【解説】 ウクライナ侵攻1年 ロシアへの経済制裁の効果は

プーチン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻開始後初めてとなる年次教書演説で、侵攻を改めて正当化し侵攻を続ける姿勢を強調しました。

侵攻からまもなく1年。
ロシアへの経済制裁の効果などについて、東京大学 先端科学技術研究センターの小泉悠 専任講師の解説です。

(動画は26分。データ放送ではご覧になれません)

プーチン大統領の演説 何を感じた?

1時間45分にわたって行われたプーチン大統領の年次教書演説。
冒頭から一方的な主張を繰り返し、侵攻を改めて正当化しました。
「私たちは西側と建設的な対話をしたいと心から思っていたが、繰り返すが、戦争を始めたのは西側であり、ロシアはそれを止めるために武力を行使している」。

この演説について小泉さんは、
「全体としてこれまでの言ってきたことをまた繰り返していると感じる。逆に言えば全くぶれていない。戦争はあくまでも続けると言っている」。
「『われわれ(ロシア)が直接戦っている相手はウクライナだが、その背後に西側との戦いという非常に大きなものにコミットしている』という従来の主張が今回も繰り返された」
としています。

経済制裁の効果は?

20日発表されたロシアの去年1年間のGDP=国内総生産の伸び率は前の年と比べて2.1%のマイナスでした。一時は欧米などの経済制裁の影響でふた桁のマイナスになるという見方もありましたが、実際は予想よりも小幅にとどまっています。
経済制裁の効果について小泉さんは
「経済制裁だけでロシアに戦争継続を諦めさせるのは難しいと思う。時間がかかる、ロシアにはエネルギーやさまざまな資源を自給できる。基本的な工業製品を造れてしまう。」
「ミサイルや戦車などもいずれ尽きるだろうと言われていたものの、一部造れないものを省いたような形で生産を継続している。近いうちにこれが生産できなくなるという見込みもない。」
としています。

追跡 ロシア産原油 意外な実態が

そのロシア経済を下支えしているのは、原油などのエネルギー輸出だとみられています。NHKではロシア産の原油を運ぶタンカーの航路を独自に分析、すると意外な実態が見えてきました。

NHKはイギリスの調査会社から、大型タンカーのべ5900隻の行き先に加え、大きさや浮き沈みの度合いから推測した輸送量などのデータ提供を受け、分析を行いました。

侵攻前、ロシアからの原油や石油製品の輸送量の55%がEU向けでしたが侵攻後の経済制裁で大幅に減少、先月は半分以下にまで減少しました。

一方、その減少分を補うように大幅に増加している輸送先が、経済制裁を行っていないインドや中国など。中でも中国には侵攻後、最も多く運ばれていたことがわかりました。