トルコ・シリア大地震 死者5万人超える 建物撤去進まず 憤りも

トルコ南部で今月6日に発生した大地震で確認された死者の数は、隣国シリアとあわせて5万人を超えました。被災地のなかには被害を受けた建物の取り壊しや撤去が進まず、そのままになっている地域もあり住民から当局の対応に憤りの声があがっています。

トルコ南部で今月6日に発生したマグニチュード7.8の地震とその後の地震で、これまでにトルコで4万4218人、隣国シリアで5914人と、合わせて5万人以上の死亡が確認されています。

トルコ政府は、24日の時点で、地震によって倒壊した建物や倒壊のおそれがある建物は、少なくとも17万3000棟に上っていると明らかにしています。

被災地では支援や復旧作業が急ピッチで進む一方で、発生から2週間半がたっても被害を受けた建物の取り壊しや撤去が進まず、そのままになっている地域もあります。
被害の大きかった南部のパザルジュクに暮らすハサン・デイルマンジさんは、今回の地震で近くに住む妹夫婦やその2人の子どもなど、親類6人を亡くしました。

3階建ての自宅も大きく崩れ、地元当局の調査で取り壊す必要があると診断され、中に立ち入らないよう指示されましたが、その後1週間たった24日になっても取り壊しは始まっていません。

デイルマンジさんは少数民族のクルド人で、クルド人が多く住む地域は被災地の中で支援や復旧作業が目立って遅れていると憤っています。

この地域の防災当局の担当者はNHKの取材に「建物の取り壊しは、リスクの高いものから優先的に始めている」として、対応に問題はないとしています。

通学できなくなった子どもの数 400万人か

こうした中、ユニセフ=国連児童基金の欧州・中央アジア地域事務所のカーン代表は、24日、スイスのジュネーブで記者会見し、学校が被災するなどして、トルコ国内で学校に通えなくなった子どもの数は、400万人に上るという見通しを示しました。

また、今回の地震で被害を受けたトルコ南部の10県には、およそ170万人のシリア難民が住んでいて、学校に通えなくなった400万人のうち、35万人はシリア難民の子どもたちだとしています。

さらに、被災地の多くの子どもたちに、避難生活が長引く中でうつ病やPTSD=心的外傷後ストレス障害を発症する懸念もあるということです。
カーン代表は「学習は、子どもたちが日常の感覚を取り戻し、立ち直るために大切だ」と述べ、生活に必要な支援に加えて、被災地に仮設の学習スペースを設けるなど、被災した子どもたちの教育面や心理面でのサポートを強化していく方針を示しました。

復興のかじ取り役決める選挙に向け政治の駆け引き活発化

トルコでは、ことし5月に行われる見通しだった大統領選挙と議会選挙が実施されるか注目されていますが、カルン大統領首席顧問は23日、アメリカのCNNテレビのインタビューに応じ、選挙の実施を決めるのは選挙管理委員会だとしたうえで「被災地を離れた200万人以上の人たちが投票する方法など、技術的な問題はあるが、反対意見がなければ、予定どおりに行われそうだ」と述べました。
これに先立ち、エルドアン大統領は21日、27万戸の公営住宅の建設を予定していると明らかにし、復興に全力を挙げる考えを示していました。

一方、トルコ議会の最大野党、共和人民党のアリ・オズトゥンチ副党首は24日、NHKの取材に応じ、耐震基準を満たさない建物の建設許可を与えてきた当局の対応や、エルドアン政権の災害対応を批判しました。

そのうえで「選挙は行われるべきだ。エルドアン政権を一刻も早く退陣させなくてはならない。大差をつけて勝つ」として、政権奪取に意欲を示しました。

大地震の発生から3週間を前に、トルコでは、復興のかじ取り役を決める選挙に向けた政治の駆け引きが活発化しています。

トルコ 最大野党の幹部「政権に責任を取らせる」

トルコの大地震で甚大な被害を受けた、南部、カフラマンマラシュ県の地元選出のトルコ議会議員で、最大野党の幹部がNHKの取材に応じ「エルドアン政権に責任を取らせる」と述べ、トルコ政府の建物の耐震化への対応や、災害の初動対応を強く批判するとともに、ことし5月に予定されている大統領選挙と議会選挙で政権奪取への意欲を示しました。
トルコ議会の最大野党、共和人民党のアリ・オズトゥンチ副党首は24日、カフラマンマラシュの被災者のための支援拠点でNHKの取材に応じました。

オズトゥンチ氏は、エルドアン政権の災害対応が不十分だとしたうえで「カフラマンマラシュ県では、8万2000戸の住宅が損壊した。当局が地盤調査もせずに建設を認め、3階までしか建てられない場所で10階建ての建物ができていた。違法建築を見過ごしてきた政権の責任を取らせる」として耐震基準を満たさない建物の建設許可を与えてきた当局の対応を強く批判しました。

そして、ことし5月に行われる見通しとなっていた大統領選挙と議会選挙については「選挙は行われるべきだ。私たちは準備ができている。エルドアン政権を一刻も早く退陣させなくてはならない。大差をつけて勝つ」として、政権奪取への意欲を示しました。