の男子児童が下敷きになって死亡しました。
この事故では、ひもで固定するはずのゴールポストが固定されておらず、安全点検も適切に行われていませんでした。

また、2021年には、宮城県の小学校で校庭に設置されていた木製の支柱が折れ、近くにいた6年生の児童2人にぶつかり、1人が死亡、もう1人が大けがをしました。
この事故では、毎月の安全点検は行われていたものの、劣化に対する認識の欠如など不十分な安全管理が事故の要因として指摘されています。
この事故では、毎月の安全点検は行われていたものの、劣化に対する認識の欠如など不十分な安全管理が事故の要因として指摘されています。
福岡 事故で亡くなった児童の父親「学校事故のない世の中を」
福岡県の事故で亡くなった児童の父親の梅崎貴文さん(43)は今回の消費者事故調の報告書について「同じような事故を繰り返さないよう過去の事故について調査・検証してもらうことはありがたい。今後も取り組みを進め、学校事故のない世の中を考えていってほしい」と話しました。
また、安全管理を担う外部人材の活用について「これまで、地元自治体にも外部の人材を活用するよう求めてきた。保護者や地域の人など、子どもを守る大人を増やすことが事故の防止につながると信じています」と話しています。
また、安全管理を担う外部人材の活用について「これまで、地元自治体にも外部の人材を活用するよう求めてきた。保護者や地域の人など、子どもを守る大人を増やすことが事故の防止につながると信じています」と話しています。
安全点検に外部人材活用の取り組みも
消費者事故調が文部科学省に求めるとしている安全点検の担い手の外部人材の活用は、試験的な取り組みも進んでいます。
消費者事故調によりますと、安全点検を行う教職員の厳しい勤務実態や知識不足などが指摘されています。
具体的には、教職員の時間外勤務について、月平均で45時間以上となっている人の割合が去年7月までの4か月間で、小学校でおよそ4割、中学校で5割余りに上ったとしています。
また、全国の公立小中学校を対象にしたアンケート調査で、事故を防止するうえでの課題として「十分な時間を費やすことが困難」と回答した学校がおよそ6割「安全に関する知識・経験が不足」と回答した学校が半数に上ったとしています。
こうした現状を踏まえて、学校と地域の専門家などが連携して、事故防止を図ろうという取り組みが進められています。
国家資格の一つで、科学技術に関する専門知識を備えた「技術士」の有志で作った「子ども安全研究グループ」は、メンバーが学校の安全点検に協力する「かかりつけエンジニア」という独自の取り組みを去年から試験的に始めました。
消費者事故調によりますと、安全点検を行う教職員の厳しい勤務実態や知識不足などが指摘されています。
具体的には、教職員の時間外勤務について、月平均で45時間以上となっている人の割合が去年7月までの4か月間で、小学校でおよそ4割、中学校で5割余りに上ったとしています。
また、全国の公立小中学校を対象にしたアンケート調査で、事故を防止するうえでの課題として「十分な時間を費やすことが困難」と回答した学校がおよそ6割「安全に関する知識・経験が不足」と回答した学校が半数に上ったとしています。
こうした現状を踏まえて、学校と地域の専門家などが連携して、事故防止を図ろうという取り組みが進められています。
国家資格の一つで、科学技術に関する専門知識を備えた「技術士」の有志で作った「子ども安全研究グループ」は、メンバーが学校の安全点検に協力する「かかりつけエンジニア」という独自の取り組みを去年から試験的に始めました。

連携している横浜市の東山田中学校では、地域の協力も得て、教職員の安全点検に技術士が同行し、技術的なアドバイスを行っています。
この日行われた校舎のベランダの点検では、技術士が学校の対策を聞き取りながら、重点的に見るべき設備を説明していたほか、体育の授業などを行うアリーナ施設の点検では、バスケットゴールの落下を想定して、適切に対応できるよう具体的なアドバイスをしていました。
学校とグループでは、生徒を対象にしたアンケート調査も実施する予定で、生徒の視点も取り入れた事故予防につなげたいとしています。
また、学校が現在使っている安全点検表を、より使いやすくする工夫を検討しているということです。
東山田中学校の小林祐樹校長は「子どもの安全安心を守ることは第一ですが、教職員がいちから専門知識を学ぶ時間は、なかなか取れません。専門家が一緒に点検したり、点検表の改善に関わったりしてくれることで、本当に必要なところを効率的に、点検できるようにしていきたいです」と話していました。
この日行われた校舎のベランダの点検では、技術士が学校の対策を聞き取りながら、重点的に見るべき設備を説明していたほか、体育の授業などを行うアリーナ施設の点検では、バスケットゴールの落下を想定して、適切に対応できるよう具体的なアドバイスをしていました。
学校とグループでは、生徒を対象にしたアンケート調査も実施する予定で、生徒の視点も取り入れた事故予防につなげたいとしています。
また、学校が現在使っている安全点検表を、より使いやすくする工夫を検討しているということです。
東山田中学校の小林祐樹校長は「子どもの安全安心を守ることは第一ですが、教職員がいちから専門知識を学ぶ時間は、なかなか取れません。専門家が一緒に点検したり、点検表の改善に関わったりしてくれることで、本当に必要なところを効率的に、点検できるようにしていきたいです」と話していました。

技術士で「子ども安全研究グループ」の瀬戸馨さんは「学校医が健康相談に応じるように、技術的な相談にのる役割があっても、よいのではないでしょうか。事故が起きてから対応するのではなく、専門家の視点で、事故を未然に防ぐ意識を学校にも取り入れていきたいです」と話していました。