鳥インフルエンザの感染拡大によってニワトリなどの処分数が増えていることを受けて、卵の加工品を製造するメーカーでは、調達先を海外に切り替えるなど対応に追われています。
福岡県粕屋町に本社がある「イフジ産業」は、年間およそ12億個の卵を使って液卵と呼ばれる卵の中身を取り出した加工品を、外食チェーンや食品メーカーなどに出荷しています。
これまでは、原料となる卵のおよそ99%が国産でしたが、鳥インフルエンザの感染拡大で調達が難しくなっていることから、ことしは輸入の割合を20%程度にまで引き上げる見通しです。
このため会社では、調達先を変更することについて取り引き先に説明したり、国産と外国産で生産ラインを分けたりするなどの対応に追われています。
ただ、今シーズンはアメリカやヨーロッパでも鳥インフルエンザが広がっているため、外国産の確保も難しくなっているということで、感染拡大が長引けば、加工品の減産を余儀なくされる可能性もあるとしています。
会社の藤井宗徳社長は「夏場に調達し冷凍保存しておいた国産の卵を使って生産を続けているが、在庫も底をつきつつある。これからは国産や外国産を問わず、調達先を多様化して、安定供給に努めたい」と話していました。
卵の卸売価格 2月は最高値更新 鳥インフルエンザの感染拡大
今月の卵の卸売価格は、飼料価格の高騰や鳥インフルエンザの感染拡大によって、統計を公表している1993年以降で最も高くなりました。
卵の卸売価格の目安となる「JA全農たまご」の東京地区でのMサイズ1キロ当たりの今月の平均価格は327円と、去年の同じ月と比べて152円、率にして86%値上がりしました。
去年12月の284円が統計を公表している1993年以降の最高値でしたが、今月はそれを43円上回りました。
農林水産省によりますと、例年、卵の価格はクリスマスケーキやおせち料理向けの需要が多い12月をピークに下がる傾向にあるということです。
ただ今シーズンは、ロシアによるウクライナ侵攻でとうもろこしなどの飼料価格が高騰していることや、年明け以降も鳥インフルエンザの感染拡大が続き、出荷数が減少していることなどが高値につながっているということです。
卵の出荷数が減少していることから養鶏農家は家庭向けの供給を優先していて、コンビニやレストランなどでは卵を使った一部の商品が提供できなくなるケースが相次いでいます。
今後の見通しについて農林水産省は「国内では例年3月以降、鳥インフルエンザの発生数が減少する傾向にあるので、引き続き状況を注視していきたい」としています。
調達先を国内から海外へ

オムライス専門店では今後安定的に仕入れられるか懸念

ニワトリの殺処分が増え、卵の出荷数が減少していることから、オムライスの専門店では、今後も安定的に卵を仕入れられるか懸念しています。
東京 千代田区のオムライス専門店では、卵を1日当たり平均で20キロ、およそ300個分使っていて、ほぼ毎日仕入れています。
店によりますと、卵の仕入れ価格は、去年10月1日は1キロ当たり333円でしたが、27日は482円と40%以上値上がりしているということです。
この店では去年、油や乳製品などの価格上昇を受けて、4月と12月に一皿当たり50円ずつ値上げを行っているため、さらなる値上げはしづらいということで、卵の価格上昇が利益を圧迫しています。
東京 千代田区のオムライス専門店では、卵を1日当たり平均で20キロ、およそ300個分使っていて、ほぼ毎日仕入れています。
店によりますと、卵の仕入れ価格は、去年10月1日は1キロ当たり333円でしたが、27日は482円と40%以上値上がりしているということです。
この店では去年、油や乳製品などの価格上昇を受けて、4月と12月に一皿当たり50円ずつ値上げを行っているため、さらなる値上げはしづらいということで、卵の価格上昇が利益を圧迫しています。

