パンダ「シャンシャン」や「永明」など 今週 中国に返還へ

東京 上野動物園のメスのジャイアントパンダ「シャンシャン」は今月21日に、和歌山県白浜町のテーマパークで飼育されているジャイアントパンダの「永明」など3頭は今月22日に、それぞれ中国に返還されます。
返還を直前に控え、移送される中国側の施設の受け止めなどを取材しました。

「シャンシャン」移送先は世界的な保護研究センター

中国に返還される上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」は、内陸部の四川省成都の空港に到着したあと、南西に100キロ余り離れた雅安の施設に移送される予定です。

雅安に世界的に有名なパンダの保護研究センターがあり、およそ60頭のパンダが飼育されているということです。

このうち、外国から中国に返還されたパンダのエリアでは、5メートルほどの距離から間近にパンダを観察することができます。
訪れた人たちは、4年前にアメリカから返還されたパンダがささを食べる様子を写真におさめたり、名前を呼びかけたりしていました。

パンダの食べ物を解説する展示の一部には、ささを食べるシャンシャンの写真も使われていました。

シャンシャンが中国に返還されるニュースを知っているという中国人の観光客は「元気に中国にやってきてほしいし、四川省の美しさを感じてもらいたいです」と話していました。

友人と訪れていた地元の観光客は「四川省にはおいしい竹があります。みんな、シャンシャンがやってくるのを歓迎しています」と話していました。

上野の最後の観覧者「中国に遊びに行きたい」

「シャンシャン」の観覧が最終日となった19日、観覧の抽せんに漏れた人も含め多くのファンが「抱っこシャンシャン」という、およそ65センチの大きさのぬいぐるみを持参して上野動物園を訪れました。

そのひとり、水口奈津季さん(37)は、観覧の最後となる午後4時からの枠に当選した100人の中でも整理番号100番と本当に最後の最後の観覧者になりました。

水口さんは、自分で撮影したシャンシャンの写真をふんだんに使ってデザインしたパーカーや靴を身につけるなど、「全身シャンシャン」状態で最後の時に臨みました。

観覧前、水口さんは「まだ実感がわかないです。来週また会えるんじゃないかと思っていて、喪失感はこれからどんどん大きくなるのかなと思っています」と話し、動物園へ向かいました。

水口さんは一時、海外で暮らしていましたが、体調を崩して帰国し、家にこもる日々が続きました。

そんなとき、シャンシャンの存在を追うようになりました。

体調面から外出が難しくテレビやインターネットで成長の様子を見守ってきましたが、中国への返還が発表されたことで動物園に見に行くことを決めました。

水口さんは、ふだん見ていた画面上以上のシャンシャンのかわいさに心を奪われ、この日をきっかけに出かけることができるようになったと言います。

「初めて会ったその日に年間パスポートを購入して、それから毎日行っています。きょうは、どんなシャンシャンなんだろうと見たいがために電車に乗り、会いに行っていました」と振り返りました。

シャンシャンの無邪気な姿を見る度に、水口さんは「ありのままでいいんだよと言われているような。勇気をもらったり、励まされたりしました」と前向きな気持ちになれたと言います。

さらに、水口さんは自分で作ったシャンシャンのグッズをほしい人に無料で配るようになり、ファンの間でも評判になりました。

水口さんは「だんだん自信にもつながっていきました。この格好をしていると、シャツもパーカーも発売してほしいと言われることもあります」と話していました。

迎えた最終観覧、シャンシャンを通して知り合ったファンからたくさんの伝言を託されパンダ舎に入った水口さんは、「かわいい」と声を漏らしながら2分間の観覧時間ギリギリまでシャッターを切り続けました。

最後はシャンシャンに手を振ってパンダ舎を後にしました。

水口さんは、100番の整理券を眺めながら「この券は宝物になりました。本当に終わってしまったんだと思うとつらいです。シャンシャンは心の中のすべて、唯一無二の存在。今度は私が応援する立場なので中国に遊びに行きたいです」と涙を流しながら話していました。

中国側の施設「こちらの生活に慣れるよう全力でサポート」

和歌山県白浜町のテーマパークで飼育されているジャイアントパンダ3頭が中国に返還されるのを前に、中国側の施設がNHKの取材に応じました。

中国に返還されるのは、16頭の子どもをもうけ「スーパーパパ」として親しまれてきた30歳のオスの「永明」と、8歳のメスの双子「桜浜」と「桃浜」です。
3頭は、中国内陸部四川省の成都にあるパンダの繁殖研究基地で飼育される予定です。

およそ230頭のパンダが飼育されているこの施設は、国内外の観光客にも人気の場所で、新型コロナウイルスの感染が拡大する前は年間900万人が訪れていました。
「永明」の初めての子どもで2004年に返還された「雄浜」も、この施設で飼育されていて、ささを食べたり元気に動き回ったりしていました。

施設全体でおよそ100人の飼育員がいて、このうち唯一の日本人飼育員の阿部展子さんは、パンダの繁殖や子育てのサポートに当たっています。

今後、「桜浜」や「桃浜」が妊娠すれば、担当になる可能性もあるということです。

阿部さんは「永明が中国の竹をバクバク食べている姿を見てもらえたら、日本のファンも安心すると思います。永明がこちらの生活に慣れるように全力でサポートしていきたいです」と話していました。

3頭のパンダは、中国に到着したあと、検疫のため専用施設で1か月ほど過ごし、健康に異常がなければ一般公開されるということです。