公共事業などの住民の合意形成の問題に詳しい産業技術総合研究所の保高徹生研究グループ長は、今回の実証事業の進め方について「住民が不安に思っている状態で、事業を進めてしまうと、その後、さまざまな課題が出てくることになるので、しっかりとした納得感を持ってもらったうえで進めることが前提だ」と指摘しています。
そのうえで「福島県の負担を少しでも軽くするためという社会的意義があると思うので、実証事業をここで行う意義や必要性を分かりやすく伝えることが重要ではないか」と話しています。
除染土の再生利用 福島県外での実証事業 年度内開始は見送り
福島県内の除染で出た土の再生利用に向け、県外で計画されている実証事業について、環境省は当初、住民の理解を得たうえで今年度中にスタートさせる方針でしたが、地元の反発の声を受けて年度内の事業開始は見送り、住民への説明会を改めて開くなど理解の醸成に努めることにしています。
東京電力・福島第一原子力発電所の事故の除染で出た土について、環境省は放射性物質の濃度が基準を下回ったものを公共工事などで再生利用する方針で、東京 新宿の「新宿御苑」と、埼玉県所沢市の「環境調査研修所」で、福島県外で初めての実証事業を行う計画です。
環境省は当初、住民の理解を得たうえで今年度中に事業をスタートさせる方針を示していましたが、去年12月にそれぞれ開催した住民説明会で「なぜここが選定されたのか」や「情報が不十分だ」などの疑問や意見が寄せられたということです。
また、所沢市では、地元町内会で反対意見が多数を占めたことから市長が難色を示しています。
こうした地元の反発を受けて、環境省は年度内の事業開始を見送り、説明会での疑問や意見に文書で回答を示したり、改めて説明会を開催したりして理解の醸成を進める方針です。
環境省は「まず地元住民への説明を尽くしたうえで、開始の時期について改めて判断していく」としています。