さらに仕入れ先からは、鳥インフルエンザの影響で今後、希望するメーカーや数量の卵を供給できなくなるおそれもあると伝えられているということです。
このため、卵が入荷しづらくなることも念頭に、卵の量を2倍にするトッピングメニューを今月16日から休止する対応をとっています。
神田たまごけん秋葉原店の阿部聖店長は「トッピングメニューは人気があるが、卵のことを思うと休止せざるをえない。オムライスはたくさん卵を使うので早く安くなってほしい」と話していました。
このため、卵が入荷しづらくなることも念頭に、卵の量を2倍にするトッピングメニューを今月16日から休止する対応をとっています。
神田たまごけん秋葉原店の阿部聖店長は「トッピングメニューは人気があるが、卵のことを思うと休止せざるをえない。オムライスはたくさん卵を使うので早く安くなってほしい」と話していました。
卵使った一部メニュー販売休止する会社も

大分市に本社がある「ジョイフル」によりますと、全国のおよそ600店舗で、28日午後3時から卵を使った一部のメニューの販売の休止や内容の変更を行います。
また、一部の定食や弁当に使われている目玉焼きをベーコンやポテトサラダなどに変更するということです。
会社では、鳥インフルエンザの拡大で、卵の安定的な仕入れが難しくなったためだとしていて、メニューを再開するめどは立っていないということです。
ジョイフルの担当者は「メニューを維持するために、なんとかやりくりをしてきましたが、供給が厳しくなり苦渋の決断をしました。お客様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきたい」と話しています。
また、一部の定食や弁当に使われている目玉焼きをベーコンやポテトサラダなどに変更するということです。
会社では、鳥インフルエンザの拡大で、卵の安定的な仕入れが難しくなったためだとしていて、メニューを再開するめどは立っていないということです。
ジョイフルの担当者は「メニューを維持するために、なんとかやりくりをしてきましたが、供給が厳しくなり苦渋の決断をしました。お客様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解いただきたい」と話しています。
国内飼育ニワトリの約1割が処分対象に

卵の価格の見通しについて、東京農業大学の元教授で、「日本養鶏協会」のエグゼクティブアドバイザーを務める信岡誠治さんに聞きました。
国内では鳥インフルエンザの影響で、今シーズンこれまでにおよそ1478万羽のニワトリなどが処分されています。
このうち卵を採るためのニワトリでは、国内で飼育するおよそ1割が処分の対象となっています。
これについて信岡さんは「ニワトリを殺処分して、すぐに養鶏場に新しい鳥を入れるのは簡単ではない。フル稼働にもっていくには、1年以上かかるのが実態だ。餌の原材料となるとうもろこしの価格も高いままなので、影響が長引く懸念もある」と話しています。
そのうえで信岡さんは、卵の価格が首都圏より地方で高くなっていると指摘しています。
「JA全農たまご」によりますと、Mサイズの卵1キロ当たりの卸売価格は今月の平均で、名古屋地区が341円、大阪地区が332円、福岡地区が337円と、いずれも東京地区の327円を上回っています。
これについて信岡さんは「首都圏以外でも九州や中国・四国といった主要な産地で、鳥インフルエンザの被害が大きかったので、西日本のほうが卵の価格が高くなっている。また名古屋は地元だけでなく、大阪や東京にも出荷しているので、需要が高まって価格が上がっているのではないか」と話していました。
国内では鳥インフルエンザの影響で、今シーズンこれまでにおよそ1478万羽のニワトリなどが処分されています。
このうち卵を採るためのニワトリでは、国内で飼育するおよそ1割が処分の対象となっています。
これについて信岡さんは「ニワトリを殺処分して、すぐに養鶏場に新しい鳥を入れるのは簡単ではない。フル稼働にもっていくには、1年以上かかるのが実態だ。餌の原材料となるとうもろこしの価格も高いままなので、影響が長引く懸念もある」と話しています。
そのうえで信岡さんは、卵の価格が首都圏より地方で高くなっていると指摘しています。
「JA全農たまご」によりますと、Mサイズの卵1キロ当たりの卸売価格は今月の平均で、名古屋地区が341円、大阪地区が332円、福岡地区が337円と、いずれも東京地区の327円を上回っています。
これについて信岡さんは「首都圏以外でも九州や中国・四国といった主要な産地で、鳥インフルエンザの被害が大きかったので、西日本のほうが卵の価格が高くなっている。また名古屋は地元だけでなく、大阪や東京にも出荷しているので、需要が高まって価格が上がっているのではないか」と話していました。