「マスク着用」めぐり業界団体の判断は?対応決めかねる業界も

「マスクの着用は個人の判断に委ねる」

3月13日以降についての政府の方針を受けて、飲食業やオフィス、カラオケ、映画館など、各業界団体がガイドラインの見直しについて検討を進めています。

感染への不安の声が残る中で、どのようなルールにしていくか、対応に悩むところも出ています。

ガイドライン見直した業界は4つ

マスクの着用について、政府は3月13日から屋内・屋外問わず個人の判断に委ねることを決め、各業界団体にガイドラインの見直しを促しています。

これを受けて、政府が示している業界ごとの計195のガイドラインのうち
▽オフィス
▽製造事業場
▽民間検定試験
▽ゲームセンターの
4つの業界は23日までに見直したガイドラインを公表しています(適用は3月13日)。

4つの業界では、換気などの感染対策は残しつつも「マスク着用の徹底」という記述を削除したり「必ずしも着用を呼びかける必要はない」などといった記述を新たに加えたりしています。

また▽学習塾▽旅館▽ホテル▽結婚式場▽映画館▽クラシックの公演などや、▽外食業者でつくる全国生活衛生同業組合中央会は、政府の方針に沿う方向で、3月13日までにガイドラインを見直したり、加盟店に新たに通知を出したりすることを検討しています。

ゲームセンターの業界では

全国のゲームセンターなどが加盟する「日本アミューズメント産業協会」はこれまで、利用者が会話しない時などを除いて、マスクの着用を求めるガイドラインを定めていました。

しかし政府の方針を受けてガイドラインを見直し、3月13日からは利用者に必ずしも着用を呼びかける必要がないと明記しました。

協会では、激しい運動を伴うゲームの利用者などには歓迎されるものの、着用を続けたいと考える利用者も一定数いると見ていて、マスクの有無にかかわらず快適に過ごせるように丁寧に説明していきたいとしています。

日本アミューズメント産業協会の菊池陽事務局長は「国が個人の判断を尊重する方針を示したのはありがたかった。来月13日からの変更に店が万全に対応できるよう、いち早くガイドラインを改定した」と話していました。

加盟店の一つ、東京・新宿区にあるゲームセンターでは3月13日以降、マスクの着用を呼びかけるポスターを剥がすことにしています。

店長の内山一樹さんは「お客さんがマスクをせずに自由に話して楽しんでいたコロナ前の状況に戻ることに期待しています」と話していました。

店の利用客の男性は「太鼓をたたくゲームでよく遊びますが、マスクの息苦しさを感じていたので、楽しみにしています」と話していました。

航空機の中では

航空機の中でのマスクの着用については、業界団体の「定期航空協会」が3月13日から『乗客や従業員、個人の判断に委ねる』としています。

政府は、3月13日以降、おおむね全員の着席が可能な航空機や新幹線、高速バスなどではマスクを外すことを容認するとの考え方を示していて「定期航空協会」は、これを踏まえて判断したとしています。

その上で「これまで各社に対し、乗客などにマスクの着用を要請するよう求めていたガイドラインを改定するなど準備を進めるとともに、お客様に安心してご利用頂けるよう引き続き努めていきたい」としています。

映画館では呼びかけ方を模索

感染への不安の声を踏まえ、新たな呼びかけ方を模索する業界もあります。

全国の映画館などでつくる「全興連=全国興行生活衛生同業組合連合会」は、これまで、マスクを着用しない利用者には入場を断るように定めていました。

しかし政府の方針を受けてガイドラインの見直しを進めていて、マスクの着用を求めず、入場を断る対応もやめる方向で検討しています。

ただ、これまで来場者からは「隣の席の人がマスクを外していて不安だ」という声もあったということで、大幅な見直しをすると不安が広がらないか、懸念しています。

そこで全興連は上映前の広告などを活用し、マナーの一つとして、せきやくしゃみをする時は、ハンカチや上着の袖などで口や鼻を押さえる「せきエチケット」を呼びかけることを検討しています。

換気や消毒などの対策も当面続けるとしています。
全国興行生活衛生同業組合連合会の佐々木伸一会長は「感染について不安に思う人がいるので、マスク以外の対策を続けることで安心安全の環境作りをしていきたい」と話していました。

対応を決めかねるところも

一方、感染リスクや不安の声を懸念して対応を決めかねているところもあります。

全国のカラオケ店などが加盟する「日本カラオケボックス協会連合会」はこれまで、2メートル以上間隔を空けて歌う時や飲食する時を除き、マスクの着用を推奨するようガイドラインで定めてきました。

政府の方針を受け、加盟店からは緩和するかどうかについて問い合わせが複数来ているということですが、これまで休業要請の対象にもなっていたことなどから、見直すかどうかも含めて慎重に判断したいとしています。
日本カラオケボックス協会連合会の仲間信男理事長は「この3年間、苦慮しながら運営してきたので、見直しについては慎重にならざるを得ない。さまざまな感染対策をしながら自由に歌えるように努力していく」と話していました。

ボートレース業界は高齢の来場者が多く、大声で声援を送る人も少なくないため、マスクの着用は引き続き推奨する方向で国と相談しているということです。

このほか複数の業界が方針も含めて「検討中」としています。

最終的には個々の企業や店舗の判断

方針を決めた業界も含め、いずれの団体も「最終的にはそれぞれの企業や店舗の判断となる」としています。

政府は3月13日に向けて、現場に混乱が生じないよう周知を徹底していくことにしています。

専門家「個人の判断サポートするガイドラインを」

コロナ禍の人々の意識の変化などについて研究している同志社大学の中谷内一也教授は「これからは、コロナ禍の対応を自分で判断する機会が多くなる。マスクを着けないことが不安だという人と、もう大丈夫だという人が同じ場所にいることで、お互いに不快な思いをするケースがしばらくは出るかもしれない」と話していました。

その上で、各業界のガイドラインをめぐる動きについては…

「こういう状況だったらリスクは高い、こういう状況だったら、それほどナーバスになる必要はないという情報を各業界が提供することで、個人の判断をサポートすることが望ましい。個人が適切だと思う判断をしやすい環境を構築していくことが求められる」と指摘しています。