ロシアによる軍事侵攻から1年 日本政府のウクライナ支援

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから24日で1年となります。日本政府の対応です。

政府は、これまでに、ウクライナや周辺国などに対しおよそ15億ドルの支援を決定し順次実施しています。また、岸田総理大臣は、先に新たに55億ドルの追加支援を行うことを表明しています。

すでに決定したおよそ15億ドルの内訳は
◇ウクライナの経済を立て直すための財政支援が6億ドル、
◇緊急無償資金協力などの人道支援がおよそ4億ドルとなっていて、
◇残るおよそ5億ドルは、今後、使いみちを決めるとしています。

このうち、人道支援では、ウクライナや避難民を受け入れている周辺国に対し、▼食料や生活必需品、医薬品などを国際機関や日本のNGOを通じて提供しました。

また▼ウクライナやロシアからの穀物の流通が滞り食料不足に直面する中東やアフリカの国への食料供給や、生産能力の強化にもあたってきました。

一方、ウクライナ国内の発電所などが破壊され各地で停電が起きた状況を踏まえ▼発電機およそ300台と▼太陽光で充電できる「ソーラーランタン」8万3500台の供与を順次進めています。

また、停電で夜間の交通事故が増えているとして、▼反射材付きのベスト2万着と▼リストバンドタイプの反射材16万個をウクライナの警察に送ることにしています。

さらに、こうした支援以外にも◇「防衛装備移転三原則」の運用指針を改正し、自衛隊が保有する防弾チョッキやヘルメット、それに化学兵器に対応した防護マスクや防護服など、自衛隊の装備品を提供しました。

このほか◇ウクライナで地雷や不発弾の除去を進めるため、地雷探知機4台を供与する予定で、JICA=国際協力機構と連携し、カンボジアでウクライナ非常事態庁の担当者を対象に研修を行いました。

一方、ウクライナから避難した人を日本国内に受け入れていて、出入国在留管理庁によりますと、これまでに2300人余りを受け入れ、自立した生活を送れるよう就労や教育などの支援にあたっています。

ロシアへの制裁措置

日本政府は、去年2月のロシアのウクライナ侵攻開始の直後からG7=主要7か国と連携し、ロシアや同盟国のベラルーシに対する制裁措置に踏み切り、段階的に強化してきました。

▼日本国内の資産凍結では、これまでに892人の個人と83の団体が対象となり、個人には、プーチン大統領をはじめとしたロシア政府の関係者や政権に近いとされる「オリガルヒ」と呼ばれる富豪、それに、ベラルーシのルカシェンコ大統領らが含まれています。

団体では、ロシアの中央銀行やロシア最大の金融機関「ズベルバンク」などが対象です。

▼軍事関連団体への輸出禁止措置では、ロシアの造船所や研究施設など、363の団体が対象となっています。

▼また特定品目のロシア向けの輸出も禁止していて、
◇半導体などの軍事能力の強化につながる一般向けの製品、
◇石油の生産設備、
◇宝石や酒などのぜいたく品、
◇量子コンピューターや3Dプリンターなどが対象となっています。

▼ロシア向けの新規の投資や信託など、一部の金融サービスの提供も禁止しています。

▼輸入規制では、ロシアからの
◇金や
◇機械類、
◇一部の木材、
◇ウォッカなどの輸入を禁止しています。

▼さらに、ロシアからの石炭や石油の輸入を最終的に原則禁止にする方針でG7各国と一致し、段階的な削減を進めていて、去年の後半以降の輸入量は前の年と比べ石油はおよそ9割、石炭はおよそ6割減りました。

▼また、貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」を撤回し、ロシアからの輸入品への関税を引き上げています。

一方、対ロ制裁をめぐっては、ロシアとの関係に配慮して、制裁に加わらず、中間的な立場をとっている国も少なくないのが実情で、取り組みの抜け穴になっているという指摘もあり、実効性をいかに高めていくかが課題となっています。

政府は、ことしのG7の議長国として、こうした中間的な立場をとる国々への働きかけを含め、国際社会の取り組みを主導したい考えです。