宮崎 宿の確保に苦労の受験生も WBC日本代表 壮行試合と重なる

国公立大学の2次試験の前期日程が始まる中、宮崎市にある宮崎大学では、WBC=ワールド・ベースボール・クラシック日本代表の壮行試合と日程が重なりました。受験生の宿の確保が心配されましたが、大学の早い段階からの取り組みで大きな混乱は避けられたもようです。しかし、近くの宿を確保するのに苦労する受験生も出ています。

宮崎市内にある宮崎大学の木花キャンパスでは、24日、多くの受験生や保護者が下見に訪れ、大学までの行き方や教室の場所を確認していました。

宮崎大学では例年、前期日程を受験する人の6割を超えるおよそ1000人が県外からの受験者です。

ふだんの年なら宿の確保に苦労することはありませんが、ことしは違います。

大学の近くにあるサンマリンスタジアム宮崎で、同じ日程でWBC日本代表の壮行試合が行われるからです。

受験生の宿の確保に危機感を持った宮崎大学は、去年のうちから県やホテル旅館組合と協議。
協力してくれた宿に受験生のための「特別枠」を設けてもらい、それを大学のホームページで告知して、WBC目当ての観光客が殺到する中でも宿を確保できる仕組みを構築しました。

それでも2次試験の出願が始まった先月下旬は、その「特別枠」も次々に埋まっていく状況でした。

自動車学校は宿泊施設を提供

自動車学校などを運営する宮崎市の「宮崎梅田学園」は、宮崎大学の受験生が近くに宿を確保するのが難しくなっていることを知り、運転免許合宿用の宿泊施設を提供しました。

免許合宿での利用者に部屋を移ってもらうなどの調整をして、14部屋を確保しました。

25日は午前9時から試験開始ですが、受験生たちはWBCに伴う渋滞も考慮し、早めに朝食をとって、7時半に教習所が用意した車で大学に向け出発しました。
付き添いで東京から来ていた50代の母親は「市内のホテルは取れましたが、2人で1泊7万円と高額だったのでこちらに取り直しました。送迎もしてもらって安心して送り出せます」と話していました。

宿泊施設の田中眞治 支配人は「部屋を提供した直後から40から50件の問い合わせがあり、最大限、調整しました。受験生には全力を尽くして頑張ってほしい」と話していました。

宮崎大学では例年、およそ1000人が県外から受験しますが、25日と26日はJR宮崎駅から大学までの臨時バスも運行され、25日は大きなトラブルは見られませんでした。

新型コロナの宿泊療養施設も消毒して部屋を提供

宮崎県ホテル旅館生活衛生同業組合で、受験生の宿泊施設確保にあたっていた田爪広志 事務局長は、最終盤になって新型コロナの宿泊療養施設になっていた宮崎市内のホテルが部屋の提供に名乗りを上げたことが大きかったと振り返ります。

県によりますと、ちょうど新型コロナの感染が下火になり、このホテルで宿泊療養する人がいなくなっていたことも幸いしました。

このホテルではしっかり消毒したうえで50部屋すべてを提供したということです。

田爪 事務局長は「例年にない稼働状況で、一時は、宮崎市内だけでなく近隣のホテルも満室になった。WBC向けには部屋を提供していなかった施設が協力してくれたことで、遠方にしか宿を確保できていなかった受験生が予約を取り直すケースが多かったようだ」と話していました。

受験生は

東京からの受験生は「どこもいっぱいで苦労しましたが何とか宮崎市内に宿を取ることができました。きのう宮崎に着いた時に乗ったタクシーの運転手が、受験生だと話すときょうも迎えにきてくれてスムーズに来られました。皆さん温かく接していただけるので、精いっぱい頑張りたいです」と話していました。

また、鹿児島県から付き添いで来ていた受験生の母親は「あすも試験があるのですが連泊での予約はできませんでした。きょうは一度、鹿児島まで帰りあす朝、車で大学まで送ることにしています」と話していました。

車で1時間の施設に宿泊した受験生も

宮崎市内で宿泊先が確保できず、大学から車でおよそ1時間かかる日南市内に宿泊せざるを得なかった受験生もいます。

愛知県の高校3年生で、宮崎大学医学部看護学科を受験する奥山愛梨さんです。

宮崎大学に出願を決めてから宮崎市内の宿泊施設を探しましたが、すでにほとんどが満室状態で、空いていても1泊1人当たり5万円以上するような高価な部屋しかなかったということです。

こうした中、この日南市の宿泊施設が試験会場までの送迎付きで予約を受け付けていることをSNSで知り、部屋をとったということです。
送迎は経営者の田鹿倫基さんがみずから車を運転して行うということです。

奥山さんは「赤の他人なのに受験生というだけで送迎までしてもらえて、改めて宮崎の大学に行きたいという気持ちにつながりました」と話していました。

中には福岡から飛行機で宮崎を目指す生徒も

福岡県の大手予備校によりますと、宮崎大学を受験する生徒20人余りのうち、宮崎市内に宿を確保できたのはおよそ半数にとどまり、中には近くのホテルを確保できず、25日、午前中の試験開始にもかかわらず、福岡から飛行機で宮崎を目指す生徒もいるということです。

関係者の努力で懸念された混乱はおおむね避けられたもようですが、例年以上に受験生の負担は大きくなっています。

宮崎大学 副学長「最善の対策を尽くしてきた」

宮崎大学で入試担当を務める中林健一 副学長は「日程が重なるという情報を知ってからすぐに、大学としてできる最善の対策を尽くしてきた。当日はふだんよりも早めに、安全に気をつけて来てほしい」と話しています。

WBCの壮行試合は午後からですが、道路の渋滞を心配して朝早くに家やホテルを出るという受験生も多いかもしれません。

宮崎大学では25日午前7時から受験生向けに控え室を用意して対応することにしています。

河野知事「何とか混乱を回避したい」

宮崎県の河野知事は「大学のすぐ近くに宿を確保するのは難しいかもしれないが、予約もできないという事態は少なくとも起きておらず、大きな問題はないと考えている。受験生も早め早めの対応をされるだろうし、それに合わせてバスも増便されるので、何とか混乱を回避していきたい」と話していました。